研究課題/領域番号 |
21K01520
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
坂本 和靖 群馬大学, 情報学部, 准教授 (40470108)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 高齢者就労 / パネル調査 / 政策評価 / 高齢者雇用安定法 / 全世代型社会保障 / 主観的厚生 / パネルデータ |
研究開始時の研究の概要 |
日本における高齢化の進展は、社会保障負担(医療・介護・年金)を増大させ、財政を逼迫させている。急激な高齢化の中、これまでの生活保障モデル「現役世代は雇用、高齢者世代は社会保障」から、現役世代のみならず、高齢者世代を含めた全世代で相互に支えあう「全世代型社会保障」モデルへの転換が求められている。そのための重要な施策として、高齢者の就業力活用が挙げられる。これにより、労働力不足問題への対応だけではなく、消費を喚起させ、就労活動を通じた生きがいの増進に繋がることが期待される。以上の点を踏まえ、本研究は、2010年代以降に実施された高齢者雇用安定法の改正が就労活動や主観的厚生に与える影響を分析する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の高齢者就労制度の現状を精査し、高齢者の就労活動に対する就労促進制度の影響を分析することにある。特に、「70歳までの就業機会の確保」を努力義務とした、改正高年齢者雇用安定法(2021年4月施行)による制度効果を検証する。 本研究課題の第1年度(2021年度)では、分析に利用する、慶応義塾大学経済研究所パネルデータ設計・解析センター『日本家計パネル調査(JHPS)』、『慶応義塾家計パネル調査(KHPS)』の使用許諾を受け、データの編集作業を行い、分析の準備のため、先行研究を参考にし、分析に必要な変数を作成(就業状況、就業形態、生活時間、仕事満足度、定年退職以降の就業意欲等)、過去の高年齢者雇用促進施策(2006年施行、2013年施行)の改正及び年金制度改正が高齢者就労の関連項目に与える影響を測定した。 第2年度(2022年度)では、同データを用いて、高齢者の就業継続に対する制度的要因(法制度改正、受給開始年齢の延長等)に加え、個人的要因による影響を考慮すべく、健康状態の影響を考察した(ここでは、身体的側面と心理的側面を捕捉する要因を区別した)。加えて、先行研究(山本 2008、山田 2017、Kondo and Shigeoka 2017)で用いられていた分析手法以外の方法の検討を行った。 さらに、第1年度における予備分析で判明した、性別・出生コホート別に区分することで、分析対象者数が小さくなるグループが散見されたことを踏まえ、問題への対処として、調査対象者が多い、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」での分析可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で記したように、調査データ(慶応義塾大学経済研究所パネルデータ設計・解析センター『日本家計パネル調査』、『慶応義塾家計パネル調査』)を用いて、データの編集作業、変数作成、予備分析作業を行った。 第1年度(2021年度)では、分析の予行として、過去の高年齢者雇用促法改正、年金制度改正がもたらす高齢者就労への影響を測定した。具体的には、以下の方法をとった。①回帰分析によるDifferences in Differences推計(山田 2017, Kondo and Shigeoka 2017)、② Propensity Score MatchingによるDID推計(山本 2008)を用いて、就業率、労働時間、主観的厚生への影響を推定した。 第2年度では、制度的要因(高齢者雇用安定法改正・年金制度改正)に加えて、個人的要因の充実を図った。具体的には、個人的要因としての本人の健康状態による影響、身体的健康は「主観的健康感」を、精神的健康は「Kessler's 6 Score」、「General Health Questionnaire(GHQ)」を代理変数とした。さらに、他の分析手法の可能性について検討した。具体的には、不連続回帰デザインを採用し、2021年改正前では「希望者全員の65歳までの雇用義務化」から「70歳までの雇用の努力義務」へ変化の効果をみるべく、対象者を、60~65歳まで(統制群)、66~70歳まで(介入群)に区分し、閾値周辺における労働時間などの”ジャンプ”の識別を計測可能性を検討した。 「研究実績の概要」で挙げた問題への対応として、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」の利用準備を行った。調査票情報から、必要な変数の選定、各年で調査表番号が異なることから、パネルデータとしての設問接続等の作業を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である第3年度(2023年)に、高齢者雇用安定法改正(2021年4月)以降に実施された情報が含まれた『日本家計パネル調査』、『慶応義塾家計パネル調査』の公開が予定されている(最新調査2022年1月実施、2004~2022年、2023年4月20日公開)。 既に「研究実績の概要」「現在までの進捗状況」に記した通り、2021年4月改正の政策効果を推定するために、予備的分析として、調査データの編集、変数作成、先行研究で実施された複数の分析手法(回帰分析・PSM法によるDID推計)、および新しい手法(不連続回帰デザイン)を用いて、過去の高齢者雇用安定法の改正・年金制度の改正が就労行動に与える影響を推定した。第3年度(2023年度)では、2021年改正4月以降の状況が捕捉できるJHPS/KHPS調査データ(2022年度分、2022年1-3月調査実施)を用いて、改正以降における高齢者の就業状況(継続就業、離転職)、労働時間、仕事内容、仕事満足度などの主観的厚生の変化を精査する。 当初、第2年度(2022年度)に利用を予定していた、高齢者雇用安定法改正(2021年4月)以降の情報が含まれた『日本家計パネル調査』、『慶応義塾家計パネル調査』が使用できなかったため、現在、その遅れを取り戻すべく、分析作業にあたっている。
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