研究課題/領域番号 |
21K01374
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
鈴木 一敏 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (90550963)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | FTA / 交渉戦術 / 通商交渉 / 通商戦略 |
研究開始時の研究の概要 |
FTAの締結は、その後の別のFTA交渉に影響をあたえる。国際レベルでは、貿易転換等の外部性を通じて自国・他国の交渉力を変化させ、制度・基準・前例や規範を作り、特定国との外交的繋がりを深める。国内レベルでは交渉担当者や政策担当者に経験を与え、国内団体の利害、政治力、認識に影響を与えて状況を変化させる。本研究は、このような経路依存性を生み出す因果メカニズムを整理したうえで、それらのメカニズムが日本の政策担当者や利益集団にどの程度意識され、その行動や政策アウトカムに影響を与えたのか分析することで、FTAの締結順の戦略性について理解を深める。
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研究実績の概要 |
本研究の内容は、大きく三つの段階に分けられる。第一は、先行研究などを基にFTA締結が今後の交渉に与える影響を整理し類型化を進めること、第二はそうした類型を政策担当者や利益団体がどの程度認識していたかを調査すること、第三は2000年代のFTA政策を上記の観点から総括的に分析することである。 これらは必ずしも年度に対応しているわけではないが、2021年度には主に第一段階を、2022年度および2023年度には第二第三段階にあたる事例分析とインタビュー調査を進め、政策担当者や利益団体の認識は担当者によってかなり差があるものの、交渉戦略自体は成功や失敗の経験によって担当部局で一定程度共有されていったことは分かった。 さらに2023年度は研究会およびインタビューによって、研究者および実務者との協力関係を深め、外国との経済交渉が第三国との経済協定によって影響を受けるメカニズムについて分析を深めた。また、それまでの研究成果を英語の論文としてまとめ直して公表した。 2000年代初頭、日本がFTAを推進する際、農業セクターの反対をどう克服するかは大きな課題だった。先行研究によると、FTA推進の理由は農産品の自由化を促すものが多いが、これでは日本のFTAにおける農業分野の自由化が限定的である理由を説明できない。そこで、本研究はミクロな交渉戦術に焦点をあて、日本政府が農業と工業を分離して交渉する戦術を試行錯誤しながら学んでいき、それが農産物自由化の程度を抑えたFTA交渉の加速を可能にした実態を明らかにした。これにより、第三国との交渉の有無や状況、交渉の前後関係が、両国の譲歩可能な幅や戦略に影響し、交渉力を左右していたことが示された。 また、第三国の状況や行動が交渉力に影響する因果メカニズムについて、理論的整理を行う必要性が高いことが分かってきたので、複雑系科学の専門家と協力して概念整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス流行により2021年度および2022年度に生じた予算執行の遅れについては一定程度取り戻すことができたが当初予定に比べると完全ではない。しかし、専門家・実務家とのネットワークが広がり、研究成果も日本語英語の両方で公表することができた。また、本研究から得られた成果を基礎として、多数の国家による国際経済ネットワークにおける交渉力について、新たな研究課題に繋がった点は予想以上であった。ポジティブな面もネガティブな面もあるが、総合すると、おおむね順調に進展したと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から得られた成果を基に、国際交渉力に第三国の状況や行動が影響するメカニズムの理論化を進めるため、複雑系科学の専門家と共同研究をさらに進める。また、実際に交渉を担当した実務家との共著論文の執筆を進め、国際誌へ投稿する予定である。
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