研究課題/領域番号 |
21K01298
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
堀江 孝司 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (70347392)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | ジェンダーと政治 / 保守政治 / 女性議員 / 議員行動 / 合理的選択 / 立場選択 / ジェンダー政治 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、保守系女性議員のジェンダーをめぐる言動を収集・整理して、それらを彼女たちのイデオロギーとしてというよりは、議員として抱える各種の制約の観点から読み解き、ジェンダーと政治をめぐる新たな分析枠組みを構築するものである。とりわけ、再選に動機づけられているはずの議員たちが、世論から大きく乖離した保守的すぎる主張を行うことや、「立場回避」を行うことなどを、議員の属性や選挙に関する条件、支持団体、党内・院内でのポジションなどから解釈する。本研究の問題意識は、ジェンダーのイシューを超えた議員の右傾化の検討などにも適用可能であると考えている。
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研究実績の概要 |
研究計画書に記した本研究課題の最も中心的な部分については、2022年度に比較政治学会での報告と、独立論文として発表したものによって、概ね達成できたと考えている。2023年度は、残された二つの課題に取り組むこととなった。 一つ目は、日本語の学会報告と論文で発表した成果を、英語で発表できないかということであった。こちらについては、まだ果たせていない。 二つ目の課題は、本研究課題の発展形ともいうべき、いくつかのテーマについて調べ、論考をまとめることであった。 特に2023年度には、ジェンダー政策とも密接に関係する社会的投資論を題材に、政治的言説の役割について考察を深めた。そして、ヨーロッパの社会政策で一大パラダイムといえるほどの重要テーマとなっている社会的投資論についての、近年の日本での用語法なども検討しながら、政治におけるレトリックについて考察した論考を発表した。同論文では、ヨーロッパにおける社会政策の文脈で論じられてきた社会的投資論の特徴を踏まえた上で、それが日本において民主党系の政党を通じて「人への投資」として導入されたものの、その内容が、ヨーロッパの社会的投資論からはずれてきており、より所得の再分配を中心としたものにシフトしていること、さらに岸田政権下において、「人への投資」が多用されるようになる中で、その意味がさらに変容し、賃上げとリスキリングを中心とした社会政策としての性格を希薄化させたものになったことなどを指摘した。本稿では、非難回避や多数派形成を追及することで、本来の問題意識からの乖離が生じる事態を明らかにした。また、ジェンダー政策との関連では、この論考は、ケア論からの社会的投資批判についても紙幅を割いて考察している。ジェンダー政策については他に、『朝日新聞』に短い論考を掲載している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」にも記したとおり、当初の研究計画にあった課題については、概ね2022年度の学会発表と論文において、目的を果たしたと考えている。その意味では、「順調」としてもよかったのかもしれないが、2023年度で終了する予定の本研究課題を、2024年度にまで研究費の一部を持ち越す形で延長することになったため、(3)の「やや遅れている。」を選択した。 私の目論見としては、2022年度の成果において明らかにした本研究課題について、できれば英語の媒体に発表したいという思いがあり、校閲費用も見越して、研究費の一部を繰り越すことにした。ただ、今の時点では、元の日本語論文の分量が長すぎることと、特殊日本的文脈や固有名詞など、海外の読者には一見、わかりにくい内容を多数、含むため、このまま英語化しても、理解されにくいと考えたことから、どのような形でなら発表できるか、検討するにとどまっている。 2024年度に活字化にまで至るかどうかはわからないが、英語での発表に向けて、さらに可能性を探りたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題と直接関係する範囲でいうと、残されたテーマは英語での論考の発表ということになる。そのためには、「現在までの進捗状況」で述べたように、海外の読者にわかりにくい要素を排して、なおかつ本研究の意義が伝わる形での活字化を目指している。 そのために、まずは英語圏で活躍する何人かの日本政治研究者には、論考を読んでもらい、どのようなところが海外の読者にわかりにくく、どのような工夫をすれば伝わるかについて、助言をもらうことを考えている。 その助言も参考にしながら、今年度にさらに英語化の可能性を追及したい。
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