研究課題/領域番号 |
21K01160
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
竹村 仁美 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (10509904)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 国際刑事法 / 国際犯罪 / 防止義務 / 国際法上の個人の刑事責任 / 国家責任 / ジェノサイド / 国際法上の個人犯罪 / ロヒンギャ / 国際法上の個人責任 |
研究開始時の研究の概要 |
犯罪を未然に防止し、安全な社会を構築することは国際社会と国内社会共通の課題である。集団殺害犯罪(ジェノサイド)、人道に対する犯罪、戦争犯罪などの国際法上の重大犯罪についても、事前防止が肝要となる。
国際法上の重大犯罪については、条約上、犯罪の防止義務が国家に課せられると共に、軍隊又は部下の犯罪を防止・抑止しなかったことにつき上官責任として個人の刑事責任も課されることがある。本研究は国際法上の重大犯罪に対する国家と個人の防止義務について整理し、国家責任と個人責任の二重追及の国際法構造を再検討する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、国際社会の関心事である重大な国際法上の犯罪を防止する国家と個人の義務の射程を明確化することにより、国家責任と個人責任の二重追及に関する現代国際法の状況を明らかにすることにある。
重大な国際法上の犯罪についてはジェノサイド条約第1条、国際法委員会の人道に対する犯罪条文草案第3条に見るように、犯罪の防止義務が国家に課せられると共に国際刑事裁判規程第28条では上官責任の形式で、軍隊又は部下の犯罪を防止・抑止しなかったことについて個人の刑事責任も課されている。そこで、国際法上の犯罪に対する国家と個人の防止義務について改めて整理し、現在国際司法裁判所と国際刑事裁判所に同時係属している事件を取り上げ、国家責任と個人責任の二重追及の国際法構造を再検討する。
具体的な研究項目は、①国際法上の犯罪に対する国家の防止義務、②国際法上の犯罪に対する個人の防止義務、③国際法上の犯罪の防止義務違反に対する国家責任、④国際法上の犯罪の防止義務違反に対する個人責任、⑤国際法上の犯罪に対する国家と個人の二重責任追及の国際法状況の分析の5つである。2023年度は本研究課題着想時から懸案となっていたミャンマーによるイスラム系少数民族に対する迫害について国際司法裁判所と国際刑事裁判所に同時係属している様子についてまとめ、研究項目①-⑤を総括する成果として英文単著の形で刊行することがかなった。また、ウクライナの事態も国際司法裁判所と国際刑事裁判所との同時係属となったので、それについて研究を進めた。海外調査についても、例年通り、オランダ・ハーグでの文献調査、国際刑事裁判所訪問も行い、研究内容の充実に努めた。2023年9月3日には新潟市万代市民会館410室において科研費研究会を開催し、木原正樹神戸学院大学教授と私とそれぞれ報告を行い、国際人権法、国際刑事法、武力紛争法の専門家と意見交換をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には、本研究課題の主要な研究成果の1つとして、国際刑事裁判所と国際司法裁判所に同時係属しているミャンマーのイスラム系少数民族のロヒンギャについて英文単著を刊行した。このように、国際司法裁判所と国際刑事裁判所の同時係属事案について、研究開始当初はミャンマーの事態のみを想定していたところ、2022年度中にウクライナの事態も同時係属することとなったため、研究対象が拡大した。そこで、2022年度中に、ウクライナの事態について国際法の様々な分野から検討し、評価を行う共編書を出す計画に参加することとし、結果として共編者をはじめ多くの研究者に著者として協力して頂き、2023年度中にウクライナについて英文共編書を刊行することができた。以上の通り、英語での研究成果を出せたことで、一定程度、研究成果について国際的発信の進展が見られたことから、この自己評価をするに至った。
加えて、2023年度中には、オランダの平和宮図書館での文献調査、国際刑事裁判所の事件傍聴など海外調査も達成できた。
本研究課題に関して、国際司法裁判所と国際刑事裁判所の同時係属の動きが2023年度中にもう1件増えたので、このパレスチナの事態については2024年度中にその動向を注視し、ミャンマー、イスラエルに加えてその意義をまとめていく必要がある。すなわち、国際刑事裁判所規程の締約国であり日本は未承認のパレスチナの事態について、2021年3月に国際刑事裁判所の検察官が捜査開始を表明していたところ、2023年12月に南アフリカがイスラエルのパレスチナ自治区ガザ地区での軍事行動をジェノサイド条約違反であるとして国際司法裁判所に提訴した。南アフリカは、2023年10月に激化したガザ地区の状況を踏まえて、国際刑事裁判所にも2023年11月にバングラデシュなどと共にパレスチナの事態を付託した。以上の動向は翌年度への課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる2024年度には、国際犯罪の防止という目的のための国家と個人の義務や責任追及が国際刑事司法の効率性をいかに高め、国際刑事裁判機関の実効性確保につながるのか制度論を検討し、国際犯罪防止の国家責任法と国際刑事法と国際人権法の調和的実現の動向について現代国際法の現状分析を行う。そして、国際法上の防止義務が国際環境法など他の分野においてどう展開しているか予備的考察を行う。国際犯罪防止義務の射程について、学術的立場から、社会へ提言を行うことを目標に、成果を口頭、文書などの形式で公表するよう努める。
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