研究課題/領域番号 |
21K01270
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
船越 資晶 京都大学, 法学研究科, 教授 (70362548)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 批判法学 / ポストモダニズム / 法曹論 / 司法政治学 |
研究開始時の研究の概要 |
ポストモダンの21世紀にふさわしい法曹(とりわけ弁護士)のあり方はどのようなものか。批判法学・新制度論・闘技民主主義は、現代裁判を、アイデンティティの承認と富の再分配の是非が争われる政策論争のフォーラムとして構想している。本研究は、この構想に基づき、現代法曹は、政策という普遍化可能な理由を掲げて、自身の選択する法に対する、相手方・法共同体・社会全体の支持の獲得を目指す存在、要するに、政策起業家たるべきであるというビジョンを提示することを目指す。そして、この結論を正当化する理論として、司法政治学を、法的思考論・裁判理論・正義論を21世紀仕様で総合するものとして定礎することを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、以下の研究を実施した。 第1に、現代的な法曹像を構想するための基礎的作業の一環として、ロバート・ケイガンの所説(「当事者対抗的リーガリズム」)を軸に、新制度論において蓄積されてきた弁護士役割論を再検討する作業を継続した。 第2に、現代的な法曹像の構想を理論的に正当化するための基礎的作業の一環として、ポストモダンな法的思考様式を提示する「法的思考の系譜学」をより具体化すべく、契約法思考の史的展開と関連づける作業を行った。 第3に、現代裁判は富の分配とアイデンティティの承認が争われる政策論争のフォーラムであるとする本研究の基本構想を理論的に基礎づけるべく、古典的マルクス主義からネオ・マルクス主義を経て、ポスト・マルクス主義および闘技民主主義へと至る社会理論史を法理論の観点から再記述し、その成果を論文「現代思想と法:批判法学における」(日本法社会学会編『法社会学の最前線』有斐閣(2023)所収)にまとめた。その意義は以下のとおり。古典的マルクス主義の法理解は古典的であり、社会的な法理解に対応できない。ネオ・マルクス主義の法理解は古典派と社会派の一体性(イデオロギー装置としての)を主張して、リアリズム法学以降の法理解(両派の不統合共存)に対応できない。かねて批判法学は、現代的な法的思考様式を政策分析として、それが作動する法廷を「陣地戦」の場としてそれぞれ概念化してきている。この見方をポスト・マルクス主義および闘技民主主義に重ねると、現代社会は差異としてのニーズの体系を成しており、そうしたニーズの実現を目指すリベラル派と保守派の論争が永続するという超多元主義的な社会構想を得ることができる。以上の成果は、本研究の基本構想に対して確固とした理論史的基礎を与えるのみならず、公式法を等閑視してきた従来の法社会学研究に一石を投じるものになっていると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、現代的な法曹像の構想とその理論的正当化に向けて、本年度は以下の成果を挙げることができた。 第1に、新制度論において蓄積されてきた弁護士役割論の再検討を継続することにより、本研究の記述面での一般的妥当性をより高めることができた。 第2に、ポストモダンな法的思考様式を提示する「法的思考の系譜学」を契約法思考の史的展開と関連づけて具体化することにより、本研究の理論面での一般的妥当性を高めることができた。 第3に、古典的マルクス主義からネオ・マルクス主義を経て、ポスト・マルクス主義および闘技民主主義へと至る社会理論史を法理論の観点から再記述することにより、公式法を等閑視してきた従来の法社会学研究に一石を投じるとともに、現代裁判は富の分配とアイデンティティの承認が争われる政策論争のフォーラムであるとする本研究の基本構想に確固とした理論史的基礎を与えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である、現代的な法曹像の構想とその理論的正当化に向けて、本年度は、昨年度に引き続き先行研究の再検討を中心とする基礎的作業を実施するとともに、本研究の基本構想に確固とした理論史的基礎を与える成果を公表することができたので、次年度以降は、現代的な法曹像のより具体的な内容について、順次研究成果を公表することを目指したい。
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