研究課題/領域番号 |
21K01152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小川 有希子 帝京大学, 法学部, 助教 (80846288)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | 専門知 / 民主的コントロール / 政府提出法律案 / 立法過程 / 規範形成過程 / 国会によるコントロール / 科学技術と法 / 憲法 / 行政法 / 政策形成 |
研究開始時の研究の概要 |
加速度的に進む技術進化は、各領域を複合的につなぎ、複雑化・多様化する課題に対応するための迅速な規範形成の必要性を生じさせている。他方で、専門的知見を要する領域における政策形成や意思決定に際しては、専門家と政府の間の関係性、国会によるコントロール、政府の国民に対する説明責任などの問題が生じている。 本研究は、科学技術に関する専門知の規範形成過程における位置づけを明らかにし、科学技術に関する規範形成過程を既存の公法体系に再定位することで、かかる領域におけるよりよい統治(ガバナンス)の可能性を提示することを目指す。
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研究実績の概要 |
2年目に当たる2022年度は、専門知と政策決定の関係に関する日仏比較を行うことを予定していた。Covid-19をめぐる政府対応は、専門知に基づかない政策決定がなされた場合における当該決定の正当化の問題を提起した。専門委員会において、利害関係の調整を含む一連の規範形成がなされている実態の正当化根拠は、専門家ないし専門家集団の自律性・専門性・独立性に求められてきた。しかし、かかる正当化のロジックは、専門家委員会の提言と矛盾する政策を政府が選択する場合にまで妥当するだろうか。政府と国会の関係に関する憲法理論(議院内閣制の下における議会によるコントロールと政府の説明責任)を前提に、かかるロジックを精査する必要がある。こうした課題意識の下、緊急事態における政策決定の場合も含めて、日仏調査を行う予定であった。 そこで、科学専門家と政治的意思決定の関係について、①専門家関与のあり方の類型、②日本の専門家組織の変遷、③専門家と統治・行政過程との関係、④専門家委員会の事後的検証、⑤議会への情報提供、⑥民主的コントロールの6つのテーマについて調査・研究した(報告「緊急下ないし不確実性下における政策形成」、活字化予定)。 上記⑤および⑥については、2023年2月にフランスでのインタビュー調査も行い、相対的に情報や専門性に乏しい議会への情報提供および議会コントロールについて研究を進めた(刊行予定論文「政府提出法律案の影響評価ーー新たな評価指標の可能性ーー」)。政府と国会の関係については、政府提出法律案に対する議会によるコントロールのあり方の参考になり得る制度として、フランスの政府提出法律案に対する影響評価制度についての研究も進めている。 さらに、緊急事態における政策決定については、日本における緊急事態制度の歴史的経緯について研究途中にある(報告「立憲主義と国家緊急権:緊急事態における議会統制」)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に予定していた研究計画の主要な部分については、上記「研究実績の概要」に記載のとおり、遂行することができた。 さらに、①議会への情報提供や議会によるコントロールの手法の一つとしてのフランスにおける政府提出法律案の影響評価制度および②議会審議の活性化に関して、フランスの政府機関や議会においてインタビュー調査を実施することができた点において、当初の計画以上に研究を進めることができた。 他方で、緊急事態における政策決定の場面における専門知と政策決定の関係については、十分な検討が加えられていない。 計画どおりに進展しなかった部分があるものの、計画より進展した部分も多く、全体としては、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の中で、当初は予定していなかったものの、国際的なNGOなどの市民社会組織が政策形成にとって重要な役割を担いつつあることが判明した。NGO等は、グローバル化の進展に伴い、近時益々専門性や政策提言機能を向上している。研究初年度にあたる2021年度に予定していた「公法学の観点から、専門知を集約するための経路を体系的に整理すること」という到達目標との関係においては、このような市民社会組織の法的位置づけについて検討する必要がある。 本研究の最終年度にあたる2023年度は、2022年度までに得られた成果を、日本の公法体系ないし法秩序と接合させ、新たに得られた視点・知見をも統合させながら、研究成果全体を体系化することを予定している。
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