研究課題/領域番号 |
21K01240
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
吉村 顕真 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (50610185)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 責任無能力による免責(民法713条) / 過失責任原則 / 突発的疾患による意識喪失 / 暴行(battery) / 客観的基準 / 主観的修正基準 / 障害者の権利擁護運動 / アメリカ不法行為法 / 故意・過失不法行為 / 突発的疾患 / 通常人・合理人基準 / 主観的基準 / 精神障害者の不法行為責任 / 責任無能力(民法713条) / 故意・過失判断基準 / 家族・後見人などの責任 / アメリカ法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、精神障害者の不法行為責任を巡る民法上の課題に対する新たな対応を探究することにある。精神障害者の賠償責任を認める方法として、責任無能力による免責を維持しつつも、衡平の観点からその者に賠償を命じるという方法(衡平責任)もあろう。しかし、今日、責任能力が“政策的”弱者保護制度と解されており、また責任保険が漸次的に普及していくことも考慮すると、アメリカ法のように責任能力を前提としない方法も有り得るだろう。そこでアメリカにおける精神障害者の責任肯定を巡る是非と故意過失判断基準、被害者の賠償金確保の現状と問題を分析し、最後に総括として民法713条改正も視野に入れた新たな対応を提言していく。
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研究実績の概要 |
令和3年度から4年度の前半にかけて、1つ目の課題、すなわち民法713条を削除するとした場合に精神障害者の故意・過失をどのように判断していくのかという問題の分析・検討に取り組んできた。まず過失不法行為に関する判例分析に関しては、過失が直接問題となった不法行為事件が無いため、突発的疾患事件を通じて、裁判所が一時的に意識喪失した場合に過失をどのように判断しているのかということを分析した。故意による不法行為の判例分析に関しては、典型類型である暴行に着目し、どのように精神障害者の故意を認定しているのか、また故意をどのように見ているのか、ということを分析した。学説の分析に関しては、特に20世紀初頭から現代までに説かれた学説の状況を分析した。その上で、客観的基準説と主観的修正基準説の妥当性を検討した。 令和4年の7月頃に判例・学説の状況をまとめ、一通りその検討を終えたため、北海道大学の民事法研究会において報告を行った。そして、そこでいただいた御意見を踏まえて、内容を修正した。その上で、査読付きの雑誌に論文を投稿した。現在、査読において障害学における社会モデルやADAとの関係を踏まえた分析の必要性など、非常に重要な御指摘を受けたため、それを踏まえた上での再検討に取り組んでいるが、できるだけ早く修正したものを公表していきたい。 また、令和4年度の後半(査読が終了するまでの間)には、2つ目の課題、すなわち精神障害者による加害行為があった場合に、その家族や介護施設等はどのような理論に基づいて責任を負うのかという問題についての検討に取り組んだ。そしてまずはそれに関連する判例や文献の調査に重点を置きつつ、その分析作業を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1つ目の課題の公表は、雑誌発行が遅れていることもあるが、現在、査読においていただいた御指摘をもとに再修正していることもあり、遅れている。もっとも、その査読中に、2つ目の課題に関する文献調査に取り組んできたため、その点では計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の1つ目の課題に関しては、雑誌発行の時期との関係もあるが、令和5年の前半には公表していきたい。それと同時に、精神障害者の賠償責任に関連する家族・介護施設などの責任についても引き続き、判例や論文などの文献収集及び分析に取り組み、年度内には成果を公表していきたい。
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