研究課題/領域番号 |
21K01508
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
瀬下 博之 専修大学, 商学部, 教授 (20265937)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | Extended liability / Judgment proof problem / Unlimited liability / Extended Liability / Limited Liability / tort claim / Judgment Proof Problem / Entry Deterrence / 民事債権 / 倒産法制 / 優先弁済ルール / 有限責任 / 損害賠償請求権 |
研究開始時の研究の概要 |
倒産企業における損害賠償責任の負担者の拡張に関する議論について、そのような負担者拡張の有効性を経済学的な観点から分析しつつ、その望ましい在り方を考察する。その上で、倒産法制における企業の未払いの損害賠償や補償に対する弁済の在り方について検討し、優先債権者にその責任を負担させる仕組みの導入の可能性を、日本の倒産法制に基づいて、過去の事例などを参考にしながら議論する。
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研究実績の概要 |
昨年に引き続き、倒産法制上の民事債権の取り扱いについて、特に東京電力の原発事故における民事上の損害賠償についてケーススタディー的に検討した。原発事故時に東京電力が倒産手続きに入ったとした場合に、どう対処すべきだったかという問題を設定し、実際の(現在も増え続けている)民事上の損害賠償をどう扱うことが企業の事故防止へのインセンティブ付けにつながるか、という点や、優先債権者の(事前の)融資行動にどういった影響を与える可能性があるかという点を重点的に検討した。ただし、ここでの検討は現行の倒産法制上の弁済の優先劣後関係ではなく、優先債権者へ責任負担を拡張できる(あるいは、「する」)Extended Liability(拡張責任)という制度設計を念頭に置いての検討である。 この結果、原発事故のような大規模な事故であっても財務上は優先債権者による責任負担が可能であるが、その規模は極めて大きく、それが金融機関の自己資本規制を大きく毀損する可能性があり、このことが問題を他へ波及させてしまう恐れがある。100%の拡張責任ではなく、Seshimo(2022)で検討した部分的な責任を適用する可能性も考えられるが、その場合に残る巨額の損害賠償債務をどう処理するかという問題が残る。そのため、原子力事故の保険制度の拡充なども考えたが、いずれにせよ企業のモラルハザードを抑制するという観点からは、望ましい施策とはなりえない。 こうした分析結果を踏まえて、別の制度、特に無限責任制の導入の可能性を考え、これを実現するための制度設計の在り方について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響もほとんどなくなり、学会や研究会などに参加することで多くの知見を得ることができ、この点では研究の進展につながっている。ただし、まだ、当初予定していただけの十分な情報収集の時間は、感染症の影響からまだ十分には挽回できていない。さらに、当初目指していた方向性だけでは、問題解決には不十分であることもわかり、検討課題も増えた。
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今後の研究の推進方策 |
単なる優先劣後関係の調整だけでなく、企業株主への責任負担を高める必要性が明らかになり、無限責任制度など別の制度設計の適用可能性を探る方向で研究を進める予定。ただし、無限責任制は、そのエンフォースメントに多額の費用がかかる可能性が指摘されている点や、そもそも従来の有限責任制の機能を破壊しかねないという点など、多くの批判もあり、こうした課題についても深く検討したい。
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