研究課題/領域番号 |
21K01493
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 金沢星稜大学 |
研究代表者 |
庫川 幸秀 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (80749200)
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研究分担者 |
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10377137)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 調整力市場 / ネガワット / 火力(調整)電源 / 電力市場 / 市場支配力(市場構造) / エネルギー利用効率 / 火力発電 / ディマンドリスポンス / 再生可能エネルギー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、需要側の電力エネルギー利用効率が「電力消費市場」と「調整力市場」に与える影響、社会的に最適な節電量価格とエネルギー利用効率の関係、小売市場と調整力市場の間で生じ得るトレードオフ関係について理論的に考察する。庫川・田中(2018)のモデルを拡張して、以下①~③の分析を行う計画である。 ①社会的に最適な節電量価格の導出と、エネルギー利用効率と炭素税の影響の分析(初年度4月~10月) ②小売市場価格の内生化(初年度10月~3月) ③蓄電池を含むモデルへの拡張(2年目4月~10月) 得られた結果は査読付き国際ジャーナルへ投稿し、必要な追加分析および改訂を経て、掲載を目指す(2年目10月~3年目)。
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研究実績の概要 |
当該年度は電力市場と調整力市場の相互の関係を明確に考えるために、これまでの分析で外生的に与えていた電力市場価格を内生化して分析を進めた。具体的には、電力市場を限界費用一定の同質の企業m社から成るクールノー寡占市場として定式化した。分析の内容は、1)電力市場の市場構造と調整力市場の関係、2)電力需要側のエネルギー利用効率が電力価格を介して調整力市場に与える影響、の2点である。以前の分析から、電力市場の価格が上昇(低下)すると、ネガワットの限界費用が上昇(低下)する関係が成り立つことが分かっている。この関係に着目すると、電力市場の市場構造(m)がネガワットの限界費用に影響を与え、その結果として調整力市場における火力(調整)電源の発電量に影響する関係が考えられる。上記1)の分析の結果、電力市場の企業数mが増える程、電力市場均衡価格が低下し、それがネガワット限界費用の低減と、調整力市場における火力(調整力)発電の減少につながるという結果が得られた。この結果は、電力市場における市場支配力を低減させる施策が、ネガワットの供給増加を介して、火力(調整)電源への依存度を低減させる手段としても有効であることを示しており、カーボンニュートラル実現に向けた調整力の低炭素化という面で意味のある政策的示唆を与えるものといえる。上記2)については、エネルギー利用効率の向上によって電力市場均衡価格が上昇することで、ネガワットの限界費用を上昇させせる効果が示された。その結果、調整力市場における火力(調整)電源の発電量増加につながる。以前の分析では、エネルギー利用効率の改善によりネガワット限界費用曲線の傾きが大きくなることが示されていた。電力価格を内生化した分析により、エネルギー利用効率の改善が電力市場価格の上昇を介して、ネガワット限界費用曲線の切片を上昇させることが新たに示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画における主な課題として、1)電力市場価格の内生化、2)蓄電行動のモデル化、を挙げている。当該年度は電力市場価格をクールノー市場の均衡価格として内生化して分析を進めた。これまでの分析で外生的に与えていた電力価格をクールノー寡占市場モデルにより内生化したことにより、電力市場の市場構造と調整力市場との関係に着目した分析が可能となった。このことで、上述したように当初の計画で想定していなかった視点(電力市場の市場構造の影響)から分析結果を得ることができた。また、エネルギー利用効率が電力市場価格の変化を介してネガワットの限界費用に与える影響を明らかにした。以上から、上記1)についてはほぼ計画どおりの進捗であり、部分的に計画以上の成果も挙げている。一方で、上記2)の蓄電モデルの構築については着手するまでに至っていないため、総合的に考えて「やや遅れている」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
社会厚生関数を定式化し、電力市場と調整力市場の相互関係を社会的余剰の視点から分析する。既存のモデル(庫川・田中(2018))では電力市場を明確にモデル化しておらず、電力価格を外生的に与えていたが、当該年度の分析で電力価格を内生化したことで両市場間の相互関係を明確に分析できる。蓄電モデルの構築については、関連文献の調査を進めながらモデルの定式化に着手する。
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