研究課題/領域番号 |
21K01249
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松中 学 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20518039)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 新株発行 / 支配株主 / エクイティ・ファイナンス / 会社法 / 有利発行 / 不公正発行 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、支配株主からのエクイティ・ファイナンス(支配株主に対して新株や新株予約権を発行する場合。単に「支配株主への新株発行」という)のあるべき規律を検討する。具体的には、(a)支配株主への新株発行であることを踏まえた有利発行と不公正発行の解釈、(b)支配株主・役員等の損害賠償責任の法的構成と判断基準、(c)裁判に依存しない規律として、開示とガバナンス等による対処のあり方を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、敵対的買収の重要な事例が相次いで登場したこともあり、敵対的買収と防衛策についていくつかの研究業績を公表した。その中では、防衛策の導入・発動の根拠となり得る事由と、それぞれの事由ごとに(現在使われている有事導入型買収防衛策を前提に)どのような効果を持つ防衛策が正当化されるのかを明らかにした。具体的には、買収方法のもたらす(構造的)強圧性と、企業価値の毀損を生じさせる買収者による私的利益の引出しを中心に検討した。 本研究との関係では、支配株主に対して新株発行などを行う場合に私的利益の引出しを規制するとなると、支配株主が登場する前の段階の規律との整合性を考える必要が出てくることが明らかになった。支配株主になろうとする買収者の私的利益の引出しを警戒しつつ、支配株主になった者による私的利益の引出しには無関心というわけにはいかないからである。しかし、日本の会社法制は支配株主になった後の私的利益の引出しに対する規律が弱いことがここでも問題となる。 また、強圧性について検討を重ねる中で、支配株主に対する新株発行などに続けて株式の取得を通じた買収を行う場合(公開買付け+トップ・アップ・オプションと順序が逆の場合)、構造的な強圧性が問題になり得ることも明らかになった。そのため、そうした買収を伴わない場合とは別異に考える必要がある。これは買収に伴う問題ともいえるため、両者を一体として捉えた上で、買収との関係で規律する方が望ましい。もっとも、現実的には新株発行の段階でも対応を考える必要性があることも否定できない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で海外の研究者との交流や研究発表は停滞していたものの、関連する問題を含め、現実の問題に即して検討を行うことができた。そのため、研究自体はおおむね順調に進捗しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、支配株主に対するエクイティ・ファイナンスの問題は単に私的利益の引出しの規律と捉えるだけでなく、支配株主が登場する場面と少数株主がいなくなる場面(締出し)も考慮して整合的な規律が必要になることが明らかになった。近時、締出しに関する重要な裁判例も登場していることから、そうした事例の分析も行う必要がある。時間的には、両者の間に登場するのが支配株主に対するエクイティ・ファイナンスである。これを踏まえて、規律のあるべき特徴を検討する。 また、より具体的な規律の中身との関係でも、近時の締出しの事例は意味を持つ。支配株主に対するエクイティ・ファイナンスにおいてとらえるべき公正な手続を明らかにする点でも重要になるからである。そこで、エンド・ゲームの場面である締出しとの差異も踏まえて、公正な手続のあり方についても検討する。
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