研究課題
基盤研究(C)
国や地方公共団体の設置する公共施設は、日常社会における私人の表現や集会の場として重要な存在となっている。もっとも、そのような公共施設の使用をめぐっては、単なる施設管理にとどまらない、当該施設において行われる表現・集会の内容や事実上の波及効果などをめぐって、使用不許可などの規制がどこまで許容されるかといった法的問題が生じ、現に紛争も起きているところである。本研究は、かかる問題を検討するにあたっては、行政法における公物法・営造物法と憲法における人権論との間の理論的架橋が必要であるとの認識の下、比較法的な研究をも踏まえ、この両法分野を総合した統一的な公共施設法の構築を試みるものである。
2021年度は、集会の自由と公共施設の利用の関係について、憲法(人権論)の観点から、分析の基本的な視座を確立するとともに、行政法の観点から、地方自治法244条の「公の施設」と講学上の「営造物」概念との関係や公の施設の使用をめぐる「管理」作用と「警察」作用の関係について、具体的な事例を踏まえて考察を行った。2022年度は、本研究の具体的素材の1つとしていた金沢市庁舎前広場使用不許可事件(第2次訴訟)につき、2023年2月に最高裁判決が出されたことから、判例の状況にも大きな展開がみられた。とりわけ、同事件では、憲法違反を主張した上告事件については棄却判決がなされ、裁量権の逸脱・濫用を主張した上告受理申立事件については不受理決定となった。憲法訴訟では、一般に、憲法違反と(裁量権の逸脱濫用を含む)法令違反は密接不可分の関係にあることが想定されるところ、同判決ではそれが分断されて処理されており、そのことの含意について検討を行った。2023年度は、憲法(人権論)と行政法(裁量論)の融合的な検討を志向しつつも、以上のような実際の裁判実務の現状に鑑み、この両者につき違法事由を腑分けして検討することも試みた。すなわち、上記最高裁判決における憲法論の分析のほか、同様に公共施設における集会の自由が問題となりながらも、上告棄却・上告不受理となった事件との差異などについても検討を行った。また併せて、公共施設の使用提供における行政の「政治的中立」とは何かという実体法的な問題について、地方公共団体や公務員は、通常の私人と比較してどのような場面で「政治的中立」が問題とされうるかについて検討を行った。また、憲法上の基本権論については、「法的様相の理論」など基本権の構造に関わる基礎理論と具体的な解釈論の接点について検討を試み、公共施設の使用など給付行政における基本権の位置づけについて考察を行った。
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