研究課題/領域番号 |
21K01231
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
坂東 俊矢 京都産業大学, 法学部, 教授 (40189733)
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研究分担者 |
岩本 諭 佐賀大学, 経済学部, 教授 (00284604)
谷本 圭子 立命館大学, 法学部, 教授 (00288614)
大本 久美子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30548748)
カライスコス アントニオス 龍谷大学, 法学部, 教授 (60453982)
河上 正二 青山学院大学, 法務研究科, 客員教授 (70152923)
高嶌 英弘 京都産業大学, 法学部, 教授 (70216646)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 成年年齢引下げ / 消費者トラブル / 未成年者 / 若者(若年者) / 民法 / 消費者法 / 消費者教育 / ぜい弱な消費者 / 契約トラブル / 契約法 |
研究開始時の研究の概要 |
2022年4月1日に成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることを踏まえて、若者の消費者取引に関する契約被害についての法的救済のあり方とその基盤となる契約法理の考え方についての研究を行う。とりわけ、ネット取引や美容医療など、若者に顕著な契約被害の実態とその救済法理としての契約における消費者のぜい弱性などについて比較法的な観点を踏まえた検討を行う。 また、若者が安心で、安全な消費生活を送り、被害が生じた場合には救済を受けることができるために必要な消費者(法)教育についても、消費者法のあり方との関係をも踏まえて、具体的な研究を行う。
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研究実績の概要 |
この研究は、成年年齢の18歳への引下げを踏まえて、若者の消費者トラブルの実際が民法など法に与える影響を調査、研究することを目的としている。2023年度は、2023年4月1日に日本と同様に民法を改正して成年年齢をそれまでの20歳から18歳に引き下げた台湾の海外調査を実施した。また、台湾を訪問した際に、日本、台湾、ベトナムの研究者と実務家とをオンラインで結んで、この問題に対する国際研究会(「国際18歳成年消保研討会」)を実施した。台湾では、成年年齢の引下げとともに選挙権の18歳への引下げも検討課題とされていたが、選挙権の引下げは国民投票の結果、否決された。成年年齢や選挙権の引下げは、台湾の若者にとって大きな関心事であり、この議論に積極的に参画したことが明らかになっている。 台湾の調査では、若者の消費者トラブルの現状について台湾最大の消費者団体である「台湾消費者文教基金会」、消費者としての若者への行政による施策の調査を目的に「行政院消費者保護處」「新北市政府法制局」を訪問した。また、若者に対する消費者としての法の実務的、理論的研究のために、先に書いた「国際18歳成年消保研討會」を開催するとともに、東吾大学法律系学院を訪問し、教員や院生との議論を行った。さらに、台湾の18歳の若者の意識や消費者教育の実態を調査する目的で「建國中學高級学校」「國立台湾師範大学付属高級中学校」を訪問し、17歳の高校生から直接、意見を聞く機会を得た。 これらの調査については、坂東が「台湾における若者の消費者トラブルと法の対応」と題する報告を行っている(青山学院大学第52回消費者法研究会(2023年11月17日))。 その他、これまでの研究を踏まえて、若者との実践的な対話を元に消費者トラブルの現実と法の役割についての対話を行う試みや、法律実務家に対する若者に対する消費者保護法理の検討を行うなどの活動を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
台湾での海外調査は、成年年齢の引下げが施行される2023年4月1日よりも前に、その施行に対する準備や若者の意識調査やかかわり方を含めて、調査する予定であった。しかし、コロナ禍などの影響で、調査の受け入れなどの調整に時間を要し、実際には台湾での成年年齢の引下げが施行された後での調査になった。もっとも、その結果、成年年齢引下げ後の若者の消費者トラブルの実際やそれぞれの行政機関などの対応など、幅広い調査ができた。多数の資料や実態に関する資料の提供を受けた。それは台湾の消費者行政や消費者法の全体像にまで及ぶものである。現在、その調査の整理と成果の確認を継続的に行っている。 また、2023年度は、民法や消費者法の理論的研究の土台として、若者に対する消費者法教育について研究している複数の研究グループとも共同研究を行う機会を持った。若者の消費者トラブルの法的理論を研究するについて、若者に対する法教育との連携を図ることは重要な課題となる。その交流から得た新たな視点を、本研究成果に反映させるための具体的な検討を改めて行っている。 最後に、本研究の研究分担者である佐賀大学岩本諭教授が病気で亡くなられた。若者の消費者としての特性を、とりわけ競争法の観点から研究して下さっていた。残念でならない。また、青山学院大学の河上正二教授が定年により研究分担者から外れることになった。岩本教授は、亡くなる前に本研究の成果とも言える論文を執筆されているが、その研究成果をどのように全体のまとめに組み入れていくかも大きな課題になっている。
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今後の研究の推進方策 |
1年間の期間の延長を認めていただいたことを踏まえて、この1年間でこれまでの研究成果をまとめ、それを社会的に発信する。 具体的には、9月までに、昨年度に実施した台湾での海外調査に関する研究会とその成果の確認をするための研究会あるいはオンラインでの情報共有を行う。また、これまでの研究のまとめという趣旨から、そもそも成年年齢を引き下げることの持つ社会的な意義と課題がどのように立法段階で議論され、それがどの程度、実際に実現できたのかを改めて考えるための基礎的な研究会を開催する。また、その意義と課題を具体的に明らかにする目的で、それぞれの大学はもとより、若者とこの問題に対する具体的な課題について、議論する場を設けて、この問題に対する若者の意識や実際について検討する機会をさまざまな方法で実施する。 年度の後半は、それらの実践を通して得られた成果を最終的に原稿あるいは資料としてとりまとめる。具体的には、今後のこの問題に対する研究の基礎となるような学術的資料的な価値を持つ書籍の出版を行う。その出版に向けて、原稿の執筆を依頼するとともに、それを書籍として公刊するための準備を同時並行して行う。
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