研究課題/領域番号 |
21K01190
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
渡辺 卓也 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (90350454)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
|
キーワード | 刑法の適用 / 罪刑法定主義 / 双方可罰性 / 刑法 / 国際犯罪 / 国際刑法 / 正当化原理 |
研究開始時の研究の概要 |
刑法の適用について論じた研究は、もっぱら適用の必要性や有効性に関心を向けていた。また、これらの研究の多くは、検討対象を特定の犯罪に限定していた。そこで、刑法の適用について、より一般的な犯罪にも妥当し得る正当化原理を示す必要がある。本研究は、国際化する犯罪に対する刑法の適用について、国内刑法のみならず国際刑法をも視野に入れた普遍的な正当化原理を探究することを目的とする。 本研究により、国際化する犯罪に対する刑法の適用について、基盤となる理論を提供することが可能となる。それが刑法の基本原理に関係することから、刑法学の見地からの理論的検討が不可欠だが、学際的観点を採り入れた立法論的研究も必要である。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、前年度に引き続き、国内刑法の適用について検討した。前年度までの検討により、刑法の域外適用を理論的に正当化するためには、立法論的に、双方可罰性の原則の導入について検討すべきとの結論に至っていた。 もっとも、罪刑法定主義の2つの要請のうち、民主主義的要請に基づく法律主義が憲法上の要請であるとすれば、このような解決が当該要請に抵触しないかを慎重に検討する必要がある。例えば、法律主義の例外として、適用される処罰規定の内容が犯罪地国に委ねられたと構成することが考えられるが、その場合には、憲法上の他の例外規定、すなわち、「特に法律に委任がある場合」に政令に罰則を定め得るとする規定(73条6号但書)や「法律の範囲内」で条例に罰則を定め得るとする規定(94条)を参考に、その根拠が模索されるべきである。 以上のような問題意識から、これらの例外規定の正当化根拠を探究し、双方可罰性の原則の導入にあたってその成果を援用し得るかを検討した。そこでは、「法律」による統制が可能であることを前提に、制定過程における特徴をも考慮しながら、実質的観点から、その民主的正統性が論じられている。これと同様に、双方可罰性の原則の導入により、刑法の域外適用においても、法律主義の例外を認め得る要素があるといえる。 以上、検討した内容につき、他の研究者と意見交換をするため、第117回早稲田大学刑事法学研究会において、これまでの検討結果をまとめた研究報告を行った。また、当該報告における意見交換で得た着想を採り入れ、論文(「双方可罰性の原則と罪刑法定主義」筑波ロー・ジャーナル34号(2023年)掲載予定)を執筆した。その後は、罪刑法定主義の自由主義的要請との関係での正当化原理について、検討を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、本研究の第1段階である国内刑法の適用についての検討を概ね1年半程度で終える予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症の拡大傾向に歯止めがかからず、学会や研究会等の中止や延期が相次いだこと、また、それらがオンライン開催に変更になったことから、もっぱら単独での資料収集とその分析に終始することで新たな着想を得る機会が乏しく、研究が深まらなかった。 2022年度は、学会や研究会等の対面開催が増えることを見込んでいたが、感染症の拡大傾向がなお継続したことから、ようやく、2022年度後半になって対面開催が増え、他の研究者との対面での意見交換により新たな着想を得ることができた。そのため、罪刑法定主義の民主主義的要請との関係での正当化原理については執筆を終えたものの、自由主義的要請との関係での正当化原理については、年度終わりに近づいてから、ようやく検討を開始したところである。 以上から、当初の研究計画と比べて、本研究の進捗は「やや遅れている」。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の第1段階を早期に終えるため、2023年度は、引き続き国内刑法の適用について検討を行い、年度前半には一定の結論を得ることとする。今後は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の扱いが変わり、学会や研究会等の対面開催が、さらに増えることが見込まれる。そこで、これらに積極的に参加し、他の研究者との意見交換を通じて新たな着想を得る機会とし、それを論文執筆に繋げたい。 「研究実績の概要」でも示したように、2022年度後半から継続している内容として、まず、双方可罰性の原則の導入が、国内刑法に違反した外国人が違法性の意識を持ち得ることを担保し得るかを検討し、罪刑法定主義の自由主義的要請ないし責任主義との関係で、立法論的方策の妥当性を検証する。次に、これらの国内刑法の適用に係る検討で得られた知見を応用し、国際刑法の適用についても、正当化を可能とする方策について、一定の方向性を示したい。このうち前者については、年度内における研究成果の公刊を目指し、後者についても、年度内に論文執筆を終えることとしたい。
|