研究課題/領域番号 |
21K01129
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
手塚 貴大 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 教授 (50379856)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 財産評価 / 国際相続・贈与 / 国際相続・贈与と二重課税排除 / 遺産取得税・遺産税 / ドイツ相続税法 / 固定資産税評価 / 固定資産税 / ドイツ不動産税 / 空き家対策 / 国賠訴訟と固定資産税 / 民法 / ドイツ租税法 / 不動産税 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、精確性および効率性を併せ持つ財産評価制度の具体像を提示するべく、特に、ドイツの不動産税に着目しつつ、ドイツにおける財産評価に係る近時の税制改革を検討素材として、新しい財産評価制度・税制、学説の動向、旧制度の制定・運用に係る歴史的展開等を研究する。具体的には、ドイツにおける新しい財産評価方法の具体像の分析、不動産税制の政策税制化の当否、さらにはドイツの現状を踏まえた上でのわが国における財産評価制度の法定化の当否、について深く研究を行う予定である。
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研究実績の概要 |
今年度は、財産評価に関する本研究の議論を充実させるため、相続課税にも視野を広げて研究を行った。特に、国際相続・贈与という事象に着目し、最近の政策動向、相続・贈与課税の基礎理論の観点からの分析、さらにはその際の財産評価の実態について検討を行った。具体的には、国際相続・贈与に際して問題となる租税回避対抗立法が目立つ昨今の租税政策の内実を把握し、さらには、それが相続・贈与課税の基礎理論と照らしての整合性の問題(学説によると、遺産取得税方式、遺産税方式という基礎理論の便宜的使い分けが見られる)、国際相続・贈与に係る文脈でみられる二重課税の実態、それに対して適用される外国税額控除制度のあり方(外国税額控除には全額控除と一部控除の可能性があり、富裕層に国外移転が多いとすれば、外国税額控除制度を充実させることはやや問題があるのではないかと考えられる)、ドイツ相続税法の国際的アスペクト(独米相続税条約も含む)を検討した。とりわけ、二重課税排除の理論的根拠として憲法との整合性を意識することの重要性も明らかにできた。 さらには、わが国の固定資産税の評価の動向にも目配りをして、特に判例分析を行った。例えば、家屋の修繕費用を固定資産税評価に際してどのように扱うべきか、いわゆる固定資産評価基準により難い特別の事情の有無の判断等を、わが国の議論の動向に照らして検討を行った。 その他には、広く財産課税一般にも目を広げ、共有物の分割と不動産取得税の課税可能性という個別問題も、最高裁判例を素材として検討を行った。 総じて、本年度の研究は、わが国の財産課税を中心に重要論点の検討を行い、それを踏まえて、財産評価理論の検討・構築のための素材を獲得する作業を行った。 さらに、ドイツ不動産税に関する文献の収集、読了作業も行い、次年度につなげる作業も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ドイツにおける不動産税を素材としている。とりわけ、近時不動産税にも関係する重要な制度改正がドイツ財産評価法(Bewertungsgesetz)についてなされたため、それを具体的な検討対象とする。したがって、ドイツにおける過去の議論の蓄積たる研究業績を収集することも併せて、前叙の近時の重要な法改正に関する業績も収集する必要がある。そうした本研究を完遂するための業績(書籍)については、過年度も含めて概ね収集できているのではないかと考えている。雑誌論文等についても今後収集していく必要があるが、それも残りの研究期間で行いうるものと考えている。それらの収集した資料の読了も並行して行っている状況である。また、過去にドイツにおける財産評価法の内実と構造、さらには前叙の不動産税改革の動向を研究した論文を自身により公表しており、それらの成果を踏まえて、新たな知見を併せた論文を執筆していくことは可能である。 次に、本研究は、わが国におけるこの分野における基礎理論の発展可能性も視野に入れている。これについては、特に、固定資産税の分野における財産評価に係る判例を広く検討した経験を踏まえて、ドイツの理論とわが国の理論との接合作業を行っていくことができる。 また、不動産税に限られることなく、財産評価理論一般も視野に入れつつ、わが国の配偶者居住権に係る財産評価制度、国際相続・贈与に係る財産評価も検討することができた。これらも併せて広がりのある研究成果を期待することができる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2023年度)は、研究期間の最終年度に当たるために、過年度までの研究作業・成果を踏まえて、研究をまとめ、論文として公表することを行っていきたい。 まず、取り組むべきは、財産評価方法の構築につき、租税原則との整合性を持ったそれを実現する具体像を提示することとしたい。既に本研究の申請の際に触れたように、定期的な評価替えを可能にする財産評価の必要性に基づき、ドイツの財産評価制度の改正がなされた。立法理由も含めて、その具体的制度を把握し、それに対するドイツの学説・実務による評価を踏まえて、望ましい財産評価方法を導く素材として理論的検討を行うこととしたい。加えて、従前のドイツにおける学説・実務による改革提案も踏まえて、改正法が理論の要求するようなものであるか否かを検討する。 また、次年度は、固定資産税に係る近時の重要判例の分析、さらには、固定資産税を地方資産課税の枠組みで現代的観点から分析する機会を得ている。ドイツの議論の検討を踏まえて、わが国の財産評価に係る現状を認識し、課題を析出することを試みて、わが国の財産評価方法の改善の余地を示すように努めたい。わが国においては、確かに、判例上、固定資産評価基準上の財産評価方法に不合理な点は基本的には見いだされていない。とはいえ、時価ではなく、収益価格による財産評価を行うべきとする学説もなお主張されている。ドイツにおいては収益価格に基づく財産評価もなされるところ、ドイツのかような制度の理論的基盤を把握し、わが国の制度設計論との理論的背景の差異を明らかにしたい。 さらに、市町村の基幹税目である固定資産税につき、政策的観点から税負担を設定することの当否という論点も検討する。
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