研究課題/領域番号 |
21K01293
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
安岡 正晴 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (00335407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 連邦制 / 聖域都市 / 移民政策 / アメリカ政治 / 不法移民 / 人権行政 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本ではほとんど実態が知られていない、「聖域都市」と呼ばれる、不法移民の摘発に消極的な諸都市の移民行政のあり方と、連邦・州政府との関係を明らかにすることを目的としている。不法移民に強硬なトランプ共和党政権から、不法移民の正規化に積極的なバイデン政権へと交代した結果、連邦・州政府と聖域都市の関係はどのように変化するのか、政治学的な分析を行い、米国の移民政策に連邦制がどのような影響を及ぼしているのかを明らかにし、我が国を含めた先進民主主義国における移民政策の今後の方向性を探りたい。
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研究実績の概要 |
本年度は、バイデン政権下における連邦政府の国境管理政策の推移と主要な聖域都市の移民政策の実態について研究調査を行った。トランプ前政権が導入したコロナ禍下の不法移民即時送還措置である「タイトル42」が2023年5月に失効したため、バイデン政権は代わりに「タイトル8」と新たな入国管理を実施し、難民申請審査官の増員による審査手続きの迅速化と、難民申請などの資格がないと判断された場合は送還後、再入国が最低5年間禁止、アプリや経由国での難民申請なしで不法越境した者には申請を認めないなど条件を厳格化した。また10月には公約を撤回し、メキシコとの国境に新たな侵入防止柵の設置を発表した。一方、バイデン政権は11月にテキサス州が可決したSB4(州警察が不法越境者を独自に逮捕可能とするもの)の差し止めを求めて訴訟を提起している。トランプ前政権下では聖域都市にとっての主な対抗相手はトランプ政権そのものであったが、現在は2022年4月から10万人以上の庇護申請者を、ニューヨークやワシントンDCといった聖域都市へバスで移送したテキサス州のグレッグ・アボット知事など、国境州の共和党系の知事が「強敵」となってきた。そこで2023年度の調査では、1.連邦政府の国境管理策の変更に対する対応、2.アボット・テキサス州知事など反「聖域都市」州の政策に対する対応、の2点から聖域都市の動向を研究した。2024年3月3-10日にはワシントンDCへ訪問調査し、ワシントンDC政府行政管理局でのインタビュー調査とワシントンDC公立図書館での資料収集を行った。研究成果の一部は、2023年 10 月27日に神戸大学国際文化学研究推進インスティチュートにおいて、「アメリカ連邦制の政治学的分析-その課題と方法をめぐって」と題する研究報告を行ったほか、2024年2月に刊行された『アメリカの政治(第2版)』弘文堂(共著)で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アメリカ―メキシコ国境での庇護申請者の急増や2024年大統領選挙を控えて、移民政策が争点化し、聖域都市の政策担当者が移民問題についてのインタビューに応じるのに慎重になっており、当初予定したほどインタビューが実施できていない。残りの研究期間ではそうした移民問題をめぐる情勢の変化も踏まえて調査研究を遂行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
聖域都市に対する庇護申請者の移送など、聖域都市の政策継続を阻害する要因が急増しており、難民・移民受け入れに比較的寛容だった聖域都市の行政担当者や住民の意識や世論も変化している。2024年大統領選挙でトランプ氏が再選される可能性もあり、聖域都市をめぐる情勢はますます厳しくなっていくことが予想されるが、移民・難民を受け入れをめぐる党派対立とそれに苦慮する行政の実情について、2024年度も海外実態調査も含めて、綿密に調査する予定である。
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