研究課題/領域番号 |
21K01367
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
中山 裕美 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (90634014)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 生命科学技術 / 国際秩序 / 人の移動 / 安全保障 / ID政策 / 移民管理 / 生体情報 |
研究開始時の研究の概要 |
近年のグローバル化の流れにおいて、科学技術の発達はグローバル化を進展させ、国家主権を相対化させる機能を持つと評価されてきた。ところが近年の生命科学技術の飛躍的な発展を受け、特に個人の管理・統治との関連において、国家主権は再強化されようとしている。 本研究は、人の移動を扱うガバナンスを対象として、生命科学技術によって国家主権が強化されることにより主権国家体制にいかなる変化が生じているのかを解明し、その結果として様々な領域における既存の国際秩序にいかなる変化をもたらすのかを分析する独自性に富んだ研究である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、生命科学技術の利用が人口移動および関連分野で構築されてきた既存の国際秩序に与える影響を解明することである。具体的には、1)人の移 動の管理への生命科学技術の利用がどのような経緯で進められ、どのように国家主権を強化しているか、2)その効果がどのように主権国家体制を変化させてい るか、3)その結果として様々な領域に存在する既存の国際秩序にいかなる影響を及ぼしているかを分析することを目指す。 3年目となる2023年度は、当初計画の通り、生体情報の電子管理技術の進展が人口移動および関連分野の国際秩序に与えた影響の測定作業を実施した。研究計画では分析事例としてIOMが主導するMIDASのみを想定していたが、分析の過程でMIDAS導入国ではアメリカやEUが主導する生体認証データベースも併用されていることが判明し、それらも含めて包括的に分析するよう研究デザインに修正を加えた。 また、途上国への技術導入の分析に先立ち、生体認証技術の国境管理への導入を国際規範の観点から整理し、国家主権を相対化し移動の簡素化を図るという自由主義的規範と、テロなどの脅威に備え国家主権の強化をもとめる安全保障規範という、矛盾する二つの規範が存在することが確認した。なお、こうした規範の相克状況は、外部アクターが移動の簡素化と安全保障強化という二つの異なるフレーミングを持ちながら途上国国境への生体認証技術の導入に関与している状況にも踏襲されていることがアフリカ国境で利用されている技術の導入過程の分析から明らかとなった。それに対して、途上国では異なるフレーミングのもとで持ち込まれた技術の相互利用が試みられており、そこには国境における主権強化による国際的な地位向上と国内的な統治能力の確保という、外部主体とは異なるフレーミングが見られることもわかった。以上の内容は、2024年公刊書籍の採録論文にまとめられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の研究状況では、当初計画になかった国内の移動管理実態を調査し、国境管理への生命科学技術利用に与える国内的要因に関する分析を行ったため、当初計画よりやや遅れが見られたが、3年目では研究が順調に進み、当初予定されていた生体情報の電子管理技術の進展が人口移動および関連分野の国際秩序に与えた影響の測定作業まで終えることができ、遅れを取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
国境管理への生体認証技術導入に関連して、各外部主体や導入国がそれぞれに異なるフレーミングのもとで生体認証技術の導入を進めている状況を踏まえたうえで、未導入国の状況に関する導入を進めながら、人の移動をめぐる国際秩序変容と他の国際秩序変容の相互作用についての分析を進めていく。
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