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紛争後のハイブリッドな国家建設の妥当性に関する実証研究:アフガニスタンを事例に

研究課題

研究課題/領域番号 21K01345
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分06020:国際関係論関連
研究機関東京外国語大学

研究代表者

青木 健太  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (10769277)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
キーワード国家建設 / アフガニスタン / ハイブリッド / 平和構築 / 紛争解決 / ターリバーン / イスラーム / 非国家主体
研究開始時の研究の概要

本研究は、ポスト紛争国における政治体制の構築に関し、ハイブリッド(折衷的)な国家建設の妥当性をアフガニスタンの事例から検証し、有効なモデルを提示することを目的とする。2001年に米国から軍事介入を受けたアフガニスタンは、当初の国際社会の想定と反対に、主権国家を理念型とした国家建設が成功していない最たる事例である。同国に共存する①自由主義統治モデル、②伝統的統治モデル、及び、③反政府武装勢力ターリバーンが主張するイスラーム統治モデルの各々の固有性と共通性について、現地語資料(ダリー語)の解析と現地調査を用いた実証的手法により解明し、ハイブリッドな国家建設の理論的妥当性の導出に事例面から貢献する。

研究実績の概要

本年度は、自由主義統治モデルの解明のため、2019年9月に行われた大統領選挙を含むボン合意(2001年12月)以降に実施された全ての大統領選挙結果(2014年の決選投票を含めて計5回)における立候補者動向及び投票動向を、民族、党派、その他の属性の観点から、文献調査と現地調査を通じて分析した。アフガニスタン・イスラーム共和国政府が設置した独立選挙委員会・独立選挙不服申立委員会の政治的独立性に疑義が呈される中、同機関の公表データを全面的に信頼することはできない点に手法の限界が指摘されたものの、集計データ分析を通じて、民族的出自に基づく投票行動が強く見られたことが明らかとなった。紛争(後)国において、統治機構が依然として脆弱で、市民社会も成熟しておらず、小型武器も蔓延する状況下、現地の伝統的統治システムとは異なり「国際社会」主導で導入された選挙の実施が、民族ラインに基づく社会の分断を助長した可能性が指摘された。これと同時に、ロヤ・ジルガ(部族大会議)をはじめとするアフガニスタンの伝統的統治モデルの妥当性について、文献調査を中心とした調査を進めた。成果の一部については、現代中東政治研究ネットワークに「アフガニスタン大統領選挙集計データ(2001~2021年)」として公開した他、国際安全保障学会で「ハイブリッドな国家建設の理念的妥当性――アフガニスタンを事例に」と題して発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では、2001年から2021年の間の民主的国家建設の過程で導入された自由主義統治モデルの課題について、選挙結果分析に加えてアフガニスタンの伝統的規範との相違にも目を配しながら検討した上で、本研究事業中に明らかになったターリバーンによるイスラーム統治モデルと、ロヤ・ジルガに代表される伝統的統治モデル、そして、自由主義統治モデルを折衷する具体的な方策とその含意について検討し、紛争(後)国におけるハイブリッドな国家建設の理念的妥当性について検証する計画であった。また、最終年度に当たり、研究成果を、所属学会で発表する他、学術誌に投稿することも計画した。
しかし、自由主義統治モデルの課題の検証についての調査研究は計画通り進んだ一方、研究事業期間において明らかにした、イスラーム統治モデル、伝統的統治モデル、及び、自由主義統治モデルを折衷する具体的な方策の検討に充分取り組むには至らず、当初計画よりやや遅れが生じたといえる。この理由は、2020年以来の新型コロナウイルス感染症の拡大によって、2021~2022年度にかけて海外研究者招聘や海外調査実施の面で遅れが生じ、結果として2023年度にも影響を残したためである。また、2021年8月にターリバーンが復権したことにより、研究事業期間中の調査研究の軸足をターリバーンによるイスラーム統治モデルに移したことも背景にある。
このため、当該研究期間では、2001~2021年の間に行われた治安部門改革の動向を仔細に検証することを通じて、次年度以降の調査研究の基礎を固める作業を行った。同時に、前年度に引き続き、ターリバーンの政治的立場と認識について、現地語の学術書・文献、及び公開情報を通じて解析した。また、当初計画に従い、ターリバーンが運営する情報宣伝媒体に掲載される同勢力の公式の立場を表明する各種声明を解析した。

今後の研究の推進方策

最終年度に当たる2024年度は、当初の計画で掲げた紛争後のハイブリッドな国家建設の理念的妥当性の検証に事例面から貢献することを念頭に置きつつ、本研究事業中に明らかになったターリバーンによるイスラーム統治モデルと、ロヤ・ジルガに代表される伝統的統治モデル、そして、自由主義統治モデルを折衷する具体的な方策とその含意について検討する。同時に、アフガニスタンにおける国家建設が失敗した諸要因に関し、これまでに明らかになっていることを先行研究から考察し、要因間の相互関係や各々の要因の妥当性について検討する。研究成果については、所属学会の査読付学術誌に投稿し、対外発信する。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (28件)

すべて 2024 2023 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 図書 (9件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] The Afghanistan Affairs: A Japanese Perspective2023

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      Afghanistan Monitor

      巻: 5 ページ: 24-27

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] アフガニスタンにおけるターリバーン統治の現状――独自の政治体制と顕在化する諸課題2023

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      中東研究

      巻: 546 ページ: 102-123

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] アフガニスタン・中国関係の変遷と展望――ターリバーン台頭後の地域情勢への影響2022

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      中東研究

      巻: 544 ページ: 11-23

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] アフガニスタン・ロシア関係の展開――2021年ターリバーン実権掌握を経た地域情勢への含意2022

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      ロシア・ユーラシアの社会

      巻: 1062 ページ: 50-64

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] ターリバーンの統治下、アフガニスタン国家建設はどこへ向かうのか2022

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      シノドス

      巻: -

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] タリバン復権1年 「アルカイダ指導者殺害」で表出した言行不一致2022

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      フォーサイト

      巻: -

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 米軍撤退とターリバーン復権--2021年アフガニスタン政権崩壊の背景2022

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      中東研究

      巻: 543 ページ: 144-159

    • NAID

      40022817888

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] タリバン「女子教育再開」初日撤回が示す暫定政権内「保守の発言力」2022

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      フォーサイト

      巻: -

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] アフガニスタンにおける国家建設と治安部門改革--「限定的な国家状態」での統治の一事例2021

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      中東研究

      巻: 542 ページ: 95-101

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 米国の対中東外交とトランプ政権--軍事的撤退と対イラン強硬政策に着目して--2021

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      国際安全保障

      巻: 49 ページ: 59-78

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] The Collapse of the Afghan Government: Implications for the Indo-Pacific2021

    • 著者名/発表者名
      Kenta Aoki
    • 雑誌名

      Indo-Pacific Perspectives

      巻: - ページ: 31-35

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 書評「紛争が変える国家」2021

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      中東研究

      巻: 541 ページ: 98-101

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 撤退する米軍、台頭するタリバン 「新中東秩序」に備えよ2021

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      ウェッジ

      巻: -

    • NAID

      40022677204

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] アフガン米軍撤退:米国の「対ISKP軍事行動」に見る「対テロ戦争」の新しい姿2021

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      フォーサイト

      巻: -

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] アフガン「タリバン政権」が内部に抱える「路線対立」「部族間対立」2021

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 雑誌名

      フォーサイト

      巻: -

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] ハイブリッドな国家建設の理念的妥当性――アフガニスタンを事例に2023

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 学会等名
      国際安全保障学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 国際紛争解決論――理論と政策の橋渡し2024

    • 著者名/発表者名
      古澤嘉朗・田辺寿一郎
    • 総ページ数
      206
    • 出版者
      渓水社
    • ISBN
      9784863276420
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] アフガニスタンの素顔――「文明の十字路」の肖像2023

    • 著者名/発表者名
      青木健太
    • 総ページ数
      274
    • 出版者
      光文社
    • ISBN
      9784334046729
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] アジア動向年報20232023

    • 著者名/発表者名
      アジア経済研究所
    • 総ページ数
      600
    • 出版者
      アジア経済研究所
    • ISBN
      9784258010233
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] アジア動向年報2000-2009 アフガニスタン編2023

    • 著者名/発表者名
      アジア経済研究所
    • 総ページ数
      282
    • 出版者
      アジア経済研究所
    • ISBN
      9784258020461
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] アジア動向年報20222022

    • 著者名/発表者名
      アジア経済研究所
    • 総ページ数
      596
    • 出版者
      アジア経済研究所
    • ISBN
      9784258010226
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] タリバン台頭2022

    • 著者名/発表者名
      青木 健太
    • 総ページ数
      222
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784004319207
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] アジア動向年報2010-2019アフガニスタン編2022

    • 著者名/発表者名
      アジア経済研究所
    • 総ページ数
      266
    • 出版者
      アジア経済研究所
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] Quad Plus and Indo-Pacific: The Changing Profile of International Relations (The Quad Plus and Promoting International Connectivity: A Focus on the Makran Region)2021

    • 著者名/発表者名
      Jagannath P. Panda, Ernest Gunasekara-Rockwell
    • 総ページ数
      312
    • 出版者
      Routledge
    • ISBN
      9781032048604
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] アフガニスタンを知るための70章(商業、バザール経済、地域経済、ハワーラ)2021

    • 著者名/発表者名
      前田 耕作、山内 和也
    • 総ページ数
      416
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      9784750352435
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [備考] アフガニスタン大統領選挙集計データ(2001~2021年)

    • URL

      https://cmeps-j.net/wp-content/uploads/2024/01/cmeps-j_report_75.pdf

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] アフガニスタンにおける統治の困難さ

    • URL

      https://www.cf.ocha.ac.jp/cwed/j/menu/publications/d012722_d/fil/booklet.pdf

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] アフガニスタンと私:初めての北部への旅

    • URL

      https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/asia_map_vol01/afghanistan/essay01/

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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