研究課題/領域番号 |
21K01329
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大久保 健晴 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (00336504)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 政治思想史 / 日本政治思想史 / 比較政治思想 / 蘭学 / 福沢諭吉 / 西周 / オランダ / 東アジア / 西洋兵学 / 福澤諭吉 / オランダ精神史 / グローバル・ヒストリー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、徳川日本における蘭学を主題に、多文化間の政治概念や制度的知の連鎖と伝播を分析することにより、アジア及びヨーロッパを含む、ユーラシア大陸の歴史的転形を視野に入れた国際的な比較政治思想史の新たな地平を切り拓く。 近年のグローバル・ヒストリー研究の進展を背景に、近代軍制の設立、標高や時間など統一基準の導入、海外資本の流入と技術移転、西洋列強の勢力圏の拡大競争、国際港の創設、国内交通の整備といった諸要素が密接に絡まりあう19世紀のアジアにおいて、近世以来の蘭学の深化を通じて同時代西洋の学知に精通し、それを基礎に国土開発に取り組んだ、近代日本の国家建設の特質を重層的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、徳川日本における蘭学を主題に、17世紀から20世紀に至る西洋と東アジアとの間の学術の連鎖と、その背後に潜む権力構造の変容について、国際的な比較政治思想史の観点から解明することを目的とする。 3年目である2023年度は、8月にオランダを訪問し、ライデン図書館やハーグの王立図書館、国立公文書館において、蘭学に影響を与えた18-19世紀オランダの学問について史料調査を行った。また国内では大分県中津市にある中津市歴史博物館などを訪問し、蘭癖大名といわれた藩主奥平昌高とシーボルトの関係など、福沢諭吉の思想形成の背景にある蘭学の思想的展開について検討を深めた。 研究成果として、『アジア人物史 第9巻 激動の国家建設』(集英社)の第4章「文明化と独立―福沢諭吉とその時代」の執筆に携わり(中村敏子北海学園大学名誉教授との共著)、特に「はじめに」と、「中江兆民」から「西周」に至る人物伝の執筆を行った。 また、4月末に台湾の中央研究院に招聘され、“Empire and Civilization”を主題とする国際会議において、“Fukuzawa Yukichi: The Last Sumurai of Dutch Studies”というタイトルで基調講演を行った。加えて、同研究院のワークショップで“The concept of right in modern Japan”という研究発表を行った。さらに9月には英国スコットランドのエディンバラ大学で開催された国際学会International Society for Intellectual History(ISIH/国際知性史学会)に参加し、“A pioneering effort of the acceptance of Comtean positivism in 19th century Japan”という研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究成果は、大きく三つに区分される。 第一に、オランダでの史料調査を通じて、「一般の利益のために」協会(Maatschappij: Tot Nut van ’t Algemeen)やテイラース博物館(Teylers Museum)など、啓蒙の世紀といえる18世紀から19世紀初頭に形成され、徳川後期日本における蘭学者の学問活動に大きな影響を与えた、オランダの自発的な学術結社や学術協会の活動を検討した。 第二に、徳川末期にオランダ留学を行い、帰国後、明治初期日本にオーギュスト・コントの実証哲学を積極的に導入した西周の学問活動に注目し、徳川後期における蘭学の展開の延長線上に位置づけながら分析を行った。その成果をもとに、国際学会International Society for Intellectual History(ISIH/国際知性史学会)に参加し、コント実証主義の国際的な伝播を比較検討する研究セッション(Comtean Positivism and its Global Ramifications)のなかで、A pioneering effort of the acceptance of Comtean positivism in 19th century Japan”というタイトルで研究報告を行った。 第三に、「福沢諭吉と蘭学」という主題を、より学問的に掘り下げて検討した。その過程で、明治国家の礎を築いた学者や政治家たちの活動について、福沢諭吉との交流や接点に注目しながら分析を加え、論稿「文明化と独立―福沢諭吉とその時代」を公刊した。さらに11月には中津市市民講座に登壇し、明六社と福沢諭吉に関する本科研費研究の成果を、研究者だけでなく、広く一般の読者の方々に公開することができた。 以上の点から、本研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の4年目にあたる2024年度は、次の研究活動に従事することを計画している。 第一に、本科研費研究プロジェクトの最終的な研究成果をまとめる形で、単著の執筆に取り組む。この間に公刊した論文にさらに加筆し、修正をくわえながら形を整えるとともに、全体の最終章として「福沢諭吉と蘭学」という主題で学術論文を新たに執筆する。また、「一般の利益のために」協会やテイラース博物館をはじめとしたオランダの学術結社が近世日本の蘭学に与えた学問的影響についても、新たな論文を執筆する。 第二に、この執筆活動を補完する形で、オランダに赴き、18-9世紀オランダ政治思想、政治史、科学思想、ならびに近世日本の蘭学に関する史料調査を実施する。ライデン大学図書館やハーグ王立図書館、国立公文書館、オランダ国立軍事博物館、オランダ戦史研究所図書館、カンペン公文書館などを訪れ、18世紀後半から19世紀におけるオランダの自然科学書や兵学書を広く渉猟し、徳川日本における蘭学の学問的背景を引き続き解明する。さらに、長崎歴史文化博物館や津山洋学資料館に赴き、国内における史料調査を実施することも予定している。 第三に、これらの成果をもとに、国内外の学術会議やシンポジウムに積極的に参加して研究報告を行う。現在、2024年9月に大阪大学で開催される国際学術会議Societe Internationale Fernand De Visscher pour l’Histoire des Droits de l’Antiquite(SIHDA/国際古代法史学会)において研究報告を行うほか、イギリスのワークショップで発表することが決定している。また6月には、大分県中津市において市民向けの講演を行う。 本科研費に基づく研究成果を広く世界の研究者や一般の人々に向けて公開し、さらなる研究の質的向上につとめる。
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