研究課題/領域番号 |
21K01277
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
藤村 賢訓 福岡大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50389384)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 公的後見 / スウェーデン / 特別縁故者 / 中核機関 / 独居高齢者 / 特別代理人 / 意思決定支援 / 財産管理 / アドヴォカシー |
研究開始時の研究の概要 |
①スウェーデンのコミューン(市)を通じた認知症者公的代弁支援制度の詳細を丁寧に分析することを通じて、現行の民法を中心とする成年後見法制と異なる制度的基盤を有する、いわば司法と福祉の連環を含めた多面的な支援態様の合理性基準を提示することにより、公的後見枠組みにつき理論的基盤を示す。 ②意思決定支援が困難な重度知的障碍者等に対する代行決定について、民法697条1項および2項の解釈として、本人の意向が不明な場合の「本人の意向の探索」を管理態様の決定に際し、善管注意義務として規範化することを前提とする解釈を模索することを通じて、現行法制の解釈により、法の欠缺状態である決定支援に一定の法的根拠を提供する。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、我が国における公的後見法制の分析を進めるとともに、スウェーデンにおける親族法(SFS 2022:1747)の詳細を検討している。とりわけ4条後見に関するグードマン選任に関する裁判上の手続きとコミューンによる関わりの実態を調査するために、実際の地方裁判所発行の選任決定書とコミューン社会委員会による後見監督事項証明書等を入手し、制度分析を行うとともに、7条が定めるフォルバルターレとの関係について、我が国の任意後見法10条との比較分析を行い、福岡家庭裁判所にて研究報告を実施した。 また、公的後見との関係から高齢者福祉サービス提供主体の民法958条の3にいう特別縁故者該当性についての研究につき、企画論文集「生と死の民法学」所収の学術論文『高齢者福祉サービスの提供主体の特別縁故者該当性に関する検討』という形で研究成果を広く公開することができた。この点については独居高齢者の財産管理を如何に行うかという公的後見や福祉施設等による法人後見の在り方と本人の利益相反が問題となるため、我が国における喫緊の課題であり、国家相続基金を通じた管理を法制化(Lag2021:401)しているスウェーデンから得られる示唆は大きいと考えられる。また親族等による援助を期待できない独居高齢者に対して、中核機関としての後見センターや社会福祉協議会、NPO法人等が担う公的後見に関して、中核機関よりも踏み込んで調整機能を有するスウェーデンのコミューン社会委員会の支援実践との関わりの点で、両国の自治体関係者を通じて比較検討を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ対応及び本務校の用務の関係で当初予定していたスウェーデン現地調査ができず、研究協力者による情報提供やWebを通じた年次報告者や研究論文、統計資料を通じた文献研究主体の研究にならざるを得なかった点で、当初の予定から若干の進捗の遅れを感じている。本研究においては、スウェーデンにおける公的後見の制度的分析のみならず、我が国における公的後見で現在生じている課題について、統計資料等から図ることが困難な部分に光を当て、公的後見先行国として多くの知見を有するスウェーデンでは、同課題につき実践としてどのように対応しているかを明らかにするという側面で、理論と実践の往還を踏まえた示唆を得ようとするものである。現時点で遠隔対応を通じた若干の成果はあるものの、現地実態調査の研究成果達成における重要度は高いものである。したがって本年度可能な限り早い時期に渡航調査を実施し、最新の比較分析の題材を入手することが課題であると実感している。
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今後の研究の推進方策 |
現在入手している資料の翻訳及び分析結果について、研究会および関係学会での中間報告を夏までに実施する方向で調整しており、研究手法の妥当性と課題についての示唆を得た上で、本学紀要に研究成果の投稿を行うことを目標としている。なお課題採択当初と所属研究機関の性質および用務状況が大きく変わったため、当初予定していた研究課題をあまねく調査分析したうえでの研究成果の達成の実現について若干の課題はあるものの、現在協力をいただいている自治体関係機関と在外研究協力者との協働により、シンポジウムの形で広く研究成果を公表し、今後の公的後見を考える機会を提供したいと考えている次第である。
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