研究課題/領域番号 |
21K01244
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
堀田 佳文 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (40375605)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 経営判断原則 / 取締役の責任 / 任務懈怠 / 内部統制 / 内部統制システム構築義務 / 信頼の原則 / コーポレートガバナンス・コード |
研究開始時の研究の概要 |
経営判断原則をめぐる環境が大きく変化する中で、経営判断原則が果たすべき機能は、取締役に適度な緊張感の下で適切なリスクテイクを促すとともに、経営判断の失敗による損害賠償を適正化することである。本研究は、伝統的な民事法の議論をベースとしつつ、比較法や隣接諸領域の知見も取り入れて、①日本における経営判断原則の具体的内容・法的性質・正当化根拠を探り、②ここから各論的問題を解く道筋を演繹するとともに、③研究成果を英語でも発信し、日本の経営判断原則に関する議論を国際的な場に置き、このテーマに関する研究水準の向上を図ろうとするものである。
|
研究実績の概要 |
公表された研究業績との関係では、前年度(令和4年度)に引き続き、株式会社の内部統制と取締役の経営判断原則の関係についての研究に従事した。令和5年度に公表された研究業績としては、岩原先生・神田先生・山下先生古稀記念論文集『商法学の再構築』(有斐閣)所収の、堀田佳文「内部統制と経営判断原則」がある。この論文は、前年度中に原稿を提出していたものであったが、諸事情で出版が遅れ、校正まで1年近い時間が経ったことから、校正にあたり、この期間に公表された最新の判例・裁判例をフォローするとともに、議論の深化についても更新を行い、体裁面も内容面もアップデートして年度の後半に公表に漕ぎつけることができた。 公表には至らなかったが、年度内に進めた研究としては、コーポレートガバナンス・コードと経営判断原則との関係に関する理論的な検討がある。わが国のコーポレートガバナンス・コードは取締役に「攻めの経営」を促すものであり、取締役の経営判断原則との関係が注目されるが、この点についての踏み込んだ検討を試みつつある。 もっとも、研究代表者が年度の前半に罹患した新型コロナウィルス感染症とその後遺症について、とりわけ後遺症が長引き(これは現在も続いている)、研究活動に遅れが出ている。このことは誠に遺憾であり、健康管理に一層留意するとともに、研究計画の見直しをはかり、全体としては、当初計画した研究を完遂できるように引き続き努力したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
年度途中に新型コロナウィルス感染症に罹患し、これに伴う後遺症を長引かせてしまい(それは現在も継続している)、研究活動をセーブせざるをえない時期があった。このため、現在までの研究の進捗状況は、計画と対比して遅れている。さらに、前年度以前の新型コロナウィルス感染症の蔓延に加えて、ポストコロナ期には極端な円安が進行したことから、計画していた海外渡航(ドイツ)ができない状況が続いている。経営判断原則の比較法的検討は、この研究計画において大きな柱のひとつであり、是非とも実現したいものではあるが、上記の状況に鑑み、海外渡航を含まないで研究計画の実現に向けてアプローチする方向に舵を切ることを検討している。 研究計画は、取締役の経営判断原則について、国内の状況を理論的に分析するにあたり、主に内部統制との関係とコーポレートガバナンス・コードとの関係を明らかにすること、そのうえで、アメリカ法発祥という同じバックグラウンドを持つ制度が各国でどのように発展したのかという国際的な定位を明らかにするうえで、日本と同じ成文法国であるドイツを比較対象として検討を行うことを骨子としていた。このうち、内部統制との関係については一定の見通しを立てることができたが、その次のコーポレートガバナンス・コードとの関係の検討が遅れている。比較法部分については、上記(1)の通り、渡航をオンラインミーティングと国内資料収集の組み合わせに変更して対応することを検討したい。
|
今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの進捗状況」にも記載のとおり、研究計画のうち、比較法的検討にかかる部分の進捗が遅れを余儀なくされている。海外(ドイツ)に渡航をしての現地調査(資料収集、および研究打ち合わせ)は、この研究計画の大きな柱のひとつであったが、新型コロナウィルス感染症の後遺症と、ポストコロナ期における極端な円安の進行で、現在のところ、渡航の見通しが立っていない。そこで、次年度(令和6年度)末に、研究期間を1年延長する申請をさせていただき、さらに渡航への可能性を模索しつつも、もしこれが不可能であると判断した場合には、海外研究者との打ち合わせをオンライン打ち合わせに切り替えたうえで、国内で収集できた範囲の資料に基づいて、研究をとりまとめることを考えている。 経営判断原則について理論的な検討を加える部分については、内部統制システム構築義務との関係について一定の見通しが立ってきたので、今後は、コーポレートガバナンス・コードと経営判断原則との関係について、さらに検討を進めていきたい。コーポレートガバナンス・コードについては、性質上、判例があるところではないので、従来とは異なる研究方法を工夫しなければならないが、この点については研究計画で見通しを立てた通りに進めてみて、成果の公表につなげたいと考えている。 研究期間も大詰めを迎えており、これまでの研究をとりまとめて、研究成果の発表に尽力したい。
|