研究課題/領域番号 |
21K01404
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
山田 知明 明治大学, 商学部, 専任教授 (00440206)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 動学的一般均衡理論 / 経済格差 / 少子高齢化 / 社会保障制度 / 税制 / 世代重複モデル / 世代効果 |
研究開始時の研究の概要 |
現在の日本経済が抱える大きな課題の一つは少子化である。現在の子育て世代の中心はいわゆる就職氷河期に就職活動を余儀なくされたロストジェネレーションであり、彼らの経済的不遇が結婚率を低下させ、少子化問題を悪化させている可能性が指摘されている。新型コロナウィルス問題に伴う労働市場の悪化は新たな不遇の世代を生む可能性があり、将来のさらなる少子化につながる事が懸念される。このような問題に対処するために、本研究では家族形成(結婚や出産)を内生化した動学的一般均衡モデルを構築して、長期的に持続可能で活力のある社会の基盤となる税・社会保障制度改革を定量的に分析する。
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研究実績の概要 |
本研究の最終的なゴールは、少子高齢化が進展する日本経済において、税・社会保障制度のあり方をライフサイクル型動学的一般均衡(世代重複)モデルに基づいて分析することにある。世代重複モデルは既に税・社会保障制度改革の定量分析のベンチマークモデルとなっているが、それでも様々な"現実的な要素"を分析の都合から落としている。本年度は、昨年度に引き続き、家計が直面する様々な異質性(heterogeneity)に関するファクト整理を中心に分析を行った。具体的には、1981年以降の家計の消費・支出に関する分析を総務省が実施している「家計調査」に基づいて行った。マクロ経済モデル上の家計は与えられた所得に基づいてライフサイクルにおける生涯効用を最大にするべく消費活動を行う主体であるが、実際の家計はより多様な意思決定を行っている。例えば、比較的裕福な高齢者は旅行等のサービス支出の割合が多いのに対して、子育て世帯は教育費の支出を拡大するといった具合である。このような年齢・家族要因はミクロ計量分析ではいくつかの分析があるものの、それらの違いがマクロ経済に与えるインプリケーションまで分析は拡大されてこなかった。そこで、2022年度は「家計調査」を用いて、年齢や所得階層ごとに様々な世帯がどのような項目(非耐久消費財、サービス、耐久財、あるいは食費や光熱費といったよい細かいカテゴリー)に支出しているのかを解析した。そこで明らかになったことは、従来知られているように総消費支出は40歳代をピークとした山型をしているのに対して、項目別でみると年齢ごとのパターンは大きく異なること、その違いが少子高齢化を通じて将来に日本の消費支出(すなわち民間需要)に大きなインパクトを持ちうる事である。なお、分析結果は2023年度前半に経済産業研究所のDiscussion Paperとして公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 研究実績の概要でも記載したように、2022年度は総務省統計局が集めている「家計調査」を用いて実証分析を実施した(東京大学の北尾早霧教授との共著)。Web上で公表されている集計値ではなく、総務省が保有する個票データが必要になるため、まずは総務省にデータ利用申請を行い、許諾を得た。コロナの影響で総務省が多忙な事に加えて様々な研究者が申請を行っているため、実際にデータを利用できる期間が夏休み明けとなってしまい、分析結果の公表が2022年度中ではなく、2023年度にずれ込んでしまった。しかし、論文そのものは2022年度中に完成したため、大きな遅れにはならなかった。
(2) 2021年度に行ったアリゾナ大学・東京大学の市村英彦教授との共同研究について、研究成果の一部を2021年6月に海外学会にて報告を行ったが、その後は研究内容の大幅な修正を迫られている。具体的には、当初のモデルは一般均衡としてモデルを閉じるマクロ経済モデルを想定していたが、マイクロデータとの整合性を重視して、構造推定を取り入れたより複雑な家族モデルに拡張作業中である。マイクロデータとして、米国のCurrent Population Surveyが必要になることからデータの収集から再スタートした。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に挙げたプロジェクト(1)については、総務省及び経済産業省の許諾が取れ次第、経済産業研究所のDiscussion Paperとして公表予定である。また、北尾教授とは日本の経済格差に関する英文の本を執筆しており、そこでは本研究の成果の一部及び追加分析を織り込む予定である(なお、書籍の出版については既に契約済みであるが、データの入手時期がずれ込んだ事から作業の遅れに伴い、出版時期も遅らせている)。また、本研究課題の最終ゴールは定量的マクロ経済モデルを構築して定量的に税・社会保障制度改革を分析することであるため、2023年度は、(1)で得られた成果をインプットの一部とした動学的一般均衡モデルを構築する。既に日本の財政状況や各種社会保障制度のサーベイを開始しており、2023年度8月には成果の一部を国際コンファレンスで報告予定である。
進捗状況に挙げたプロジェクト(2)については、Eckstein, Keane and Lifshitz (2019,Econometrica)を参考にしながら、モデルを再構築している途中である。前述の通り、マイクロデータとしてまずは先行研究にならって米国のCurrent Population Surveyを使用予定であるが、本課題の最終的な目標は日本経済における政策的含意を得ることなので、日本におけるデータセット、例えば国勢調査や家計調査、全国消費実態調査を(再)取得して、データとの整合性を構造推定を使って担保しながら、モデル分析を進める予定である。
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