研究課題/領域番号 |
21K01200
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 追手門学院大学 (2023) 神戸大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
小田 直樹 追手門学院大学, 法学部, 教授 (10194557)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 可罰性 / 制度侵害 / 刑法の解釈 / 詐欺罪 / 詐欺盗 / 財産取引の自由 |
研究開始時の研究の概要 |
虚偽情報を使う犯罪(最広義の詐欺)の中で,刑法が財産侵害として扱うべきもの(広義の詐欺)を「財産取引制度」の破壊・悪用・濫用という属性で描き出すことを試みると共に,「取引」の制度変化に応じた詐欺罪の変容を踏まえ,今後の展望を探りながら,刑事規制の運用をより適正なものとするために,例えば,補助金詐欺や募金詐欺を別個に(刑法内で/経済法・個別業法など刑法外に)規定する立法政策のあり方も想定して,本来の詐欺罪(狭義の詐欺)をより明確に把握する方策を探る。
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研究実績の概要 |
移籍後の本務校で創刊された紀要において「詐欺罪の射程」を扱う論文を公表した。「カードすり替え事例」で窃盗未遂罪を認めた最判令和4・2・14刑集76巻2号101頁をめぐる理論動向に関する批判的評価を含んでいる。 「法益侵害」という「結果」に集約する刑法学は、財物奪取=「占有移転」を過度に重視して、意思に基づくか否かだけで窃盗/詐欺の境界を論じる。その態度は、入口では詐欺罪に窃盗罪の補充法の位置づけを与えておきながら、<詐欺罪でないから窃盗罪になる>という(矛盾をはらむ)論旨に違和感がある上に、1項詐欺が否定されても2項詐欺を補充的に検討しうる関係を無視する議論になっており、「詐欺罪の射程」を見誤っている(財産犯の全体像を歪めている)と思われる。旧刑法から現行刑法への変化をどう読むか、「偽罪」という歴史から見て(偽造罪との関係が係わる)証書詐取事例をどのように扱うべきか、「官名詐称」も含む「成り済まし」に(特殊詐欺の類型としても重要なのだが)どのような意味を見出すかに関する主張にも及んでいる。 独自の視座で財産犯を眺める私見では、民法(一次規範)が創る「財産制度」から見て、窃盗罪は「所有(所有権の絶対性)」を支えるのに対し、詐欺罪は「取引(契約自由)」を支えるのだから、取引=関係形成を装う行為は詐欺罪で扱うべきであり、現代社会に応じた理解を充実させると共に、「取引」の変化に応じた補充的な(危険犯)類型の立法を機動的に積み上げていくべきである。法益侵害説という理想主義が刑法学の現代社会への対応を遅らせてしまった疑いがあり、刑法学のあるべき姿について、検討を重ねる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制度論の文脈から見た財産犯の位置づけ方を再確認し、偽造罪との関係を踏まえた証書詐取事例の扱い方を整理することができた。旧刑法から現行法への変化において詐欺罪の捉え方がどのように変わったかを踏まえて「詐欺罪の射程」を描く作業を行ったので、「偽罪」から詐欺罪が独立することで、その周辺において、どのような規律が求められるかを検討する際に土台とする地平をイメージすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
預金口座や携帯電話の不正利用に対応するための法整備がなされたように,「特殊詐欺」に絡んで進められてきた立法措置の意味を確認すると共に,これまでの歴史において,詐欺罪の周辺で展開されてきた「取引の規律」に関わる法整備をも検証してみることで,「偽罪」を扱うための法律群の見取図を描きたい。その上で,「詐欺罪」と周辺の規制法との関係調整のあり方(~狭義「詐欺罪」の守備範囲)を具体化する方向を探りたい。 加えて,詐欺の周辺を扱う立法措置の変遷を,「取引」制度の変化との対応関係から意味づけることができるかを探り,最終年度は,それを土台として,より一般的に,社会変化と刑法学の対応のあり方を見通すことを試みる予定である。
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