研究課題/領域番号 |
21K01395
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
荒渡 良 同志社大学, 経済学部, 准教授 (20547335)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 財政ルール / 逸脱ルール / 国債発行上限 / 公債発行ルール / 現在バイアス |
研究開始時の研究の概要 |
人々はしばしば,現在の税負担を公債発行によって将来に先送りする誘引を持ち,これが過剰な公債発行につながる.そこで,法律によって公債発行額に上限を設け,過剰な公債発行を抑制しようとするものが「公債発行上限」である.しかしながら,公債発行上限を設定しているにも関わらず,上限を超えた過剰な公債発行を行う例も多く観察されており,財政政策運営上の問題として指摘されてきた. 本研究では,複数国による協調公債発行制度に焦点を当てた上で,「最適な公債発行制度はどのようなものか」という問題に取り組む.
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研究実績の概要 |
研究期間の1年目であった令和3年度には,有権者が現在バイアス(負担を先送りする誘因)を持つために過大な財政赤字・国債発行が生じるような状況を考えた上で,政府に「ルールを無視する」という選択肢がある場合の国債発行ルールについて理論的な分析を行なった.しかし,これらのモデルでは外生的に与えられた費用さえ支払えばいつでも自由に財政ルールを無視できるという仮定が置かれており,「財政ルールの逸脱条件」は全く考慮されていなかった.現実の世界では予め定められた財政ルールを逸脱するためには政治的な手続きが必要であり,その手続きも含めた広範な意味での財政ルールを考えることには重要な研究的な意義がある. そこで研究期間の2年目である令和4年度には財政ルールを「支出ルール」と「逸脱ルール」の2つに分けた理論モデルを構築し,その上で最適な支出・逸脱ルールの特徴を調べた.モデルの概要は以下の通りである.2つの政党が存在し,それぞれが獲得する議席数が確率的に決まるような政権交代モデルを考える.各政党の支持者は財政支出に関する選好が異なっており,政権政党は過剰な財政支出と公債発行を行う誘因を持つ.財政支出には「支出ルール」によって上限が設けられているが,「逸脱ルール」によって定められた議席数を上回る議席を獲得した政権政党は支出ルールを無視することができる. 上記のような設定のモデルを構築した上で政治経済均衡を導出し,社会厚生を最大化するような「支出ルール」と「逸脱ルール」の特徴について調べた.分析はまだ完全には完了していないが,両ルールは(1)初期の公債残高と(2)各政党の支持者間の対立の強さ(財政支出に関する選好の違いの大きさ)と密接な関係を持つことが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた理論モデルの分析が順調に進んでいるため.しかし,分析結果を論文の形にまとめる段階までは進んでおらず,当初の計画以上に進展しているとは言えない.
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今後の研究の推進方策 |
財政ルールに関する理論分析は政治経済学の分野で一定の蓄積があるが,「支出ルール」と「逸脱ルール」を分けて分析した例は少ない.そのため,分野内で「標準的」とされる分析方法が確立されておらず,モデル設定の変更が結果にどのような影響を及ぼすのかについては慎重に検討する必要がある.令和4年度にはモデル構築と基本的な分析が完了したため,今後は結果の頑強性に注意を払いながら分析を進める予定である.
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