研究課題/領域番号 |
21K01519
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
藤井 麻由 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (70648328)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 雇用の質 / 健康格差 / 労働市場 / 潜在クラス分析 / 主観的健康感 / メンタルヘルス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,現代日本における「雇用の質(Employment Quality, EQ)」の実態と特徴を把握するとともに,EQが雇用者の健康に与える複合的な影響を明らかにする.具体的には,諸外国を対象とした先行研究を参考に,全国の雇用者を対象とした独自のインターネット調査を行い,①EQを捉える変数群により雇用を類型化するとともに,②類型化されたグループ間で雇用者の健康状態にどのような差があるかを分析する.「典型雇用」「非典型雇用」という従来の枠組みに捉われない点が特徴であり,これらの分析を通じて,今後の労働政策・健康政策を考えるうえで必要なエビデンスを提供したい.
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研究実績の概要 |
初年度にインターネット調査を通じて収集したデータを使用し,現代日本における雇用の質と労働者の健康状態の関係について分析を行った.雇用の質については,先行研究で整理された6つの領域,(1)雇用契約期間,(2)報酬,(3)労働時間,(4)教育訓練の機会,(5)雇用主との交渉力,(6)対人関係を表す,合計10個の変数群を使用して測定した.具体的には,これらの変数群を用いた潜在クラス分析を行い,サンプルに含まれる労働者の雇用を,質が異なる5つのグループに類型化した.また,健康状態の指標としては,主観的健康感およびK6に基づく気分・不安障害の有無を採用した. 分析の結果,雇用の質が異なるグループの間には,性別や年齢,最終学歴等の個人の属性の違いを制御してもなお,健康格差が存在することが明らかとなった.特に,正規雇用・非正規雇用に関わらず,雇用の質を構成する要素の内,教育訓練の機会,雇用主との交渉力,対人関係に恵まれているグループでは,労働者の主観的健康感が良好である確率が高く,気分・不安障害である確率が低いことが示された. 雇用の状況・性質と労働者の健康の関係は,健康の社会経済的決定要因を追究する公衆衛生や経済学等の重要な研究課題であるが,これまで,国内の先行研究の焦点は,正規・非正規雇用間の健康格差であることが多かった.しかし,近年,日本においても,限定正社員等の雇用形態の多様化が進んでいる.今回の研究結果は,雇用形態の多様化が労働者の健康にどのような影響を及ぼすかを評価するためには,正規・非正規雇用という従来の枠組みにとらわれず,雇用の質を多面的に捉えることの重要性を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にインターネット調査を通じて収集したデータから,現代日本における雇用の質と労働者の健康状態の関係について,一定の示唆を得ることができた.また,この研究成果を日本経済政策学会の国際会議で発表し,英語論文としてまとめるに至った.しかし,年度内に査読付き論文として公表することができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果を論文としてまとめて公表していく.そのことによって,雇用形態の多様化が進む現代日本において雇用の質の実態はどのように把握されるのか,また,雇用の質が労働者のウェルビーングとどのように関係しているのかについて,本研究で分かったことを総括する.さらに,今後の研究の発展の方向性についても明らかにする.
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