研究課題/領域番号 |
21K01208
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平岡 義博 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 上席研究員 (00786444)
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研究分担者 |
稲葉 光行 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80309096)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 科学的証拠 / 信頼性 / 視察研究 / PCASTレポート / アンケート調査 / 市民参加 / 韓国国立法科学研究所 / 韓国国立警察大学 / デジタルフォレンジック / 特殊詐欺 / 科捜研の女効果 / 模擬裁判 / 意思決定 / 韓国 / 台湾 / 盲点 / ブラックボックス調査 / 法科学教育 |
研究開始時の研究の概要 |
科学的証拠を適正に司法に用いるには、科学的証拠自体の証拠能力・証明力に係る要件を満たすものであるだけでなく、捜査や訴追、裁判の場面で適正に用いられることが必要である。科学的証拠の誤った解釈や恣意的な解釈が採用されれば、誤認逮捕や誤判を招く危険性がある。 本研究は、科学的証拠を用いた捜査の現状について海外警察を視察調査するとともに、我が国の科学的証拠に対する認識の実態を解明する目的で、市民・警察官・検察官・裁判官にアンケート調査を行い、誤解や過信によって事実がまげられないような公正な捜査・裁判に資するガイドラインを策定するものである。
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研究実績の概要 |
2023年6月、一般科学者100名について、科学的証拠の信頼性および裁判への参加意欲についてアンケート調査を実施した。その結果、各種の科学鑑定について信頼度が高かったのはDNA型と指紋鑑定、最も低かったのがポリグラフ検査で、前年に実施した一般人・法律家にたいする同様のアンケートと同様の傾向が得られた。一般科学者の裁判等への参加については、半数以上の人が参加する意欲を示し、個人的な予想より多いことが示された。 2023年12月台湾の最高検察庁法医研究所、警察庁刑事鑑識センター、台北警察局刑事鑑識センターへの視察を実施した。台湾では日本の法科学研究所と異なり、最高機関の法科学研究所を含め各研究所が分担して日常的な鑑定が実施されていた。検察庁にも法科学研究所が存在し、必要に応じてチェックする体制があった。 2024年3月に著書「形態比較鑑定の科学的有効性の確保」を出版した。これは、米国の大統領諮問委員会が法科学のありかたについて大統領に諮問したレポート(PCASTレポート)の翻訳と解説である。このレポートは科学的証拠を適正に捜査・裁判に活用する上での問題点と施策を述べている。 以上の研究と、これまでの韓国視察研究を通じて明らかになったことは、我が国の法科学は韓国・台湾を含む世界標準的なレベルに達しておらず、PCASTが示す捜査・裁判における科学的証拠を適正に活用できるレベルにも達していない、という点である。幸い、一般科学者の半数以上が司法に参加する姿勢を示していることから、法学者や司法関係者だけでの議論ではなく、市民の参加により、刑事司法の在り方を模索していく必要が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに2度のアンケート調査を実施し、市民がいわゆる「科捜研の女」のようなドラマ影響されず、比較的等身大に科学鑑定を評価してること、また、半数以上の一般科学者が司法に参加する意欲を示していることが判明し、そのまとめを論文誌に投稿する予定である。 また、これまで米国への2度の視察で、我が国の法科学が遅れていることを痛感したが、この研究で韓国や台湾の法科学を視察し、遅れをとっていることを実感した。今後、比較研究の成果として論文を作成する予定である。 著書「形態比較鑑定の科学的有効性の確保」は、この研究のテーマである「科学的証拠を有効に活用」するための施策を述べたもので、法律と科学の係りを明確にした点で重要なレポートである。今後、各方面からの批評を待ちたい。
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今後の研究の推進方策 |
法科学に関するアンケート調査では、さらに統計学的な検討を行い、裁判への市民参加だけでなく、法科学分野に一般市民・研究者の参加があった場合の長所・短所の評価を検討する。 海外視察については、これまでの日韓台の視察結果を報告するシンポジウムを企画中である。また、韓国の警察庁・検察庁の刑事捜査の状況が不明であるため、これら機関への視察を本年度中に実施すべく検討している。
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