研究課題/領域番号 |
21K01273
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
島並 良 神戸大学, 法学研究科, 教授 (20282535)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 知的財産法 / 知的財産権侵害 / 故意 / 過失 |
研究開始時の研究の概要 |
知的財産権侵害に基づく損害賠償制度のうち、「故意又は過失」の要件が空文化した現状について、再検討を加える。侵害者の故意・過失が容易に認定される結果、損害賠償責任が事実上の無過失責任(厳格責任)として運用されている現在のあり方は、適切なものとして今後も維持されるべきか、そして、悪質な海賊版等の横行が社会問題化している現在、故意による知的財産権侵害と単なる過失によるそれとを区別せず同質なものとして扱うことは許されるのかについて、損害賠償制度の果たす侵害抑止機能に着目しながら検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、知的財産権侵害に基づく損害賠償において、侵害者の故意・過失がいかなる位置を現在占めているのか、そして将来占めるべきかを検討するものである。 侵害者の故意・過失は、故意侵害と過失侵害の効果に違いがないこと、および、特許法等における過失推定規定が実際上はみなし規定として運用されてきたこと等から、これまで日本の知的財産法学・法実務では等閑視されてきた。しかし、一方では、特に特許権の故意侵害に対する利益吐き出しによる侵害抑止の必要性が意識されるようになり、また他方では、法と経済学における一般不法行為法の経済分析の進展を受けて過失要件が持つ侵害抑止機能が注目されるようになった。 そこで本研究では、知的財産権侵害に基づく損害賠償においても、故意侵害と過失侵害を区別し、故意・過失の各要件の果たすべき機能とその内実を改めて検討する。具体的には、①損害賠償制度の果たす侵害抑止機能に着目しながら、知的財産法分野全般における故意・過失について、思想的歴史、正当化根拠といった基礎理論から出発し、②米国を中心に海外における知的財産権侵害における故意・過失の役割を明らかにすること、③日本の特許法、著作権法、商標法等の解釈・立法における各要件の解釈・立法論を展開すること、の3点を進めている。 2022年度は本務校の管理職にあったこともあり公表には至った関連業績は少ないが、上記③についてすでに執筆を終えて公表予定の論文があるほか、①②についても先行研究・関連研究の調査と裁判例の分析、および米国の立法について調査分析等を行ったことから、概ね順調に進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、侵害者の故意・過失が容易に認定される結果、損害賠償責任が事実上の無過失責任(厳格責任)として運用されている現在のあり方は、侵害の適切な抑止の観点からは維持されるべきでないという暫定的な結論を、本研究のこれまでの過程で得た。 他方で、悪質な海賊版等の横行が社会問題化している現在、故意による知的財産権侵害と単なる過失によるそれとは質的に区別されるべきであり、故意侵害と過失侵害の効果に段階的な区別を設けることを提言した研究報告を行い、現在、それを取り込んだ論文を作成中である。 また、コロナ禍で中断していた海外での学会・研究会報告も、2023年度に少なくとも1件を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画に沿って、引き続き資料調査や他の研究者との意見交換を実施し、論文発表により成果を公開していく予定である。特に、知的財産権の故意侵害と過失侵害とを区別することを提案する論文を公表する。また、海外の研究会で報告を行う。
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