研究課題/領域番号 |
21K01223
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
野田 和裕 広島大学, 人間社会科学研究科(法), 教授 (90294503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 補償効果 / 累積効果 / 定型約款 / 不当条項 / 契約全体の考慮 / 不当条項規制 / 補償作用 / 増幅作用 |
研究開始時の研究の概要 |
民法548条の2第2項は,契約条項の内容規制における考慮要素として,「(取引)の実情」や「取引上の社会通念」を挙げており,当該条項のみならず,取引全体に関わる事情を取引通念に照らして広く考慮すべきとしている。 もっとも,取引全体との関連を考慮に入れるにしても,何の限定もなくその関連を斟酌するとなると,当該条項による相手方の不利益は真の意味で回復されないし,その判断構造も極めて不明確になりかねない。 そこで,本研究では,契約条項の内容規制において,取引全体・契約全体との関連を考慮に入れる際に,どのような点に留意すべきか,この点に関する議論の蓄積のあるドイツ法を参考にしながら明らかにしたい。
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研究成果の概要 |
本研究では、契約条項の内容規制において、契約全体との関連を考慮に入れる際に留意すべき点を検討した。ドイツ約款法においては、契約全体の考慮によると、ある条項による契約相手方の不利益が、他の条項による利益によって埋め合わされることがありうる(補償効果)。この場合、当該条項は無効判断を免れる。他方で、単独では許容される内容の条項が、他の条項との相互作用の結果として、契約相手方に不当な不利益を惹起することがありうる(累積効果)。この場合、相互関連性のある双方の条項が無効となる。こうした評価基準は日本法の解釈運用にあたり、新たな視点をもたらすものであり、学問的のみならず実務的にも重要な意義が認められる。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、契約条項の内容規制について「取引の態様及びその実情」や「取引上の社会通念」(民法548条の2)に照らして研究するものである。契約全体との関連を考慮する際、特に留意すべき観点として補償効果と累積効果が重要であることを比較法的研究により明らかにした点で独創的である。 補償効果の考え方は、従来で採られてきた「消去法的アプローチ」(不当条項を無効とする解決)とは異なり、約款作成者に約款形成における指針となる法理論を与える。裁判実務でも、他の条項との相互作用による累積効果の考え方によれば、当該条項ごとの個別の無効判断を回避しながら、不適切な契約内容を是正する解決を導くことが可能となりうる。
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