研究課題/領域番号 |
21K01168
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
河野 真理子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90234096)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 国際司法裁判所(ICJ) / 国連海洋法条約第15部 / 国際海洋法裁判所(ITLOS) / ISDS条項 / CETA / 投資仲裁 / 国際司法裁判所 / 国際海洋法裁判所 / 投資紛争 / 特別アフリカ裁判部 / 個人の国際犯罪 / 勧告的意見 / 国連海洋法条約 / 仲裁 |
研究開始時の研究の概要 |
国際社会では従来、国際司法裁判所のような普遍的な国際裁判制度が存在するのみであった。しかし、今日では、欧州、米州、アフリカにおいて、地域的な国際裁判制度が著しく発展し、先例の蓄積がみられる。また、国内の裁判手続に国際的な要素を含む問題が付託される先例も増えており、普遍的な国際裁判手続、地域的な国際裁判手続、各国の国内裁判手続の3つのレベルの裁判手続が密接なかかわりを持つようになっている。本研究は、国際社会における裁判制度の意義の検討を目的とし、国内裁判手続をも分析の対象とし、普遍的な国際裁判制度、地域的な国際裁判制度、国内裁判制度の3つのレベルの裁判制度の関係を分析するものである。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、1.国際司法裁判所(ICJ)と国連海洋法条約第15部に基づく紛争解決制度が交錯する事例の研究と、2.多くの投資条約や経済連携協定の投資章で規定されている外国人投資家対国家の仲裁を認める条項(ISDS条項)に基づく外国人投資家対国家の仲裁と国内裁判所の関係に関する研究を行った。 1.については、ICJと国連海洋法条約第15部に基づく仲裁および国際海洋法裁判所(ITLOS)の先例の分析を継続的に行った。特にモーリシャスの独立時のチャゴス諸島の扱いに関する問題は、モーリシャス対英国という2国間の紛争にとどまらない展開を見せ、この紛争の特定の側面が国連海洋法条約第15部の紛争解決制度(仲裁と国際海洋法裁判所(ITLOS))とICJに付託されることになった。2015年に国連海洋法条約第15部の紛争解決制度の下での仲裁判断が出された事案では、国連海洋法条約の解釈又は適用に関する紛争に限定した判断が示された。その後、モーリシャスが主導して、国連総会がICJに勧告的意見を要請し、2019年に意見が出された。モーリシャスとモルディブの間の海洋境界に関する紛争がITLOSの特別裁判部の2021年判決ではICJの勧告的意見の法的効果が論じられることになった。これらの先例は、今日の国際社会における国際裁判手続の重層的な利用がもたらす意義と問題点を示すものである。 2.については、ISDS条項に基づく仲裁判断の先例だけでなく、特にEUを中心にして議論が展開されるようになったISDS条項に基づく仲裁裁判への批判に着目した。EUとカナダの間の経済連携協定(CETA)の投資紛争解決制度や常設の投資紛争解決制度の設置を目指す議論に着目するとともに、ISDS条項に基づく仲裁と常設の投資紛争解決制度に共通する問題としての国内裁判所と国際的な投資紛争解決制度の関係についても考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の研究計画を作成した際、英文による成果の交換を最終目的とすることを掲げていた。2021年度と2022年度は、日本語での研究成果の発表とその公刊の機会が多かったため、英文による原稿の執筆に必ずしも十分な時間が取れなかった。また、コロナ禍により、オンディマンド配信の録画による講義を行ったため、録画の準備と作業に多くの時間が必要であったことも、研究がやや遅れる原因になったことを認めざるを得ない。 2023年度は英文による原稿執筆に最も多くの時間を費やすことができる予定であり、最終年度である本年度に、英文による研究成果が公刊できるよう最大限の努力ができることを期待している。 なお、投資紛争関係の研究については、最近の多様な動きを十分に検討し、2023年4月にその成果を英語で報告する機会を得ることができたため、この分野の研究については、2022年度に特に大きく進展したと考えている。その成果は2023年度中に公刊を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、ICJや国連海洋法条約第15部に基づく紛争解決制度に関する研究を一層推進し、その成果を英文で公刊する作業を行う。特に2022年度の研究で、ICJの勧告的意見に着目したところであるが、同年度中に、ICJとITLOSに新たな勧告的意見の要請があり、現在の国際社会における国際裁判の意義を考える上で、争訟事件手続だけでなく勧告的意見手続にも改めて着目する必要が出てきていると考える。こうした視点で2023年度の研究に臨みたい。また、投資仲裁に関しても、常設の紛争解決制度を求める議論が一定の結果をもたらすようになっており、そうした議論の意義と問題点を、現行の投資仲裁制度の下で出された先例の分析も含めて考察していきたいと考えている。また、投資紛争の解決における国内裁判所と国際的な手続の関係についても継続的に研究を進める。 上記のような研究を通じて、現在の国際社会における国際裁判の意義を検討していく予定である。
|