研究課題/領域番号 |
21K01145
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小谷 順子 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40359972)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 表現の自由 / ヘイトスピーチ / ヘイトクライム / 差別 / アメリカ憲法 / 憎悪 / 憎悪表現 / ジェノサイド扇動 / 比較憲法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人種・民族等の属性に基づく憎悪・侮辱の言動(以下、憎悪表現と記す)への法的対処手法のうち、アメリカ及びカナダ等の法制にみられる、(1)人種等の集団に対する殺害や暴力の扇動表現の規制、(2)人種等の属性に基づく威嚇や嫌がらせの規制に焦点を当て、当該国の法制・判例・学説を網羅的に精査したうえで、各々の国の規制理論又は運用課題を分析し、日本の法制・判例・学説に照らして応用しうる部分を見極める。また、その研究成果を日本国内で刊行するだけでなく、(3)これら論点に関連する日本の法制及び理論をアメリカ及びカナダ等の法制及び理論と比較・分析したうえで、その研究成果を英語で公表する。
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研究実績の概要 |
2023(R5)年度は、まず、前年度から引き続き、ジェノサイド扇動表現、すなわち特定の人種等の属性を共有する集団に対する殺害や暴力の扇動表現の規制に関する米国と日本の比較法研究を継続し、その研究成果を、2023年6月の国際学会において報告した(後掲10の学会発表欄参照)。当該報告では、米国のジェノサイド条約実施法のジェノサイド扇動表現の禁止規定と表現の自由の保障との整合性をめぐる議論と、ヘイトスピーチ規制に関する日本の最高裁判例(最三判2022年2月15日)と学説とに照らしつつ、日本法の下においてもジェノサイド扇動表現については規制の余地があることを指摘した。また、当該研究をとりまとめた日本語の論文も刊行に至った(後掲10の雑誌論文欄参照)。 また、当該年度には、アメリカのヘイトクライム規制に関する調査及び分析も行った。具体的には、連邦法及び州法にみられる、人種等の事由を理由として制定法上の犯罪を遂行した際に刑罰を加重するヘイトクライム刑罰加重法と、人種等の属性に基づく威嚇行為や嫌がらせ行為を禁止する法律とを網羅的に調査したうえで、憲法上の問題点に関する判例及び学説の検証の検証を行った。当該研究を通して、米国においては、純粋な表現規制としてのヘイトスピーチ規制が表現の自由の保障に反すると解されている一方で、人種等を「理由とした(because of)」一定の言動に対する刑罰賦課については許容されていることを確認した。当該研究の成果としての論文は、未だ公刊には至っていないが、2024年度には刊行に至る見込みである。 なお、当該年度には、研究対象をさらに広げる形で、国内のヘイトクライムの記憶の継承をめぐる法的問題に関する研究も実施したうえで、ハーグで開催された国際ワークショップでの招待講演を行った(後掲10の学会発表欄参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で当初予定していた課題の研究自体はおおむね実施することができているが、一部の研究成果に関する論文刊行(日本語)と国際学会での報告が次年度に持ち越しとなったため、「やや遅れている」と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、米国のヘイトクライム規制に関する研究をとりまとめた論文の刊行を予定しているほか、日本国内のヘイトスピーチ規制に関する議論を総合的に取りまとめたうえで、欧米のヘイトスピーチの専門家らとともに国際学会で報告を行うことを計画している。
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