研究課題/領域番号 |
21K01263
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
山田 到史子 関西学院大学, 司法研究科, 准教授 (30289029)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | CISG / 国際契約法 / 契約法の調和・統一 / 比較法 / 機能的比較法 / 国際契約法の調和 / 仲裁 / 国際物品売買条約に関する国連条約 / アジア契約法 / 契約法の現代化 / 国際動産売買契約に関する国連条約 / 世界の契約法の比較法 / ポストCISG |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、世界の契約法のモデル法となったCISGを中心軸に、現代化された日本・アジア・欧米の契約法を全方位で、実践的で正確な客観的相対比較をし、その異同を可視化・明確化することを目的とする。グローバルスタンダードであるCISGを中心軸に据えることで、体系の異なる法系間の横断的な比較を、容易かつ正確に行うことが可能となる。 各契約法の体系的で正確な位置づけ・先進性を分析することは、さらに国際取引に携わる実務の強い要請である準拠法選択の際に必要となる正確な法情報も提供でき、これらの分析は、CISG自身の今後の発展の方向性を明らかにし、CISGの現代化・発展拡大を図る上でも意義が認められる。
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研究実績の概要 |
CISGを中心軸とする全方位の比較法をする基礎作業として、 (1)CISGの現在の状況を正確に把握するために、世界で最も定評のあるCISGのコメンタリーの翻訳作業を、昨年度から3期に分けて実施している内の2・3期を完了させ、2024年3月翻訳書出版を目指して行った。11名のCISG研究者の協力を得て概ね順調に作業を進めることができたが、出版事情により出版は次年度となる見込み。2022年出版の約1700頁のコメンタリーを翻訳することで、最新の理論(文献)・判例情報を各分野に亘って確認できた意義は大きく、今まで日本には詳細な解説書がなかったことに鑑み、重要な基礎作業であったと思われる。 (2)全方位の比較法に先立ち、まず核となる各国内法とCISGとの比較を試みた。日本法との比較は、この科研課題の前提となる1つ前の科研課題(「グローバルスタンダードとしてのCISGに対する民法改正法の位置づけ」)において、3月~9月に世界で著名な研究者との共同研究により、各分野に亘って概要を確認しながら議論を行い「日本民法改正法のCISGに対する位置づけー全体の鳥瞰と各論序説」として論文に公表し、取組みは継続している。 (3)3月に著名な海外の複数の研究者を招聘し、CISGの最新の問題状況と各国法とCISGの比較法が目指すCISGの将来の改正を視野に入れた国際シンポジウムを開催し、3日間に亘り日本のCISG研究者と共に活発な意見交換を行った。 (4)ドイツとウィーンに海外出張し、CISG研究者・実務家によるシンポジウムに参加し、世界の契約法の調和についての最新の議論状況について意見交換を行い、UNCITRALで国際機関が主導する国際契約法の調和・統一についての現状調査・情報交換を行った。 (5)又CISGを中心軸とする比較法を行うにあたり、比較法の方法論について、検討を行い論文にまとめた(詳細は次項参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)比較法の中心軸となるCISGの最新状況を正確に確認するため、最も定評のあるコンメンタール(約1700頁)の翻訳を研究協力者らと分担して行ったが、出版事情や其々研究者の事情があり、予定より時間がかかった。また、海外の著名な研究者らとの議論を踏まえて確認しながら行っている作業にも、時間が予想以上にかかった。 (2)比較法の方法論に関しては、機能的比較法について近時様々な方向からの批判があり、それらの議論を踏まえ、それに対応した比較法をする必要があることがわかった。特に近時の研究報告などから、最も留意すべき点として、特に日本やアジアの国々のような「欧米法の継受国」の場合は、実際に社会で機能するルールである「生きた法」、すなわち「書かれた法」以外の「非法規の法源」を含めた比較法をする必要性が明らかになり、正確で有効な比較法をするには、それに対応する必要性が出てきた。 (3)ヨーロッパの研究者やUNCITRALをはじめとする国際機関で、ヨーロッパ研究者が主導するアジア地域の契約法の調和の試みが始まっていることが海外での調査で分かった為、その調査を踏まえた上で検討するのが有益で建設的であると考えらえる。また、マックス・プランク研究所でも新しいプロジェクトが進行中であり、この研究状況の調査も踏まえて検討する必要もある。もっとも、世界の競合する研究を調査し検討することで、其々の研究方法や内容から学ぶことができる共に、他方でそれらが抱える課題もわかるため、今まで予定してきた研究方法の修正・見直しも可能になり、より議論が深まり、例えば比較法の手法などの問題点も浮彫りになりその意義は大きいと感じる。
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今後の研究の推進方策 |
現時点での課題としては、特に欧米のコモンロー・シビルロー以外の国、特に欧米法の継受国との比較法をするにあたり、書かれた法に加えて「生ける法」を如何に比較法に反映させるかが重要である。日本も欧米法を継受し「法の外在性」が問題視され、実務を踏まえ如何に現実に機能するルールを客観化・明確化するか、制定法以外の法源をどのように扱うかが検討されねばならない。日本は100年前に欧米法を継受し議論の蓄積もあり、継受国としての比較法の手法をモデルに確立できる可能性がある。世界のビジネスは英米諸国の経済力(特にアジアではイギリスの影響が大きく)英米法に席巻されている状況にあるが、その実務の状況を踏まえて比較法を行う必要があるだろう。その際、①Doing Businessで行われている検討・分析やそれに対する批判が参考になる。②紛争解決手段としての国際契約法の検討は、実務との関わりは必須である。現実に機能するルールの調査・検討をアンケートや統計調査・インタビューによって行う予定である。 また、比較法の方法論についてグローバルサウスを含め世界で様々な議論がなされており、正確な比較法が効果的な基礎作業のためには必要とされる。世界の著名な比較法学者が集まるマックス・プランク研究所での研究の現状の調査・意見交換をさらに深め、またUCITRALで国際機関が主導する国際契約法の調和・統一についての現状についての調査・情報交換を継続する予定である。 上述の方法論の基礎作業を固めた上で、実務家との協働に基づく実際に機能する「生きた法」との正確な比較法の手法を、欧米法の継受国の日本がモデルとなるように確立し、それに従ってCISGとの全体比較を行う。その際、上述で得たUNCITRALやマックス・プランク研究所で進む、ヨーロッパ研究者が主導するアジア諸国の現状調査と比較法、アジア法の調和・統一の方法論を参考にする。
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