研究課題
基盤研究(C)
国や地方公共団体の設置する公共施設は、日常社会における私人の表現や集会の場として重要な存在となっている。もっとも、そのような公共施設の使用をめぐっては、単なる施設管理にとどまらない、当該施設において行われる表現・集会の内容や事実上の波及効果などをめぐって、使用不許可などの規制がどこまで許容されるかといった法的問題が生じ、現に紛争も起きているところである。本研究は、かかる問題を検討するにあたっては、行政法における公物法・営造物法と憲法における人権論との間の理論的架橋が必要であるとの認識の下、比較法的な研究をも踏まえ、この両法分野を総合した統一的な公共施設法の構築を試みるものである。
国・地方公共団体の各種公共施設の使用については、表現(集会)の自由との関係で、憲法・行政法上さまざまな問題が論じられてきたところ、本研究においては、①基礎的研究として、憲法(人権論)の観点とともに、行政法の観点から、公の施設の使用をめぐる「管理」作用と「警察」作用の関係につき考察を行った。その上で、②具体的な判例を素材に、人権論(憲法)および裁量論(行政法)の観点から問題を考察するとともに、付随して生じる憲法訴訟をめぐる訴訟法上の問題についても考察を行った。さらに、③公共施設の使用提供における行政の「政治的中立」とは何かという実体法的な問題についても検討を行った。
表現(集会)の自由は、基本的には国家による干渉・介入を受けない権利(国家からの自由)として位置づけられるが、国家が、福祉国家の実現を目的とする給付行政(教育・文化)の一環として、公共施設を表現活動の場として提供している現実がある。このような公共施設の使用については、一般に許可制がとられているところ、最高裁判例も、公の施設の利用制限が憲法の保障する集会の自由にかかわるものであることを承認している。本研究においては、このような公共施設の使用関係をめぐる憲法、行政法上の問題につき分析したが、公共施設の提供と政治的中立との関係など、近時発生し、かつ議論されている諸問題の解明に資するものと思われる。
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