研究課題/領域番号 |
21K01143
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
土井 翼 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (20734742)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 自由使用 / 公物法 / 法律上の利益 / パブリック・フォーラム論 / 権利と法律上の利益 / イタリア法 / アメリカ法 / COVID-19 / 会議の公開 / 公共用物 / 一般使用 / 公共空間 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,公共用物,換言すれば公共空間の自由使用がもつ意義を法学的に明晰に分析するための枠組みの獲得を目的とする。具体的には,①自由使用は法的に保護されないとする近時の通説的見解は,公共用物の自由使用が個人の自由あるいは政治社会の存立にとって有する意義に照らして支持しえないことを示し,②それに代わる自由使用の概念の獲得を目指す。この目的を達成するための手段として,一方では,日本法の基礎をドイツ法及びアメリカ法の層にまで遡り整理し,他方では,公共用物へのアクセスが私人の基本権行使にとってもつ基底的意義を把握する理論構成を試みる近時のイタリア法及びフランス法の議論を参照する。
|
研究実績の概要 |
2023年度には主として3つの方向で研究を進展させた。第1に、憲法学及び行政法学の到達点を踏まえつつ自由使用の概念を彫琢するという本研究全体の目的との関係で中核に位置する、パブリック・フォーラム論に関する検討を行った。これについては、現代における法的諸課題の最前線をなすSNSとの関係でパブリック・フォーラム論を論ずる論文「SNSとパブリック・フォーラム論」を公刊した。 第2に、自由使用の客体である公物に関する学説史を再検討した。すなわち、論文「公物時効取得論の展開図を見取図に描きなおす」において、公物の時効取得に関する学説史を再読することで通説的な学説史理解を塗り替え、時効取得論にとどまらず公物法理論全体を嚮導する概念構成を示唆した。より具体的には、占有と本権の区別を重視することにより、従来の諸学説をより立体的に配置し、また、公物法上の他の領域における先端的学説と整合的な議論を提示しうることを示した。 第3に、自由使用の利益を含むがそれに限られない集合的利益あるいは拡散的利益の法的概念構成につき、とりわけイタリア法を中心とする検討を行った。書評"An Interim Report on "Subjectivization" and "Objectivization" of Administrative Law"はその成果である。そこでは、ドイツ、フランス、イタリアにおいてみられるという権利未満の利益を権利に格上げすることを是とする潮流に対して、そうした潮流に棹ささない理論的萌芽がなお存在することを論じた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画によれば、2023年度はフランス及びイタリアにおける公物法理論の検討を行うこととしていた。フランス及びイタリアの公物法理論それ自体について論文を公表するには至らなかったが、「研究実績の概要」に記したように、その基礎にある行政法理論については検討を進めえた。また、当初は2024年度に予定していたアメリカ法及び日本法の研究を先取りして実施し、その一部については論文として公表することもできた。したがって、全体としてみると研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
新しい自由使用概念の獲得という研究全体の目的との関係では、当初予定していたフランス、イタリア、ドイツの公物法理論の詳細な検討よりも、権利と法律上の利益の区別に関する検討を徹底する方が有益であるという見通しを得ている。したがって、まずはこれら三国における行政訴訟制度の変化(行政法の「主観化」と「客観化」)に関する理論的潮流につき考えをまとめ、そのうえで自由使用概念に関する考察に進む予定である。
|