研究課題/領域番号 |
21K01149
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 追手門学院大学 (2022) 長崎県立大学 (2021) |
研究代表者 |
福島 涼史 追手門学院大学, 准教授 (70581221)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 自殺防止 / 自殺予防 / エミール・デュルケム / カール・シュミット / 自己決定権 / 生命権 / 自殺抑止 / 公法理論 / 自殺類型 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、自殺の防止・予防という課題に対して、そのための教育・啓発に法学的基礎を与えることで応えようとする。命の大切さといった抽象的な道徳内容では効果的とはいえず、医学的なデータと社会学的な知見に基づくアプローチが求められる。自殺をしない、させないためには、自己決定や相互援助に関する個別の規範の醸成が不可欠であり、実定憲法や国際人権条約からの導出が有益である。 本研究は、孤立、過労、失望、逃避など各々の事態を抑止する規範を整序する枠組みとして、E・デュルケムの自殺類型とC・シュミットの公法理論に依拠する。 最新の統計や政策評価に基づく両者のアップデートは現代社会への貢献になりえる。
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研究実績の概要 |
古典的研究の吟味という基礎的な作業を終え、本年度はより政策・教育現場側に歩みを進めるべく教育学や精神医療分野の研究との整合・連携を図った。その際、まず壁となったのが、自傷・自死は、教え、諭し―「命の教育」―によって忌避させる対象ではなく、メディカルなサポートによって発見・対処さるべきものという立場であった。この立場からは、自殺の是非といった道徳内容を持ち出すことは有害であり、特に、自傷・自死を試みた経験のある子どもたちを非難し、孤立させることにつながるとの指摘がある。 これに対して、A)カウンセリングなどの語りかけの内容、B)気づき・援助の基礎づけ、C)自殺予防政策の基礎づけの各次元の峻別を前提とし、本研究の射程がB)とC)にあることを明確にした。リスクのある子どもに自己決定や命の尊厳といった憲法・道徳的な価値を語ることが無意味であるとしても、自傷・自死は他者危害原則に抵触しない、個人の自己決定のカテゴリーであるという命題を克服することなしには、いかなるサポート・政策も提起しえないからである。 このような理論的な課題を見据えつつ、自殺者数の総数が減少してきているものの、若い世代の自殺者数が増加の傾向を見せているということの実態を探るべく、調査を深めた。その上で、A)のメディカルな対処に導くための、B)周囲の援助の目線を醸成することの意義が浮かび上がった。これをうけて、B)援助の役割を自覚・共有するための倫理的な責務、B)を推し進める政府・国家の義務の内実・輪郭を明らかにする公法理論的導出・確定を行った。これらの関連内容を研究報告し、原稿にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究にとって有益な協力をあおげるだろう、教育学分野をはじめ他分野の研究者のリストはすでにあるが、2022年度は面談を申し込める状況でない期間が続き、そのような人的なリソースの分野での不可避の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
上の協力者リストをもとに面談を申し込んだり、関係の研究会に出向いたりして、つながりをもち、研究の幅を広げたい。 内容としては、例えば、自死と自殺との区別・使い分けに象徴されるような、医療的な治療の対象となるケースと当人や周囲に対する教育・啓発で予防しえるケースの違いをどのように教育現場で、あるいはフィルタリングし、あるいは包括的に扱うかの基準の確立に努めたい。 そのために、まず、補集合となるメディカルなケーススタディーを精査し、判断基準をあぶり出したい。
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