研究課題/領域番号 |
21K01349
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
詫摩 佳代 東京都立大学, 法学政治学研究科, 教授 (70583730)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
|
キーワード | 地域内保健協力 / グローバル保健ガバナンス / グローバル・ヘルスガバナンス / アジアの保健協力 / 感染症プリペアドネス |
研究開始時の研究の概要 |
中国の台頭、日韓関係の冷え込み、米中対立といった国際政治上の要因を踏まえつつ、アジアの感染症協力システムとしては、現実的にどのような構成国でどのような形態が可能なのかを国際政治の分析、グローバルヘルスの動向分析を通じて分析し、導き出すことを最終的な目標とする。保健協力は公衆衛生という専門領域だけで動いている話ではなく、各国が関与することから、そこに政治が生まれる。アジアにおける地域的保健システムのあり方を資料、インタビューに基づく実証分析と歴史史料による歴史的アプローチを併合することで、現状の国際政治を踏まえた、より現実的な構想を導き出すことが期待できる。
|
研究実績の概要 |
2022-2023年度は日中韓に焦点を当てて、各国の地域内保健協力に関する取り組みや現状を洗い出し、連携の可能性を探ることを目指している。2022年度は韓国に焦点を当てて、資料調査やインタビューを実施した。 アジアでは戦前、国際連盟保健機関シンガポール感染症情報局という組織が存在し、地域的保健協力の拠点となっていた。ただし、戦後は関係国間の政治的緊張の高まりもあり、地域内の包括的な協力枠組みは設立されていない。それでも、パンデミック下で、イノヴェイティブな取り組みが数々確立されてきた。韓国はWHOと連携して、地域内の保健協力強化を目指す動きを進めている。2022年2月に韓国とWHOはWHO Biomanufacturing Training Hubを設立した。当該ハブはワクチン、インスリン、がん治療薬などの生物学的製剤の生産を希望するすべての低・中所得国にサービスを提供するグローバルなハブを目指すものである。地政学的な対立の影響で、リソースの公平な分配が適切に進まない中で、2021年11月にWHOは南アフリカにmRNAワクチン技術移転ハブを設置した。これと並行して、ワクチンなど生物学的製剤の製造に関する訓練を行う組織の設立を決定し、12の候補国のなかから韓国が選ばれ、ハブが設立されたという経緯である。SK Bioscienceなど韓国国内企業の存在が選定の鍵であったとされ、設立後もこうした国内企業と密接に連携の上、訓練を行っている。現状ではバングラデシュ、インドネシア、パキスタン、セルビア、ベトナム等が参画を表明しており、今後、アジアに限られず、広くLMICの希望国から参加を歓迎するとしている。また設立後間もないため、今後の展開を注視する必要があるが、うまくいけば、韓国のハブはグローバル、リージョナル、ナショナル、ローカルを繋ぐことが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画策定時とは異なる状況や想定できなかった動きも生まれており、それに応じて研究計画が変更を余儀なくされる部分はあるが、概ね研究計画書に記載した予定で研究を遂行できている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に記した通り、2023年度は2022年度から引き続き、日中韓に焦点を当てて、各国の地域内保健協力に関する取り組みや現状を洗い出し、連携の可能性を探ることを目指している。2023年度は、前年度までの研究で明らかになったことを踏まえ、日韓の連携の可能性を検討したい。韓国は東南アジアとWHO Biomanufacturing Training Hubをつうじて連携を強化しており、一方の日本もASEAN感染症センター、並びにARISEを通じて東南アジアとの保健協力を強化している。日韓の取り組みは機能分担しているともみれるが、意図的に機能分担をしているのか、あるいは協力の可能性があるのか、可能性があるとすればどのように具体化していくべきなのか、検討する。また中国に関しては、地政学的な対立の深まりを受け、協力を探るのは現実的ではないが、それでも多くの感染症がアジアで発生していることを踏まえれば、何らかの連携が必要であろう。2023年度は地域内保健協力における中国の位置付けについても検討したい。 また当初、研究計画には記していなかったことだが、2023年度はフランスで在外研究を行っており、アジアと欧州の地域内保健協力に関する比較研究を行っている。アジアよりも地域内保健協力が進展している欧州の実態を検討し、アジアの地域内保健協力への示唆を得ることも目指したい。
|