研究課題/領域番号 |
21K01284
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
佐藤 智恵 明治大学, 法学部, 専任教授 (80611904)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | EU海洋環境法 / 国連海洋法条約 / BBNJ / 海洋保護区 / 洋上風力発電 / 再生可能エネルギー / 海洋生物資源 / 持続可能 / 海洋法 / EU法 / 沿岸国の権利 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、EUにおける洋上風力発電事業の推進に伴う新たな海洋環境法整備の必要性に関する議論を踏まえながら、洋上風力発電事業と海洋環境の保護を両立させるために必要な法及び制度とはどのようなものなのか、海洋生物資源・生態系の保護・海洋汚染にも適用可能な、包括的な海洋環境保護法(国及び洋上風力発電事業事業者が負う義務の態様・履行確保制度・汚染者負担原則の態様)を提案することを目指すものである。
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研究実績の概要 |
本年度は、前年度に続き、洋上風力発電の推進と海洋環境の保護を両立させるための新たな海洋環境法を作成する際の課題について検討した。特に、前年度まで新型コロナウイルスのため十分に行うことができなかった、国際海洋法裁判所判事やEU機関関係者等の実務家と直接意見交換を行った。その結果、洋上風力発電の建設海域が沿岸海域(着床タイプの洋上風力発電中心)からEEZ(浮体式洋上風力発電)へ拡大する傾向がある中で、当該事業を推進する各国に求められる海洋環境への配慮義務の内容(Due Diligenceの内容)は、国際的な基準(国連海洋法条約に基づいて示されたITLOSの判例や23年9月に署名のために開放されたBBNJ協定等)を十分に踏まえることが求められると言える。このような海洋環境保護のために各国に求められる注意義務や環境影響評価等の手続事項は、国際的なルールメイキングによって明確にされつつある。そこには、これまでの研究で明らかにしたとおり、EUの法制度に既に明記されている要素が多いことが改めて浮き彫りにされた。 以上を踏まえ、さらに、洋上風力発電事業と海洋環境の保護を両立させるために必要な法及び制度とはどのようなものなのか、EU法及び国際海洋環境法を参照しつつ、考察した。考察のポイントは、洋上風力発電所の建設から稼働、発電の終了後の解体等まで各段階について必要とされる環境対策をEU法及び国際法の観点から検討することである。例えば、建設・解体時には廃棄物処理・運搬するための船舶からの汚染等の海洋汚染対策が重要である。また、稼働時には洋上風力発電設備を点検するための船舶航行に係る汚染対策に加え、発電ケーブルの海洋生物・生態系への負荷を減ずるための対策が必要となる。さらに、事業の全過程を通じて、事業が海洋環境に与える影響をモニタリングすることにより、環境へのリスクを定期的に把握する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症による各種制限により、対面での意見交換が十分に行えなかったため、本年度、研究の第2段階で行う予定であった、洋上風力発電の推進と海洋環境の保護を両立させるための新たな海洋環境法を作成する際の課題に関する意見交換をITLOS元判事やEU機関の関係者と対面で行った。その結果、研究の第3段階としての洋上風力発電事業と海洋環境の保護を両立させるために必要な法及び制度とはどのようなものなのかという点に関する考察に十分な時間を充てることができず、検証を終えることができなかった。しかしながら、研究最終段階として、洋上風力発電事業と海洋環境の保護を両立させるために必要な法制度については、本年度行った実務者・裁判官等との対面での意見交換や最新の関連論文の分析で得た調査結果を十分に検討し、論文及び書籍としてまとめる予定であり、そのための作業はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究の最終段階として、洋上風力発電事業と海洋環境の保護を両立させるために必要な法及び制度とはどのようなものなのかという点について、洋上風力発電事業の各段階(建設の計画、建設前・中、事業の稼働中、事業終了・解体)で必要とされる海洋環境の保護・保全のための法制度について、海洋生物資源・生態系の保護及び保全、海洋汚染防止等に係る関連法、環境影響評価のあり方に関する法制度について、EU法及び国連海洋法条約や関連する国際法の規定を検証し、論文及び書籍としてまとめる。 なお、現在、国連を中心としてプラスチック規制に関する新たな国際条約作成の議論が進んでいる中で、同条約の規定は海洋環境保護に関する新たな国際義務の導入につながる可能性もあるため、研究成果のとりまとめに当たっては、同条約作成の議論及び関連する学説の動向にも注意する。特に、EUは主要先進国に先駆けてプラスチック規制を既に行っていることから、EUがプラスチック規制に関する国際条約の作成に係る議論もけん引することは確実であるため、EUの動向も引き続き注視する。
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