研究課題/領域番号 |
21K01193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
緑 大輔 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (50389053)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 行政警察活動 / 司法警察活動 / 違法捜査抑止 / 令状主義 / 違法収集証拠排除法則 / データ駆動型警察活動 / プライバシー / 財産権 / 情報プライバシー / 客観法 / 法律留保原則 / 犯罪捜査 / 警察活動の制御 / 強制処分法定主義 / 捜査法 / データ駆動型刑事司法 / 予測的警察活動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、データやAIを活用した刑事司法制度の一例である、予測的警察活動について、その法的な規律の在り方を検討する。予測的警察活動は、データやAIを活用して犯罪発生を予測し、警察が犯罪発生の予防や早期の犯人の摘発を行う活動である。先行して実装されているアメリカでは、予測的警察活動の長所や短所について議論がある。弊害を抑えつつ効果的に利用するために、予測的警察活動の基礎となっている犯罪学的な知見を分析して、同活動の限界を明確にするとともに、行政法や刑事訴訟法に関する諸原則や考え方の違いを乗り越えて、警察官職務執行法や刑事訴訟法における警察活動の適否に関する判断と結合させることを目指す。
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研究実績の概要 |
2022(令和4)年度も、警察活動にかかわる法的問題に取り組み、捜査法および(捜査に関連する)証拠法の研究を遂行した。 具体的には、第1に、空港において税関職員が対象者のスーツケースに対して解体検査を行った裁判例について分析を加えた。犯罪の予防・鎮圧のための情報収集を行う活動(行政警察活動)から、犯罪の摘発・公訴提起のために証拠の収集を行う活動(司法警察活動)へと、捜査機関の活動の性質が変化を伴う場面において、憲法上の令状主義がどのように保障されるべきかについて検討を加えた。その中で、当該裁判例が、プライバシーと財産権の保障の双方を令状主義が保障している点を意識していることを具体的に解明した。この研究成果は判例評釈として公表した。 第2に、捜査段階の証拠収集の比重を被疑者の自白の確保から物的証拠の収集へと移行させる政策手段を考える必要を感じていたため、被告人の供述拒否権について定めている刑事訴訟法311条の制定過程を分析した。刑事訴訟法311条1項は、被告人が終始沈黙することを認めているが、立案者は、捜査機関が物的証拠をより重視して収集するよう政策的に誘導するために、沈黙できる範囲を広く設定したという認識を示していた。この立法過程をまとめた研究成果を、論説として公表した。関連して、アメリカの公判外供述の証拠能力についても研究成果を公表した。 第3に、捜査機関が違法に収集した証拠を公判で使用することを禁じる違法収集証拠排除法則について、最高裁判所の重要判例が示されたため、これを分析した。違法捜査を抑止するために同法則は適用されるが、その適用のために刑事裁判においてどのような事実を証明すべきか、証明責任を訴訟当事者にどのように分配すべきかは、必ずしも明確ではない。そこで、この判例を分析してその成果を公表し、これらの問題が必ずしも理論的に明確ではなく、研究を行う必要があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症による渡航制限が緩和されたため、研究計画にしたがって、台湾に渡航し、警察署内政局を訪問してインタヴュー調査を実施した。台湾において、警察がデジタルデータをどのように収集して、組織内で共有しているかについて、その概要を把握した。また、おそらくは日本と異なり刑事訴訟法が一件書類送致主義を採用していることも影響して、検察・裁判所ともデジタルデータを共有するシステムが構築されていることを確認した。なお、量刑データ検索システムについて台湾の政治大学において研究報告を行った。 また、裁判例の分析を通じて、行政警察活動と司法警察活動の関係について、具体的な事例をもとにして、令状主義の観点から研究を進めることができた。その中で、プライバシーと財産権の双方の保障を関連付けて検討することができた。データ駆動型警察活動においては、行政警察活動と司法警察活動が密接に結びつきやすい構造があると思われるが、そのための法的な規律方法を考えるための理論的な基礎を検討することにつながる。 加えて、研究対象の幅を広げることもできた。捜査機関の違法捜査抑止を行うためには、違法収集証拠排除法則の適用方法を明確にすることも重要であるが、そのための研究を判例を素材として行うことができた。 なお、データ駆動型警察の在り方を考える上では、プライバシーを保障するための制度的な枠組みを検討することも重要である。これについては、共著の書籍の刊行を目指しており、原稿を提出した。しかし、諸事情で刊行が遅れている状況にある。 以上の状況に照らして、概ね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
データ駆動型警察活動のための法的規律の枠組みについて、法律留保原則および令状主義の観点からのこれまでの研究成果を活用して、さらに具体的な制度の在り方について研究を遂行する予定である。 第1に、プライバシーの保護のための制度を、現在の裁判実務を意識しつつ議論を整理することを目指す。既に提出した原稿の校正をした上で、成果を発表したい。これが難しい場合には、雑誌における演習の形で、多くの人が理解できるようにして成果を発表する。 第2に、違法捜査の抑止のための違法収集証拠排除法則について、さらに分析を加えることで、データ駆動型警察活動を事後的に規律する枠組みについても研究を遂行する。こちらも、まとめとなる成果を発表することを目指す。 第3に、データの活用例とその問題点(の有無)を解明するために、アメリカの刑事手続の中でも特定の場面について分析を行う。具体的には、被告人の釈放のためにデータを活用している事例を取り上げて検討することを想定している。 これらを遂行するために、2023(令和5)年度も各研究会にオンラインまたは対面で参加し、適宜の時機に研究発表を行っていく予定である。
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