研究課題/領域番号 |
21K01285
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上野 達弘 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80338574)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 著作権契約法 / 契約法 / 著作権法 / 著作権 / 著作者 / 契約自由 / 著作者契約法 / 契約 |
研究開始時の研究の概要 |
日本の著作権法は、1970年の制定以来多数改正されてきたものの、著作権契約に関する規定(著作権契約法)は、いまだにほぼ皆無である。他方、欧米諸外国には、契約自由や自己決定に一定の制約を加える著作権契約法が伝統的に広く見られる上、2019年の欧州指令が初めて著作権契約法の整備を義務づけ、盛んな議論がある。本研究は、欧米諸国における著作権契約法を網羅的に分析してその意義と理論的背景を明らかにすると共に、民法・憲法・労働法・競争法といった分野から横断的に考察して著作権契約法の理論的根拠を検討した上で、将来の日本における著作権契約法の在り方について総合的かつ具体的なヴィジョンを描くものである。
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研究実績の概要 |
2022年度は、著作権契約法に関する論文を多数発表した。まず、欧州デジタル単一市場における契約法規定に焦点を当てたものとして、上野達弘「欧州指令における『著作権契約法』」早稲田大学法学会編『早稲田大学法学会百周年記念論文集(4)展開・先端・国際法編』(成文堂、2022年)255頁を発表し、また、ドイツ・フランス・欧州指令等の諸外国の状況に焦点を当てたものとして、上野達弘「著作者・実演家の契約法的保護」『知的財産法学の新たな地平』高林龍先生古稀記念論文集(日本評論社、2022年)406頁を発表し、さらに、特に、相当報酬原則および撤回権に関する日本法の状況とその立法過程に焦点を当てたものとして、上野達弘「日本著作権法における相当報酬原則および撤回権」国際著作権法研究1号83頁(2023年)を発表した。 また、2022年度著作権法学会年次大会(2022年5月21日)において、シンポジウム[著作権法における契約法(著作権契約法)]の実施を担当し、司会として、著作権法および民法を専攻する他の3名のパネリストと共に研究を進め、当日の発表および討論を行った。 上記のいずれも、これまでの研究成果を踏まえつつ、さらに、比較法的・歴史的に深めたものである。契約法規定が皆無に等しい日本法においては、立法論としても、「著作権契約法」に関する懐疑的な見方が有力であるが、著作者および実演家にいくら強力な権利を付与しても、契約自由の原則の名の下にそれが容易に奪われてしまい、著作者や実演家が、その著作物や実演が生み出す収益から正当な利益分配を受けるれないとすれば、なお立法論の余地があるとの方向性に到達した。 今後は、著作権契約法と契約自由の原則との関係について、さらに考察を深め、日本における「著作権契約法」の将来像を具体的に構築する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は、本研究課題に関する論文を3本刊行することができ、また、4本目として、上野達弘「日本における『著作権契約法』」著作権研究48号(2023年5月刊行予定)はすでに脱稿済みである。さらに、2022年度著作権法学会年次大会(2022年5月21日)において、シンポジウム[著作権法における契約法(著作権契約法)]を行った。これほどまでのまとまった研究成果の公表は、当初まったく予定したものではなかったため、上記のような評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、本研究課題に関する比較法的・歴史的考察は、すでにおおむね達成したと考えられるため、今後は、日本における「著作権契約法」の具体的な構築を検討する。そこでは、契約自由の原則との関係など、理論的な考察のみならず、他の法領域(例;競争法、労働法)との関係や、近時の立法動向(例:2023年4月に国会で可決成立したフリーランス新法〔特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律〕)との関係も考慮した上で、さらに、実務上の運用可能性も考慮しつつ、具体的な検討を行う所存である。
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