研究課題/領域番号 |
21K01453
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
森田 忠士 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50635175)
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研究分担者 |
山本 和博 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10362633)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 租税競争 / 企業立地 / 多国籍企業 / 貿易の自由化 / 国際貿易 / 中小企業 / 大企業 / 研究開発投資 / 市場規模 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、産業全体を考慮して行動している大企業と産業全体に与える影響はないと考えて行動している中小企業とが混在している状況において、大企業や中小企業に対する産業政策に関する分析を行う。中小企業とは違い、大企業は産業内の競争を緩めるために自分の価格を高く設定したり、研究開発投資に消極的になったり、中小企業を産業から追い出すために積極的な研究開発投資を行ったりする。中小企業と異なる行動をとる大企業には、中小企業とは別の産業政策を行う必要がある。そこで、大企業には中小企業よりも補助すべきだろうか、そして貿易の自由化は大企業と中小企業に対する産業政策にどのような影響があるのか、という問題に答える。
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研究実績の概要 |
本年度は、多国籍企業である大企業の立地行動と大企業の立地が与える影響に関する研究を行った。この問題を分析するために、大企業が生産する国・地域を選ぶことのできる多地域モデルを構築した。大企業が生産拠点の立地を決めると、その国・地域から熟練労働者と非熟練労働者を雇用して生産を行うと仮定している。熟練労働者は大企業と同じように国際的に移動可能であるが、非熟練労働者はその国から移動できないとしている。このとき、大企業はどこの国・地域にどのように分布しているのだろうか。そして、熟練労働者はどこの国・地域にどのように分布しているのだろうか。これらの疑問に答えるため理論モデルを構築し、分析を行った。この分析を行うことで、どのような国・地域に大企業や熟練労働者が集中するのか、企業が集中した国・地域では熟練・非熟練労働者間の賃金格差はどの程度なのか、国・地域間の輸送費用が減少したとき大企業の立地行動や賃金格差にどのような影響があるのか、ということが分析できる。この分析の結果、非熟練労働者が豊富な国・地域や中心性が高い国・地域、すなわち他の国・地域への接続がいい国・地域、には熟練労働者と大企業が集まることがわかった。そして、非熟練労働者が豊富な国・地域や中心性が低い国・地域、すなわち他の国・地域への接続が悪い国・地域、では熟練労働者と非熟練労働者の間の賃金格差が非常に大きいことがわかった。もし、ある2国・2地域間の輸送費用が減少し、それ以外の輸送費用が変化しないとき、(例えば、ある2国・2地域間での高速道路が新たに建設されたなど)、それら2国・2地域における熟練労働者と非熟練労働者の賃金格差は縮小するが、それら以外の国・地域での賃金格差は拡大することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、国ごとの研究開発投資への補助金競争が大企業と中小企業に与える影響を分析する予定であった。しかし、ある国が補助金を与えることで大企業の行動が変化し、それに伴って中小企業の行動が変化する。そして、他国の政府の行動が変化する、というように多数の効果が発生することになり、当初の予定のようにこれらの多数の効果をうまく整理することができなかった。そこで、中小企業が存在せず、政府間の補助金競争がない状況で、大企業の立地選択に注目する基本的な分析を行った。この結果、外生的に政府の行動が変化したときの影響を推測することができるようになった。しかし、現実では政府は大企業の立地行動を読み込んだ上で、自国の経済厚生を最大にするように経済政策を決定している。したがって、外生的な政策の変化が与える影響だけでは現実を説明し、そして政策提言を行うことは不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究成果によって、大企業の立地行動やそれがもたらす影響に関して分析することができた。この理論モデルをもとに、二つの点の拡張を行い、現実の経済を説明し政策提言を行う。一つ目の拡張は、政府の行動の内生化である。政府は大企業の立地行動を考慮したうえで、最適な税率や補助金率や政府支出額を決定している。このときの最適な税率はどの程度なのだろうか、熟練労働者と非熟練労働者への税率の差はどの程度が望ましいのだろうか、という問題に対して答えを出したい。二つ目の拡張は、大企業と中小企業が混在する場合、政府の最適な行動について分析を行うことである。2024年度は、2023年度の研究成果を国内外の学会で報告し、研究成果を世間に広めるとともに研究成果をよりよりよい形でまとめる。また、研究会では国内外の研究者と積極的に議論を行って論文の質を高めていき、海外査読付き雑誌に投稿する。
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