研究課題/領域番号 |
21K01253
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
河野 憲一郎 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (40350293)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 責任法(Haftungsrecht) / 詐害行為取消請求 / 責任財産 / 個別執行 / 包括執行 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、わが国においても、ドイツにおける有力な学説上の議論と同様に、個別執行や包括執行を〈責任を実現するための手続〉と理解すべきであるとの主張・視点を軸に、詐害行為取消請求における「責任説」を再検討し、さらに進んで、わが国の民事手続法制上の責任対象財産の範囲の調整にかかる諸制度や破産手続における破産財団・財団債権と破産財団との関係などについても検討を加えるものである。これによって、民事実体法・手続法における債務者への信用供与を裏付ける法的メカニズムについての基礎理論の構築を試みるものである。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、詐害行為取消請求に関する研究に特に力を注いだ。具体的な内容としては、①この分野における最重要研究であるゲルハルト『債権者否認の体系的位置づけ』(1969年)のモノグラフィーの読み込み、また、②わが国の民法(債権法)改正後の詐害行為取消請求の制度の下での、詐害行為取消訴訟の被告適格と債務者への訴訟告知(民424条の7)および判決効拡張規定(同425条)についての理論的分析を行った。 令和4年度の研究の意義は、①まず学説史的研究の面においては、(ドイツにおいては有力な立場であるものの、)わが国においては、従来必ずしも十分には注目されてこなかった〈責任法(Haftungsrecht)〉という観点について、(わが国の詐害行為取消請求に対応する)ドイツの債権者否認法(Anfechtungsgesetz)が規律する債権者否認の制度との関連で掘り下げを行った点にある。また、②わが国の現行の詐害行為取消請求について、認容判決の拡張およびその前提である訴訟告知という具体的な問題を素材として、(いわゆる〈折衷説〉を前提とした)従来の議論で、はたして十分な展望が示されていると言えるかどうかを再検討した点にある。 債権者から債務者に対して信用供与がなされるに際して、〈債務者の財産〉は、〈債権〉の引当てとなるものであり、したがって、債務者の財産には〈責任対象としての機能〉が認められる。そして、実体財産法上、このような責任財産の機能を最も体現しているのが、詐害行為取消請求である。令和4年度の研究は、わが国の詐害行為取消請求の具体的な問題との関連で、実体財産法上、「取引法」と対置される「責任法」なる領域を観念できることを明らかにするための基礎をなす研究としての重要性が認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって、詐害行為取消訴訟の被告適格と債務者への訴訟告知(民424条の7)および判決効拡張規定(同425条)という具体的制度に着目することで、従来の折衷説では不十分と思われる諸点が明らかになるとともに、わが国において責任説の展開の余地があることが明らかにされた。もっとも、詐害行為取消請求の制度を、強制執行制度との関連でどのようなものとして位置付けるかは、いぜんとして検討の必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の状況としては「おおむね順調に進展している」ので、交付申請書に記載した「研究実施計画」に即して推進してゆく予定である。すなわち、令和5年度は、わが国の民事の手続(判決手続)において「責任」についての判断が問題となったケースについて検討を加える。具体的な展開形態として、第三者異議訴訟、給付訴訟において「相続財産の限度で支払え」とする判決、権利能力なき社団の責任財産に対する強制執行、法人格否認の法理に関する諸判例などを予定している。そして、以上の成果を踏まえて、令和6年度には、信用供与と責任財産をめぐる基礎理論の定立に至ることを目標としている。
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