研究課題/領域番号 |
21K01242
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
コーエンズ 久美子 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (00375312)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 電子決済手段 / 電子マネー / 預金 / 分散台帳 / 分散台帳技術 / デジタルアセット / 米国統一商事法典 / 証券 / デジタル / 分散型台帳 / 登記 / 登録 / 振替制度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は第一に、暗号資産、分散台帳技術を利用した「デジタルアセット」の私法ルールについて、世界的な動向を踏まえつつ検討する。暗号資産やいわゆる「有価証券」が分散台帳技術を活用したシステム上のトークンに表象されている場合、権利の帰属、移転(担保権の設定および実行、カストディアンとの関係なども含めて)についての理論構成のあり方について、実務的な取り扱いを調査しつつ、検討する。 第二に、分散台帳技術については、金融取引のみならず、企業活動においてさまざまな活用が模索されている。たとえば、株主名簿や不動産・債権・動産の登記制度などに活用された場合など、必要な法的手当についても検討していきたい。
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研究実績の概要 |
改正資金決済法において新設された電子決済手段についての権利の帰属、移転の法律構成のあり方を、預金や電子マネーの帰属、移転についての議論の再検討を通して行なった。預金の移転は、預金債権の移転であり、銀行間のネットワークを活用して、預金残高の付け替え、すなわち預金債権の消滅と成立であると説明されている。こうした預金債権の移転の法律構成について消滅・発生をとることができる根拠としては、口座残高を記帳により管理することについて契約による合意があること、発行者の予定する当該方法以外によって預金の移転を禁止する合意があること(社会的に承認されている)があげられている。他方、電子マネーの中には、データが発行者が管理している口座を通さず移転するものや、電子決済手段もパーミッションレス型では、財産的価値のあるトークン自体が移転すると捉えられるものがある。この場合、預金契約のような関係が存在していないことから、発行者に対する債権等の消滅・発生といった法律構成をとることはできない。従来、こうした電子マネーの法的性質については、ある者に排他的に帰属しうる財産権であること、支払単位が組み込まれおり、他の通貨媒体に転換することなく直接に決済に用いることができるのであれば、通貨媒体といえるといった議論がなされている。これを展開する形で、電子決済手段について、排他的支配によって帰属を決定するるといった方向性が模索されている。 このように権利の移転についての仕組みは、通常、口座管理型とデータ授受型を区別して整理されているものの、記録あるいはデータに着目すれば(預金についても預金債権としてではなく、残高の記録に着目)、前者では口座管理者を通して、また後者については技術的なシステムにより記録が特定の者に排他的に帰属する仕組みであると整理できよう。こうした発想は米国法等では、「支配」という概念で説明されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究のエフォート管理を適切に行うことができなかったことにより、収集した文献の分析に遅れが出ている。改正資金決済法における電子決済手段についての規定を整理しつつ、私法的な問題について検討するのに想定以上の時間を要した。またアメリカ統一商事法典、ユニドロワ原則についての分析を進める時間を確保することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
預金の移転については預金債権の消滅・発生によって法的効果が生じていることが社会的に承認、正当化されており、別途、確定日付ある証書による通知・承諾が必要とは考えられていない。しかし、現行法上、権利(有体物に結合されていない)を譲渡するときには、確定日付のある証書による通知・承諾が必要であったり、権利者を管理する名簿等の名義書換えを要する規定が置かれている。実際、デジタルマネーやトークン化された有価証券の移転については、このような対抗要件を具備する必要があることを前提に、実務的な対応が検討されている状況である。とはいえ、技術的にはそうした対抗要件が全く不要であることは事実であり、それを踏まえた理論的な整理をしておく必要があろう。そのような理論的な構成について示唆を得るために、アメリカ統一商事法典の規定やアメリカにおける議論状況、ユニドロワ原則について分析を進める必要があり、それを踏まえて論文を公表する予定である。
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