研究課題
基盤研究(C)
本研究は、データやAIを活用した刑事司法制度の一例である、予測的警察活動について、その法的な規律の在り方を検討する。予測的警察活動は、データやAIを活用して犯罪発生を予測し、警察が犯罪発生の予防や早期の犯人の摘発を行う活動である。先行して実装されているアメリカでは、予測的警察活動の長所や短所について議論がある。弊害を抑えつつ効果的に利用するために、予測的警察活動の基礎となっている犯罪学的な知見を分析して、同活動の限界を明確にするとともに、行政法や刑事訴訟法に関する諸原則や考え方の違いを乗り越えて、警察官職務執行法や刑事訴訟法における警察活動の適否に関する判断と結合させることを目指す。
本研究では、第1に、予測的警察活動のために構築されるアルゴリズムの基礎となるデータそのものに暗数が存在するとともに、特に犯罪発生場所を予測する場所的予測活動においては、犯罪発生地の特定の問題がある等の限界があることを確認した。第2に、このことと関係して、暗数の多寡に応じて、予測的警察活動に適した犯罪類型(比較的重大な財産犯等)と適していない犯罪類型(性犯罪等)があることを確認した。特に、暗数が多い犯罪類型においては、予測的警察活動においても局所的に過去に摘発された事例に依拠してアルゴリズムが構築されるため、網羅性は大幅に低下することが明らかになった。第3に、場所予測型警察活動を想定して、警察官職務執行法上の職務質問の不審事由の認定方法を検討し、過去の裁判例との均衡を考えると、アルゴリズムによって予測された犯罪発生場所を不審事由を認定する一事情として用いることは法的に問題はないものの、アルゴリズムによって予測された犯罪発生場所に人が所在することのみを以て不審事由を認定することには問題があることを示した。第4に、児童虐待を検知するために用いられているリスクアセスメントの事例を検討した結果、AIが示す虐待の重篤性判断・虐待の再発可能性予測は、類例が過去にどれくらい一時保護の対象とされたかを示すにとどまり、発生頻度の低い事例を予測できないという限界を、使用者がどこまで認識・理解できているかが問題になりうることを示した。AIのシミュレーション結果が却って使用者に皮肉処理過程を生じさせないか等の問題も生じうることが明らかになった。他に、量刑検索システムを用いた量刑判断過程に関する課題を整理し、データの限界が利用方法の限界を生じさせることを具体的に検討した。以上の点を研究により確認し、明らかにした。
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