研究課題/領域番号 |
21K01336
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
縣 公一郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00159328)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 行政改革 / DX / NPM / ポストNPM / ディジタル化 |
研究開始時の研究の概要 |
1980年代から先進国を席巻した NPMの考え方に基づいて行われた行政改革が、如何なるものであり、何故導入され、如何なる意義を有していたのか、そして、それがある程度実施されたのち、何故それとはむしろ逆方向の行政 改革が志向されるようになったのか、そしてそれは如何なる意義を持っているのか、この問いを、本研究課題の核心をなす学術的問いかけとして設定したい。何故ならば、NPMの考え方は、一定の領域では十分機能するものの、必ずしも常に積極的な意義を有するとは限らない領域も存在すると 思われるからである。これら両領域の弁別を行うことが、本研究の行政学上の重要な意義となる。
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研究実績の概要 |
2023年度は、まず21年から共編著者として携わってきたAgata, K./Inatsugu, H./Shiroyama, H. ed., Public Administration in Japanの編纂を、総務省行政管理局の協力を得て、10月末に終了した。本書は、22章から構成され、日本における行政の理論と実際を包括的に議論した業績にて、当初24年3月末刊行予定であったが、出版社の都合により同年9月末刊行予定となった。斯かる日本行政に関する包括的英文書籍の出版は、1983年以来のこととなる。本書において、"The Digital Transformation (DX) of the Japanese Government"を執筆し、行政改革研究の一環として、標準化、ディジタル化、共有化、及びセキュリティーの4原則の観点から、現状を分析した。 加えて、NPM関連の研究として、「NPM、NWS、そして/若しくはNPG」と題し、行政改革一般の方向性に関する議論を展開した。NPMが十分適用され得る行政分野は確かに存在するが、全行政分野に妥当するわけではない。その代替スタンスとして、NWS(New Weberin State)、及びNPG(New Public Governance)が議論されている。前者は、NPMの経験に照らし、むしろ政府の中心的役割を復権させつつ政府機構そのものの改革を進めるという立場であり、後者では、政府と市場部門及びシヴィック部門は対等な立場にあり、相互の役割分担と協力体制の強化が強調される。一般に、これら三スタンスが体制として相互に代替的として議論されることが多いが、本論文では、むしろ社会問題の特性に応じて、NPM、NWS、及びNPGがスタンスとして分野毎に適切に選択され、補完的に適用され得る点を強調し、その際に政府が果たすべき役割の重要性を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、感染症到来によって留保してきたドイツにおける資料収集・意見交換を、一部分展開した。その際、Agata, K./Vanoverbeke, D./Shimada, H.,"NPM-driven Administrative Modernisation and its NWS-driven Future Prospects in Japan"の共著論文執筆をも含め、研究展開した。本論文は、日本におけるNPMに基づく行政改革の実施とその成果、日本におけるNPM及びNWSの考え方の展開、そして日本におけるNWSに基づく改革の将来展望、これらの三観点を、1960年代、1980年代、2000年代以降に弁別され得る戦後行政改革の流れの中に位置づけ、分析する試みである。 これら三観点のうち、第一点の執筆を担当している。1980年代に提唱され、それ以降具体化されてきたExternal reorganisation、及びInternal reorganisationの各事例を採り上げ、分析した。前者では、情報通信、鉄道、及び郵政の民営化を、後者では、独立行政法人・国立大学法人制度化によるエイジェンシー化、および両法人評価制度を通じた業績評価の導入を対象とした。情報通信分野の民営化と市場活性化は、社会現状が示す通り、NPMに基づく改革が成功した分野である一方で、鉄道と郵政の民営化は、両分野での現在の経営状況に鑑みれば、NPMが奏功したとは評価し難い。また、エイジェンシー化としての独立行政法人制度、及び国立大学法人制度は、導入以来、前者は一度の制度改革が必要ではあったものの、両者とも、定期的な業績評価の導入を通じて、法人活動の透明化、及び活性化に一定の成果が認められる。本共著論文は、2024年6月末を目途に結稿し、Journal of Policy Studiesに掲載予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、上記共著論文の結稿、及び編集者による修正提案が為された場合の修正対応に基づく論文完成が研究の中心となる。他の共著者とはZoomを通じて定期的な意見交換を行って居り、予定通りの結稿が見込まれ、論文修正・完成・公刊は、年度内を予定している。 更には、2024年2月・3月に行ったドイツでの資料収集・意見交換に基づいて、行政におけるディジタル化に関する研究を進めたい。ドイツでは、行政サービスのディジタル化を推進すべく、2017年にオンラインアクセス法が制定されたが、必ずしも期待通りの改革が進まなかったため、2024年2月に同法改正案を連邦議会が可決した。5月に連邦参議院での審議・可決を経て同改正法が成立する見通しだが、改正案は、国民個々、及び各企業での個別ID、及びそれに基づく個別ポータルの設置により、ワンストップ原則を確立し、ディジタル行政サービスへのアクセス簡素化を実現して、事務処理の合理化と同時に情報保護とセキュリティの向上を目指している。 この現状進行に鑑み、2024年夏に再度ドイツ滞在を実現し、改正法成立後の状況に関して資料収集・意見交換に臨みたい。それへの準備段階として、既述の"The Digital Transformation (DX) of the Japanese Government"の基盤となって居た各種データを更新して、日本における最新状況の把握に努めると共に、上記改正オンラインアクセス法との対比を通じて、日独比較を目的として、両国での行政ディジタル化の制度趣旨と制度内容、そして制度進行の状況把握と比較分析が実現できるよう、データの整理と分析視座の精緻化を図りたい。 本報告書執筆の時点では、ドイツ滞在の具体的計画を定めてはいないが、可能な限り早い段階で日程を確定し、ドイツにおける資料収集・意見交換の実現見通しを明確化してゆきたい。
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