研究課題/領域番号 |
21K01491
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中村 靖彦 日本大学, 経済学部, 教授 (90453977)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 寡占市場 / 価格競争 / 数量競争 / 経営委任 / ネットワーク外部性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,近年新たな技術革新や規制・競争政策で注目されているネットワーク産業における企業の経営戦略に関して理論的産業組織論の観点から複合的に分析し,長期的な企業の意思決定の帰結を明らかにすることによって,最適な規制競争政策を提示する。具体的には,需要の増加に伴って消費者の効用が増加する「ネットワーク効果」と消費者による企業の供給量を予想する時点によって区別される「消費者の期待形成の方法」の2つの要素に注目して,当該企業の盛衰にも大きな影響を与える(1)「戦略の内生化(数量と価格の選択)」と(2)「企業所有者による経営者への権限委譲の問題(経営者の雇用に関する問題)」を考察する。
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研究実績の概要 |
本年度は,ネットワーク外部性に関連する研究として次のような研究を行った:第一に,昨年度に推し進めた,Corporate Social Responsibility(CSR)に従事する企業の戦略の内生化の問題において,所有と経営の分離の観点を考慮する研究に関して論文を書き進め,国際査読付き雑誌の掲載を引き続き目指した。また,今年度は経済学の様々な環境で応用されつつある「カント的最適化(Kantian optimization)」の概念を,寡占市場の理論に応用した研究を行った。カント的な企業行動は,多くの標準的に採用されているナッシュ的な企業行動とは異なり,産業利潤の最大化を目指す行動であるが,カルテルや企業間合併とは異なり,各々の企業が独立して行動するところに特筆すべき特徴がある。すなわち,カント的に振る舞う企業は他企業の行動にも関心を持ち,総利潤の最大化を独立して行っている。このような企業行動の優位性は,先行研究でも実証的に確かめられており,寡占の文脈に限定したとしても,租税競争,R&D競争,および環境規制の政策分析など多く経済分析に応用されている。本年度の主たる研究の一つとして,上記のようなカント的な振る舞いをする企業からなる産業において,戦略の内生化の問題を考察した。結果としては,企業の生産する財の代替性の程度に対する限界費用の大きさが,均衡で生起する市場形態に大きく影響することが示され,企業の生産する財が代替財であるか,または補完財であるかによっても結果が大きく異なることが示された。また,均衡で生起する市場形態において社会厚生が最適化されるかどうかの問題も分析され,カント的振る舞いをする企業が補完財を生産する場合の方が,代替財を生産する場合よりも社会厚生の観点から望ましくなる可能性が高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度と同様に論文の執筆自体が遅延しているわけではないが,現状で国際査読付き雑誌の掲載を勝ち取った研究は,本研究計画の重要な要素である「ネットワーク外部性」に関する研究の準備段階といえるものである。速やかにネットワーク的な性質を有する産業の応用研究へとつなげなければならないという意味で,研究計画自体は「少し遅延した」状態であると判定した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度と同様であるが,依然として現段階での研究は「ネットワーク外部性」を導入する前の準備段階に位置づけられるのものであり,速やかに本年度に得られた結果をネットワーク産業に関する経済分析へと応用する必要がある。ただし,その方法のめどはついており,技術的な困難性はすでに乗り越えている。次年度以降,漸次この方面の研究に取り掛かりたい。
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