研究課題/領域番号 |
21K01369
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
井原 伸浩 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (80621739)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | POFMA / 虚偽情報 / フェイクニュース / 偽情報 / シンガポール / 情報操作 / プラットフォーム・ガバナンス / ポピュリズム / ASEAN |
研究開始時の研究の概要 |
シンガポールにおけるオンラインの虚偽情報や情報操作に関する法的規制や、リテラシー教育の発展などについて、その形成過程や履行状況の分析を行う。理論的枠組として、①フェイクニュースあるいは偽情報(disinformation)に関わる理論、②インターネット・ガバナンス、マルチステークホルダーアプローチ、さらにはプラットフォーム・ガバナンスに関する理論、③グローバルガバナンスの諸理論、特にパワー論に関する知見を採用する。
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研究実績の概要 |
シンガポールのオンライン虚偽情報・情報操作防止法(Protection from Online Falsehoods and Manipulation Act: POFMA)の成立過程および履行過程を研究対象として、同国政府による虚偽情報および情報操作規制と、それに対する市民社会等の批判を分析した。 第一に、POFMAの制定・履行を正当化する一つの根拠に「信頼の低下」を防ぐことが挙げられていたため、政府や政府機関に対する批判にささいな事実関係の誤りが含まれれば、POFMAの対象になるとの懸念が生じた点について検討した。分析枠組みとしては、信頼の概念を採用し、具体的には、垂直的信頼(制度的信頼・政治的信頼)、水平的信頼(民族間の信頼)、およびメディアに対する信頼を維持することを大義名分に、同国政府はPOFMAの制定を正当化したものの、その履行過程で過剰使用の疑念が生じ、むしろ制度的信頼を低下させかねない状況を招いたことを指摘した。同研究の成果は、「信頼概念を用いたシンガポールのオンライン虚偽情報および情報操作防止法(POFMA)の分析」というタイトルで、グローバル・ガバナンス学会 第15回研究大会で報告した。 第二に、POFMAの成立過程を、反メディア・ポピュリズムの観点で分析した。メディア・ポピュリズムとは、ポピュリズムのイデオロギーやスタイルに見られる要素を、一部のメディアが用いることを指す。これを説明枠組みに用いて、政府閣僚らがPOFMAの履行過程でゲートキーパーとしてのメディアの役割が機能不全に陥っていることを強調し、メディアによるポピュリズムが諸外国で横行していることを指摘しながら、それをシンガポールで防ぐ手立てとしてPOFMAの制定を正当化したと指摘した。同研究の成果は、「反メディアポピュリズムとシンガポールにおける虚偽情報・情報操作規制」というタイトルで、東南アジア学会104回研究大会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で述べたように、2022年度は学会報告を2本実施したうえ、研究成果を発表した招待講演も行うなど、研究で得られた知見の報告は順調に進んでいる。しかし、前年度の学会報告分も含め、成果の論文化に若干手間取っており、これを進めていくことが課題となっている。 また、シンガポールでの現地調査が実現しておらず、政治家や活動家へのインタビュー、ならびに、POFMAオフィスの訪問などが必要であるものの、これは2023年度に持ち越しとなった。 以上のことから、やや厳しめの自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき、シンガポール政府による虚偽情報および情報操作の規制と、それに対する市民社会やプラットフォーム企業の対応について研究していく。 2023年度は、以下の点についてあらたに取り組んでいきたい。まず、これまではPOFMAの制定や履行過程に焦点を当ててきたが、シンガポールでは虚偽情報や情報操作を規制するあらたな試みとして、外国干渉対策法(Foreign Interference (Countermeasures) Act: FICA)が、2021年に成立しており、同法もプラットフォーム企業に影響を与え、一部市民の批判を招いているため、これを研究対象に含めることとする。 次に、現地調査を実施する。上述の通り、現地政治家や活動家へのインタビューやPOFMAオフィス訪問を模索したい。これと並行しながら、POFMAやFICAの履行についても蓄積されつつある資料の収集を実施していくこととする。
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