研究課題/領域番号 |
21K01360
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
富樫 耕介 同志社大学, 政策学部, 准教授 (80803444)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 権威主義体制の正統性 / 反対派の弾圧 / エリートの取り込み / ロシア / コーカサス / チェチェン / ジョージア / アルメニア / イリベラル・ペース / ウクライナ戦争 / プーチン / 中央アジア / ジャパロフ / タジキスタン / ナゴルノ・カラバフ / イリベラル・ピース / 権威主義体制による平和 / 紛争後の安定 / リベラル・ピース / カドィロフ体制 / 体制の正当化 / 権威主義体制 / 非民主的な平和 / 記憶と記憶 / 内戦 |
研究開始時の研究の概要 |
紛争地にいかに平和を齎すのかは、現在の国際社会における重要な課題の一つである。これに対し、近年、一方の軍事的勝利とその後の権威主義的統治が紛争地の安定に寄与するという理論研究が出てきた。だが、権威主義体制下で提供される安定がいかに機能しているのかという点はこれまで十分に検討されてこなかった。本研究は、チェチェンを対象とし、紛争後の権威主義体制で提供される「平和」がいかに機能し、どのような課題を抱えているのかを明らかにしようと試みる。その際に体制側と住民側の紛争をめぐる歴史認識や「記憶」の齟齬に注目し、権威主義体制によって提供される「平和」にいかなる矛盾が内包されているのかを解明しようとする。
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研究実績の概要 |
本年度は、権威主義体制下の「平和」について国内・国際両面の視点から研究を進めた。国内面では、紛争後の権威主義体制下における「平和」がどのように機能しているのか、理論と事例の側面から考察した。理論面では、権威主義体制が弾圧、取り込み、正当化によって安定をもたらしていることを確認し、特に大衆への正当化の過程において権威主義体制下でも対話や熟議が演出されていることを確認した。事例面では、チェチェンのカドィロフ政権による権威主義体制下の「平和」について、その政策と効果を考察した。反対派の弾圧やエリートの取り込みについては、その成果をテロや反乱の減少、政治・経済的資源の一元的管理と分配を通して観察可能であるが、問題は正当化の効果を測定することである。本研究では、ロシアの研究者による世論調査結果を分析し、体制への支持が増加し、紛争後の世論の関心が治安・安全保障面から社会・経済問題へと移行していることを確認した。ただ権威主義体制下の世論調査の信頼性問題もあり、この検討は引き続き行う必要がある。 権威主義体制下の「平和」の国際的側面は、権威主義的な地域大国が周辺国における紛争を管理し、武力紛争が発生していないという意味において「平和」を実現してきたという議論である。ロシアは旧ソ連地域でこうした紛争管理を実施してきたが、ウクライナ侵攻によって課題に直面している。2023年にはロシアが平和維持部隊を展開させていたカラバフをアゼルバイジャンが軍事的に奪還する事態に至った。本事例は、権威主義的な地域大国による紛争管理という意味では失敗だったが、権威主義的な中央政府が分離主義地域を奪還したという意味では、権威主義体制による「平和」の一事例でもある。筆者は、ウクライナ侵攻とカラバフ紛争の影響下にあるジョージアとアルメニアを訪問し、権威主義体制による紛争管理が与える影響について情報収集と分析に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
権威主義体制下の「平和」について理論的知見を深め、事例の考察と分析に役立てることができた。またチェチェンの事例においても権威主義体制下の「平和」がどのように実現しているのかについて、考察を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、最終年度であり、研究成果の取りまとめと考察に進む必要がある。特に大きな課題となっているのは、ウクライナ戦争がチェチェンのカドィロフ体制に与えた影響についての考察である。なぜならば、現在、カドィロフ体制が大衆に向けて自身を正当化する際には、それまでの独立派政権期における戦争、混乱、無秩序、破壊と対比するかたちで、自らの体制が平和、安定、秩序、発展をもたらしたと主張しているからである。それにもかかわらず、ロシアのプーチン政権が継続しているウクライナ戦争に全面的に協力することで、カドィロフは自らの体制が同じくチェチェン民族に戦争や混乱を齎してしまっているという矛盾を抱えている。このようにウクライナ戦争の発生によってカドィロフ政権が本来、直面するであろう矛盾に対して政権側がどのような反応を示し、正当化しているのかについても本研究では問わねばなるまい。
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