研究課題/領域番号 |
21K01130
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 上智大学 (2023) 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2021) |
研究代表者 |
阿部 和文 上智大学, 法学部, 教授 (40748860)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 憲法 / ドイツ / 緊急事態 / ワイマール憲法 / ヴァイマール憲法 / ヴァイマール憲法48条 / 非常事態 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、緊急事態に対する法的対応につき、ヴァイマール憲法第48条(特に第2項)をはじめとするドイツの事例を素材として、憲法学の観点から論点を整理し、現在の日本国憲法の解釈及び運用においても参照しうるような解釈枠組みを提示することを目的とする。 具体的には、まずヴァイマール憲法の定める緊急事態における大統領の権限につき、その解釈の分岐や運用の実態につき検討し、次に先行する第二帝政期の学説がヴァイマール憲法第48条およびその解釈学説に与えた影響を検討し、最後にヴァイマール憲法第48条が戦後のボン基本法期の法制度に与えた影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
当該年度は、当初、ヴァイマール憲法48条のうち2項及び4項をめぐる解釈論の整理に着手したが、引き続き学説間の錯綜した対抗関係を整理することに手間取り、このため副次的な課題をひとまず主軸として研究を進めた。即ち、同条5項のいわゆる施行法律に関する研究である。 同項は、同条1項ないし4項の定めるライヒ執行及び大統領・ラント政府の独裁権について、その詳細な規律をライヒ法律に委ねるものであった。結果としては、体制崩壊までに施行法律が制定されることはなかったが、併し、学説においては少なくとも1920年代前半に施行法律の早期の制定を求める動きが存在しており、又、ライヒ政府においても法案が作成されていた。 これまでの調査により、学説の側ではHans Nawiasky、Robert Piloty/Richard Grayによる二つの提案、および実務の側ではライヒ内務省による一つの法案が作成されていたことが判明している。これらの案は、ライヒ憲法の不可侵、ライヒのラントに対する優位を前提とする点で共通しているが、他方で、憲法改正を要求するか、同条に基づき採り得る措置についてどの程度詳細な段階づけを行うか、措置の廃止の手続をどのように設計するか(特に、裁判所を関与させるか、どの程度の密度のコントロールを認めるか)、議会によるコントロールをいかに規律するか、といった点において差異を含んでいる。又、全体としては、学説の側が同条の施行に関する諸般の問題について包括的な提案を示す一方で、ライヒ内務省案は権限の行使や権利保護に関する細かな規定を設ける点が特徴的である。 以上の研究については、当該年度中に論稿を取りまとめ、別途記載の媒体において公表を果たした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、当初のテーマから若干の修正をせざるを得なかったものの、結果としては論稿を脱稿・公表するに至り、最低限の責は果たすことができた。また、同論稿の執筆過程では、既存の日本語・ドイツ語の研究業績にはない知見を得ることができたため、この点でも当該年度の作業には学問的な意義があったと考えている。以上の見地より、(2)の区分と位置づけることとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗状況が、資料の公刊状況等とも相まって、必ずしも当初の予定通りではなかった面があることから、本研究課題に従事する期間を2024年度まで延長した。同年度に於ては、昨年度に論稿の作成にまで至らなかったワイマール憲法48条2項ないし4項に関する解釈論について分析を続け、研究成果を公表したいと考えている。
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