研究課題/領域番号 |
21K01174
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池田 悠 北海道大学, 法学研究科, 教授 (00456097)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 労働市場 / 雇用システム / インセンティブ / 離職 / 交渉 / 社会法学 / 労働 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、伝統的に辞職の自由として労働者に認められてきた権利が、労働者にとって単に望まぬ仕事から解放されるという消極的な意味の権利を超え、自ら処分可能な積極的権利として労働市場における取引が認められうるかという問題関心の下、日米の比較法研究を行う。そこで、労働市場における個別交渉や合意による権利の処分に関して先行するアメリカ法の経験を参考に、労働市場における交渉力のある労働者を念頭に置いた在職合意の設定可能性を模索することで、労働市場における交渉を促進するインセンティブ規制としての労働法の実現可能性を探求する。
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研究実績の概要 |
本研究は、わが国の労働法が伝統的に労働市場における労使当事者の交渉力格差をその存立基盤とし、強行法規の設定を以ってその交渉力格差を是正することに注力してきたのに対し、近年の日本型雇用システムの変容に伴って増加しつつある有為人材として労働市場における交渉力を発揮する労働者であれば、労働市場における交渉のインセンティブとなるようなデフォルトルールの設定によって、労働者自らが望むキャリア形成に誘導することができるという仮定の下、労働市場における交渉力がある労働者を念頭に、労働市場における処分可能性を含んだ労働者の「離職権」概念を構想し、労働市場における交渉を通じた労働者のキャリア形成に資するインセンティブ規制としての労働法の実現可能性を探求するものである。 研究3年目の本年度は、研究2年目までに獲得された知見を元に、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い積み残しとなっていたアメリカ法にかかる理解の深化を図りつつ、研究の総括に向けて日本法との比較法的考察を進めてきた。そこで、アメリカ法にかかる理解の深化を図る目的から日米両国における出入国制限の推移を見守りつつアメリカでの実地調査を敢行すべく関係者との調整を進める一方で、既に入手した資料に基づく比較法的知見の獲得作業を進め、昨年度から一部前倒しして実施してきた日本法にかかる成果との比較法的考察を更に進めることにより、成果の取りまとめとその公表に向けた作業を推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、労働市場における労使当事者の交渉力格差をその存立基盤としてきたわが国の労働法において、労働者自らが望むキャリア形成を可能とする余地を探求すべく、アメリカの知見を参考に、労働市場における処分可能性を含めた労働者の「離職権」概念を構想し、労働市場における交渉を通じた労働者のキャリア形成に資するインセンティブ規制としての労働法の実現可能性を探求するものである。 本年度は、当初の計画では、研究最終年度として、日本法にかかる研究を深化させる一方で、比較法的知見の獲得に向け、年度後期を目途に労働市場における交渉実態を把握するためアメリカでの実地調査を敢行する予定であった。しかし、本研究目的に資する実地調査は、労働市場における交渉実態にかかる一次資料の収集となるため、現地関係者との綿密な調整を経て初めて実施し得るところ、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う出入国制限の完全な撤廃が本年度途中となったこともあり、米国内の現状や調査の是非をめぐる情報の収集に想定よりも時間を要してしまい、結果として年度内に調査を行うために十分な準備期間を確保することができなかった。もっとも、新型コロナウイルス感染症の流行は本研究課題の採択当初からの障害であるため、引き続きデータベースを活用するなどして比較法研究を進めるとともに、外国出張の準備を先送りしたことに伴う時間的余裕を活用して、日本法にかかる成果の取りまとめや公表を前倒しし、全体としての研究計画の遂行に後れをとらないよう留意して研究を進めてきた。しかし、実地調査を通して得られる予定であった一次資料が入手できなかったことにより、比較法的知見を踏まえた研究成果の取りまとめにおいて遅れが生じてしまったことは否めず、やむなく研究期間を延長し、残された研究と成果の取りまとめに充てることとした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、アメリカ法について本年度の研究で積み残しとなってしまった実地調査を含む残された研究を速やかに執り行いつつ、日本法との比較法的考察を進め、研究成果の取りまとめを実施する。
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