研究課題/領域番号 |
21K01246
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
宮澤 俊昭 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30368279)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 行政作用と私法上の権利 / 私法と公法 / 漁業権 / 特許権 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、諫早湾干拓紛争における共同漁業権の実体法的性質をめぐる裁判例を機縁として、行政作用によって設定される私法上の権利の法的構成を明らかにすることを目的とする。研究方法として、漁業権についての歴史的・理論的考察に加えて、同じく行政作用により設定される私法上の権利である特許権との比較を行ったうえで、私法理論と公法理論の両面から多元的に考察する。これにより、個別法の特殊性のみに依拠することなく、私法体系・公法体系のいずれとも整合的な理論的基礎の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
知的財産法学において、特許法123条1項各号が定める特許の無効理由がある場合に、特許無効審判による無効審決が確定する前に、特許権侵害に基づく差止め(特許法100条)や不法行為に基づく損害賠償(民法709条)などを求める訴え(特許権侵害訴訟 )において裁判所が無効理由の存否を判断しうるのか、という問題が長く議論されてきた。この問題については、キルビー特許最高裁判決 、および同判決後に行われた法104条の3の新設という立法的措置により、特許権侵害訴訟における無効の抗弁 が認められ、無効審決確定前であっても裁判所は特許権の無効理由の存否を判断できるとされることとなった。 行政作用によって設定される私法上の権利の法的構成を明らかにするという本研究の目的からは、この問題において、特許取得手続における特許査定(特許法51条)と特許権設定登録(特許法66条2項)の法的性質をめぐる議論のあったことが注目される。この議論と、2022年度に行なった共同漁業権・組合員行使権をめぐる議論の研究を合わせて考察した結果、民法、行政法といった伝統的な実定法学のもとで解釈理論として提示された概念と、個別の根拠法全体の仕組みをもとに提示させる解釈理論とを単に並列させるだけでは足りず、この両者の関係を論じるための基礎理論を、立法事実・立法目的を基礎として進行していく立法過程における議論も含めたかたちで構築する必要のあることが明らかとなった。 さらに、前述した特許取得手続における特許査定と特許権設定登録の法的性質をめぐる議論のなかから、憲法、とりわけ財産権(憲法29条)を基礎とする立法に対する拘束を論じる場面と、そのような憲法の拘束のない状態において複数の法領域が関連する場合におけるそれぞれの法理論の関係を、法学以外の人文・社会・自然科学の理論との関係も合わせて論じる場面とを分けて考える必要性も導かれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、行政作用により私法上の権利が設定された場合、その私法上の権利がどのような法的構成を持ち、私法理論と公法理論をどのように関連づけて具体的問題における解釈論を基礎づけるのか、という学術的問いを中心に据えている。この問題を明らかにするために、2022年度には共同漁業権・組合員行使権をめぐる議論の検討を行い、本年度は、特許権をめぐる議論の検討を行なった。「研究実績の概要」に示した通り、本年度までの研究成果として、憲法、とりわけ財産権(憲法29条)を基礎とする立法に対する拘束を論じる場面と、そのような憲法の拘束のない状態において複数の法領域が関連する場合におけるそれぞれの法理論の関係を、法学以外の人文・社会・自然科学の理論との関係も合わせて論じる場面とを分けて考える必要性を示すことができた。これにより、行政作用によって設定される私法上の権利の法的性質を論じるための議論の枠組みと、その枠組みの中で考察を行うべき具体的な対象を示すことが可能となった。 以上のように、本年度までの研究によって、行政作用によって設定される私法上の権利の法的構成を明らかにするために研究期間の最終年度において行うべき考察内容を固めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究機関の最終年度にあたる2024年度においては、次の三つの内容の研究を行う。 (1)憲法上の財産権をめぐる議論の整理と考察 (2)「緩やかな解釈学モデルによる立法の再定位」を論じる見解の立法論・解釈論からの考察 (3)上記(1)(2)を基礎として行政作用によって設定される私法上の権利の法的構成を示し、それに基づいて、共同漁業権・組合員行使権をめぐる議論、および特許侵害訴訟における無効の抗弁をめぐる議論のそれぞれについて、考察を加え、結論を得る。
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