研究課題/領域番号 |
21K01307
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
木村 俊介 明治大学, ガバナンス研究科, 専任教授 (30708186)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 水道事業 / 民営化 / 再公営化 / 水道料金 / 独立採算制 / 一元的広域化 / 人口減少社会 / 事業統合 / 企業団 / 設備投資 / 内部留保 / 広域化 / 市町村間協力 / 共同処理 / 民間活力 / PFI / 基礎的自治体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,「我が国の水道事業の民間的経営又は広域化はどこまで進められるのか」というものである。 このため,民間的経営については,英国,仏国及び独国等を対象とし,人口減少地域における民間事業者及び公営水道事業者の事業状況について取材調査等を行う。 次に,広域的経営については,仏国の広域連合組織や国内の幾つかの県を対象とし,広域化の能率性を検証する。 これらの分析を通じ,当該2つの方策の在り方について,具体事例を踏まえ,行政学上の政策手段の観点から検証を行う。
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研究実績の概要 |
2021年度は,第1に,基礎的資料の収集確保を行った。広域化については,全県単位の広域化について香川県及び広島県に係る資料を入手した。 第2に,諸外国との研究交流を図るため,論文(英文)‘Challenges of Japanese WaterGovernance’(明治大学紀要)の執筆等を行った。また,次の特別講演を行った。①「公営企業の現状と課題」公営企業連絡協議会主催,②「自治体間の広域連携-その進展と課題」鹿島平和研究所主催,③「水道事業の現状と課題」明治大学主催。 第3に,研究交流を視野に入れ,我が国の地方行政の枠組みに関する論稿の著述及び講演を行った。①書籍(共著)‘The MIC and the Reform of Local Administration’,②“Pandemic and Change of Japanese Local Administration”アジア行政学会総会における発表。 2022年度は,超広域化の財政的効果分析のため,香川県及び広島県の分析結果をまとめ,「広域連携~人口減少社会を見据えて~」『大阪市市町村振興協会 研究紀要 No26』として公表を行った。また、別途英文で,‘The possibility of wide-area cooperation -A study of unified wide-area waterworks management-'を作成し公表した。。 2023年度は,自治体国際化協会の協力を受け,仏独の水道事業の状況と課題について取材・文献調査を行うとともに,パリ市水道公社を対象に再公営化を取材した。また、12月15日にアジア行政学会 において,‘Water-supply management in Japanese Shrinking Society’をテーマとして研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.当該研究の一環として,パリ市の水道の再公営化に係る経営上の考え方を聴取するため,パリ市水道公社をを訪問した。日時 2023年6月16日(水),場所 19, rue Neuve-Tolbiac CS 61373 75214 Paris。現地では,Celine BIGOT氏(Responsible des Relations Institutionelles et Internationales)及びLeo BOUSQUET 氏(Adjoint aux Relations Institutionnelles et Internationales)に対して取材を行った。<BIGOT氏説明>1985年~2010年までは,シラク パリ市長の当時に設立したSAGEP社(公社)が飲料水の製造を行い,民間企業2社(スエズ,ヴェオリア)が供給を行う体制であった。2001年に社会党の市長に交代した際に民間企業2社の監査を行った結果,料金収入の一部がグループ企業(携帯電話事業等)の事業に充当されていることが判明した。このことは独立採算原則に反しており,パリ市は,水道料金を原資としてよりよい品質の水道供給を行っていくことを目的として,当該契約を終了させ再公営化を行う方針を決定した。2.飲料水を製造する公社,供給を担当する民間企業2社,水質分析担当の1社の計4社を統合し,契約全体のコストを引き下げ,料金収入を安定させることができると考えられた。3.従来は,フランスの大半の自治体が民間委託の経営であったが,2010年代半ば以降,公営に戻す潮流が始まった。現在,同国全体では,公営と民営(委託)が半々であるが,トレンドとしては再公営化が進んでいくことが見込まれる。 2.このほか,2023年4~9月の在外研究期間を活用し,フランス及びドイツにおいて水道事業及び地方公共団体に関する文献収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,基本的には以下の調査を進めていく方針である。 まず,調査としては,水道事業経営に関し,仏国を対象とし,現在の公営水道事業者の事業状況について補足的に文献調査等を行う。 また,完全広域化については,国内(香川県及び広島県)に関する調査結果をまとめる。 フランスと同様にドイツにおいてもベルリン市の再公営化の事例がみられるところであり,文献調査の結果をまとめることとする。 水道事業については、水道事業者,地方公共団体,水道事業のオーナー,市民(利用者)という4つのアクターが存在し、政策の「調整」という政策過程を通じて,「更新投資」と「料金水準の決定」という政策の結果が決定される水道事業の構造を捉え,どのような社会的要素が各アクターの判断にどのようね影響を与えているかという観点から更に考察していく必要がある。このため,これまで調べてきた民営化・公営化及び広域化という2つの局面から、これらの各アクターの政策判断が水道事業の経営にどのように影響を与えているかを考察し,本調査のまとめとしたい。
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