研究課題/領域番号 |
21K01131
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
大野 悠介 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (00836926)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 経済的自由 / 憲法 / ハンス・リンダール / モーリス・オーリウ / 制度 / 流通秩序 / 職業の自由 / 規制目的二分論 / 経済市場 / グローバル経済 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、経済市場のグローバル化が進む中で国家の行為を規律する憲法学的な枠組みの提供にある。 輸送技術や通信技術の発達により経済市場は世界規模で一体化し効率化しているが、反面で経済格差の拡大や国内事業の変容といった諸問題が生じている。その中で国家は何をすべきで何をすべきでないのかが改めて問われるだろう。 本研究は経済市場と国家との関係を問い直し、憲法学としてこの問いに答える試みである。
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研究実績の概要 |
2022年度は、研究実施計画書の計画通り、博士論文の執筆を行った(現在審査中である)。 博士論文の意義は、第一に、モーリス・オーリウおよびハンス・リンダールの理論を踏まえ、法的世界を多様かつ具体的な非人格的秩序の組み合わせとして理解する「多元的かつ多層的な秩序構想」を提示したことである。非人格秩序とは一定の理念の下で多様なアクターによって維持される制度的存在である。この秩序構想によって、国家を経済秩序の下でその理念に沿って権限を行使する法的人格として理解可能となった。博士論文の第二の意義は、経済秩序もまたその内部に国家を含むものとして理解され、当該秩序内在的になおかつ国家領域に留まらないグローバルな観点で憲法論を展開できる点にある。 2022年度は当該博士論文以外にも、①「ルフェーブルにおける〈創造的な法イメージ〉と特異性」憲法研究10号(2022年)289-301頁、②Hans Lindahl,Takao Suami,Keisuke Kondo,et al., A Theory of Global Law and its Fault Lines : Japanese Scholars in Dialogue with Hans Lindahl,Netherlands Journal of Legal Philosophy,50(2),144-164,2022 を発表した。 ①は博士論文で提示した理論の根底にあるものについて、法哲学者ルフェーブルの研究を主とし、リンダールおよびドゥルーズ研究を援用しながら、人権論の中で論じた試論である。 ②は本研究における理論の一つの核となっているリンダールとの対談であり、それによって彼の理論に対する理解が深まった。なお、昨年の夏には、リンダールも含め本研究に関わる諸学者との意見交換のため、研究実施計画の通り、ヨーロッパに出張を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の実施計画によれば、2年目にそれまでの研究成果をまとめて博士論文を執筆する予定であったが、この予定は実現している。その内容についても、実施計画で記した通り、モーリス・オーリウとハンス・リンダールとを用いて、経済秩序の下での国家の行為を語るという憲法理論を提示し、それによって規制目的二分論の再構成およびグローバルに対応可能な理解の提示を行っているため、おおよそ計画通りの成果が出せている。 他方、タルドについては研究をしたものの、むしろタルドに着目したドゥルーズに関心が移った。しかしこれは、本研究が志向していた秩序の動態性についてフランス現代思想への着目を生じさせ、結果として本研究の基礎理論部分について、デモクラシー論も含むより広範な憲法理論への発展可能性を生んでいるため、予定外ながら有益であったと思われる。 また、コロナ禍のため予定していた通りの海外出張はできなかったが、他の研究者とともにヨーロッパに渡り、リンダールだけでなく国際法において活躍する諸学者と意見交換を行い、本研究の内容に留まらない世界での議論状況に関する知見を得たことは有益であった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究推進方策は、大きく分けて理論面と実践面の2つである。 第一に理論面については、博士論文で詳らかにできなかった理論的ないし思想史的な事柄、とりわけ従来の国家論や憲法論との位置関係などを検討する。 第二に実践面については、流通または経済秩序との関係で、具体的な法制度や権利論について、本研究の構想からの解釈論を展開する。その中で、特に「商業」について、権利論との関係でその精緻化を図ることを考えている。その際には、従来の憲法学において抽象的に「市場」として理解されてきたことを批判し、「人・商品」ごとの具体的な市場を捉えた憲法解釈論を展開することを目指すが、本年度はその準備的な論稿をいくつか発表することを予定している。
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