研究課題/領域番号 |
21K01154
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
上代 庸平 武蔵野大学, 法学部, 教授 (90510793)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 公文書管理 / アーカイブズ学 / アーカイブズ法 / 公文書館 / 情報自己決定権 / 公文書管理法 / 公文書管理条例 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、公文書管理法制の制度形成に、情報自己決定・自治権という「主観的法的地位」の視座が及ぼす影響について、立法への規範力と裁判規範性を中心に、ドイツの公文書管理法制との比較分析を行うものである。 憲法上の主観的法的地位及び客観的法規範を基層としているドイツの公文書管理法制の発展過程と運用に対する分析から、日本国憲法における公文書管理法制の形成立法に対する客観的規範として機能しうる「情報自己決定」及び「地方自治」の可能性を探り、その制度像を措定する。さらに、デジタル化など日独両国が共通して直面する行政情報の取り扱いに関する問題に照らして、措定した制度像の妥当性と具体的制度のあり方の検討を行う。
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研究実績の概要 |
当年度は、昨年度に概念付けを行った「統治アーカイブズ」について、その法的及び制度的基盤の整備及び形成の状況に関する情報収集と状況把握を行い、「統治アーカイブズ」の統治機構における位置づけ及び憲法上の「主観的法的地位」としての情報自己決定権ないし「客観的規範」としての地方自治に対して果たしうる機能についての予備的考察を行った。 ドイツにおいては、旧東ドイツ時代の人権侵害の記録を永続的に保存し、被害者の情報自己決定権の実現と国家による加害者の訴追を可能にするための機関として、連邦シュタージ文書管理全権受任官及びシュタージ文書管理庁(いずれもDer Bundesbeauftragte fuer die Stasi-Unterlagen; BStUと称する)及びそれに相当するラント官庁が置かれてきたが、これらは2021年に連邦公文書館に統合され、明確に統治アーカイブズの一機構として位置づけられるに至った。その法的基礎としての連邦公文書館法及びシュタージ文書法の改正並びに制度及び機構の変更に関して書面及び訪問による調査を実施するとともに、ラントによって設置運営される、同様の機能を有する機関及び施設についての基礎調査及び実地調査を実施した。 日本においては、公文書管理法の制定を契機として独自の公文書管理条例を制定した地方公共団体においては、条例に基づく文書の管理及び特定歴史公文書等の保存が軌道に乗ってきていることを踏まえ、法制度整備の効果検証及び制度の運用実態の把握を目的として、実地調査を行った。また、統治アーカイブズの担い手として期待される国立公文書館認定アーキビストの教育が開始されたことについて、公法及び制度論上の教育内容の充実の方向性について、ドイツのアーキビスト養成との比較のための準備作業に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当年度は、新型コロナウイルス禍の影響が漸次緩和されてきたことから、制度運用の実態把握のための実地調査については国内国外いずれについてもほぼ計画通り実施することができたほか、資料調査についても実地調査時に提供を受けることができたことなどから、分析対象としての量質両面において充実して行うことができたと感じている。 ただ、新型コロナウイルス禍の緩和の時期の関係場、実地調査の時期は年度後半にずれ込むことを余儀なくされ、実地及び資料調査の成果自体は挙げることはできたものの、それに対する充分な分析や検討の時間を確保することはやや困難であった。分析結果に基づく業績については順次公表していく予定ではあったが、上記の事情により公表時期は年度を超えることになったため、成果の公表の機会の確保については遅れが生じたものと捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画においては、3年目である当年度には、「統治アーカイブズ」の概念把握並びにそれに対する憲法及びそれに基づく「主観的法的地位」たる情報自己決定権・「客観規範」たる地方自治保障の視座の移入可能性に基づき、「統治アーカイブズ」を中心とする公文書管理の具体的な制度像を明らかにする作業に着手することとしている。 過年度においては、ドイツにおいて情報自己決定権・地方自治保障との関係における公文書管理制度の制度形成の状況について把握を行い基礎的な分析を行ったほか、日本における公文書管理制度の形成の経緯と現状についての実態把握を行ったので、まずはそれについての上記の視点からの分析・検討結果を公表することが急務であると考えている。 また、情報自己決定権ないし地域アイデンティティーの実現に関わる文書資料についてのラントないし自治体の文化高権(Kulturhoheit)についても、ドイツ及びアイルランドにおける制度調査において知見を得たので、この点を検討の視点に加える予定である。当年度は、「文化」または「文化高権」の憲法及び公文書管理法制(必要に応じて財政法)の上での位置付けについてまずは分析を行い、これまで検討対象としてきた憲法法益との関係性についての整理を行いたい。
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