研究課題/領域番号 |
21K01185
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
柴田 洋二郎 中京大学, 法学部, 教授 (90400473)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 社会保険の人的適用範囲 / 補足的医療保障 / 非雇用労働者と社会保険 / 補足医療保険(フランス) / 非雇用労働者 / 社会保険の財源 / 社会保険の給付形態 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、働き方の多様化のなかで非雇用労働者が増加し、雇用労働者との外延が曖昧化するなかで、社会保険制度がどのように対応すべきかを検討する。そのため、フランスを参考に、被用者保険(医療・年金)と労働保険(労災・失業)の双方を視野に入れて非雇用労働者に対する社会保険の適用のあり方を探る。これにより、社会保険の人的対象・財源・給付形態にかかる理論的基礎を闡明し、非雇用労働者に固有の社会保険上の保護や雇用労働者との中間的な保護を講じる可能性を検討することが目的である。
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研究実績の概要 |
本研究では、働き方の多様化のなかで非雇用労働者が増加し、雇用労働者との外延が曖昧化するなかで、社会保険制度がどのように対応すべきかを検討する。 従来の政策・判例は、非雇用労働者に雇用労働者の制度を拡大したり、非雇用労働者が雇用労働者と同視しうるかという「被用者か非被用者(自営業)か」という二者択一的な思考により、社会保険制度の適用を決めようとしてきた。この結果、雇用労働者とされなかった「労働者」は、労働法の保護を受けられない不利益に加え、社会保険上も給付内容や給付水準で雇用労働者との格差が生じている。 こうした状況について、フランスを参考に、被用者保険(医療保険・年金保険)と労働保険(労災保険・失業保険)の双方を視野に入れて非雇用労働者に対する社会保険の適用のあり方を探った。フランスも、被用者と自営業に分類される社会保障制度を基盤にしている。しかし、2010年代半ば以降、フランスが就業上の地位にかかる社会保険から、就業形態に中立的な社会保険に向かっていると見受けられる改革が見受けられる。 2022年度は、特に医療保険に着目して、フランスとの比較研究を行った。フランスにおける公的医療保険の生成・発展のプロセスを踏まえて、被用者に適用される制度と自営業に適用される制度との給付水準や給付内容の相違とそれらが縮小していること(格差解消)が明らかとなった。しかし、日本と異なり負担残額の種類が多岐にわたり、また金額も大きいフランスで重要な要素をなす補足的医療保険については被用者と非被用者の保障の間に大きな差異が残されていることがわかった(もっとも、そのなかで、被用者に対する保護は手厚くなされるようになっている)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被用者保険(医療保険・年金保険)と労働保険(労災保険・失業保険)の双方を視野に入れて非雇用労働者に対する社会保険の適用のあり方を探るなかで、フランスの医療保険を検討することができた。その結果、フランスでは公的医療保険と補足的医療保険の二階建ての構造となっていること、このうち公的医療保険では独立自営業者等の非雇用労働者に対する制度と被用者に対する制度の内容が接近しつつあること、ただし、補足的医療保険では非雇用労働者と被用者の保障内容に差異があること、を明らかにすることができた。以上から、本研究は「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、以下の2つについて研究を進める必要がある。 1つは、医療保険以外の社会保険制度である。特に、労働保険(労災保険・失業保険)は、定義上、「被用者のみ」を担当する(ただし、被用者に当たるか否かは、当事者の取り決めといった主観ではなく、実際にどのように働いているかという客観から判断される)。しかし、働き方が多様化するなかで、自営業者のなかにも被用者に近い働き方をする者が出てきている(たとえば、実態として発注者からの依頼を拒否することができない者)。このような者に対する保護の可能性を検討する必要がある。 もう1つは、日本における議論の状況・制度のあり方を整理・分析することである。フランスの検討を進めるなかで得られた示唆を、日本の法制度の文脈に照らして検討することが必要となる。
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